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掌編。超短編。など、名前は様々。
一瞬を切り取って、読んでくれる人に届けたい。
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Silence link

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「そこは巨大な城塞都市だったわ。あちらこちらに複雑な回廊がいくつもあって、すぐに道に迷ってしまうの。私は都市の中心の尖塔に行きたいと思っているのだけれど、近づこうとしても上手くいかない。少し近づけたかなと思っていると、いつの間にか遠ざかっている。その繰り返しなの」 「疲れてしまうね」 「うーん、どうかな。疲れたという想いはわき上がったりしなかったと思う。それよりも物足りなさね。私には尖塔でやらなければいけない使命があって、それはとても愉しい...

pale asymmetry | 2021.01.25 Mon 21:27

Unknown door

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「目の前に未知の扉があります。どんな扉でしょう?」  僕と彼女はベランダでランチしていた。二人ともテレワークで、長めの昼休憩中だった。明日からは数日雨が続く予報だったので、日差しを楽しむことにしたのだ。風は北からでひんやりしていたけれど、たっぷりの陽光が擽るように身体を暖めてくれた。だから心地よかった。 「どんなって、見た目のこと?」 「そう。色や形や模様や大きさ」  僕はしばらく考えてから答えた。 「机の引き出し」 「机?引き出し...

pale asymmetry | 2021.01.20 Wed 20:19

Lipstick dance

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「擽ったいわ」  と私が言っても。あなたはお構いなし。その真っ赤な口紅を私の身体に沈めるように唇を這わす。 「温かいわ」  私は息を震わせる。あなたの呼吸も震えている。それが唇から私の皮膚に伝わってくる。それは紅の生み出す波紋かもしれない。それは魔的な舞かもしれない。口紅の密やかな舞だ。 「気持ち良くなってきた」  私の震えとあなたの震えが同調するのを感じる。あなたと私が重なり合うような感覚。あなたの唇が私のそれになる。同じ口紅をさし...

pale asymmetry | 2021.01.19 Tue 21:52

UFOの黄昏

JUGEMテーマ:ショート・ショート    潮の引いた礁湖で、チョウダイサギが小魚を加えて歩いている。夕刻の空は広い範囲に雲が広がっていたけれど、時折切れ間から太陽が顔を出したりしていた。風は北から吹いている。強くはないけれど冷え切った風だ。僕は軽く足踏みしながらファインダーを覗き込む。チョウダイサギは悠然と歩いている。周りの空気に哲学を滲ませている。あの鳥は寒さを感じたりはしないだろう。そう思えた。寒さというものの要素の全てを羽毛の狭間に巻き取って、エナジーに素早く変換して、血流に染...

pale asymmetry | 2021.01.10 Sun 21:48

マイトレーヤよりは早く

JUGEMテーマ:ショート・ショート    音声で彼女に回線を繋ぐのは久しぶりだと気づく。最近はテキストばかりになっていたから。 「ごめん、仕事がまだ終わりそうにない。帰りは遅くなりそうだ」 「そう。大丈夫。おせちとワインを用意して待っているわ」 「先に食べてくれてもいいよ」 「今読んでいる本が面白いところだから、大丈夫よ」 「わかった。なるべく急いで帰るよ」 「慌てなくていいわよ。マイトレーヤより早ければ、それでいいわ」  彼女の声が笑っている。回線を通して聞くその声は...

pale asymmetry | 2021.01.02 Sat 20:59

Fluorescent summer

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「もう僕らは、とっくに死んでいるのではないかと思ったりもするんだ」  コイルが唐突に切り出した。僕らは大陸極東の秘密の遺跡で落ち合ったばかりだった。 「どういうこと?」  寝起きでログインしたので、コイルの言っている意味が解らなかった。 「つまりさ、もう僕らは、というか全世界の生命は、すでに死んでいて、その魂同士がこの惑星上で交流しているというわけ」 「全世界って、現実の世界のことだよね?」 「もちろんそうだよ。今君と僕がログインし...

pale asymmetry | 2020.12.29 Tue 22:10

Human-made materials

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「空がある今日は、幸せね」  ビルの屋上から、街路を見下ろして彼女が言う。その幸せは僕らにとってだろうか、それとも世界にとってだろうか。あるいは、空自身にとってだろうか。空というものの本質をちゃんと理解していないくせに、僕はそんなことを考えてしまう。ごめんなさい。空とその向こうの宇宙に対して、僕は心の中で謝ってみる。 「高いビルだと思ったのに、そうでもなかったわね」  彼女はフェンスを乗り越え、ビルの縁から両脚を投げ出して腰掛けている。僕...

pale asymmetry | 2020.12.26 Sat 20:20

SECHS3★短篇小説〜雪降る夜に。

『SECHS3 星降る夜に』          真夜中になる前の時間帯。あたりは静かで、ただうっすらと雪が舞っている。みさきは久しぶりに我が家へと帰って来た。みさきにとっては登りなれた階段。ボロい長屋の2階の階段奥、そこがみさきの家だった。じゃらじゃらとチェーンが付いた鍵の束の中から、1つ。部屋の鍵を取り出そうとする。しかし思いのほか手が冷えているせいか、思うように取り出せずに少しイライラする。やっと目当ての鍵を取り出し、部屋に入ろうとすると。 「お帰りみさきちー」 ...

チームSECHS! | 2020.12.24 Thu 18:33

Cute sprain

JUGEMテーマ:ショート・ショート    愛犬が尻尾をたれている。夕食のときに「お座り」を促しても上手く出来ない。なんとか座ろうとするのだけど、出来なくて立ち上がってしまう。尻尾の付け根辺りを撫でると「キュン」と声を上げた。捻挫だ。うちの愛犬はよく捻挫する、尻尾の付け根辺りを。最初は雷だった。ベッドで眠っていたとき、大きな雷鳴が響いたのだ。家全体が振動するくらいの。それに驚いた愛犬が慌てて立ち上がったのだけど、その後『お座り』が出来なくなった。どういう起き上がり方をしたのか、尻尾の付...

pale asymmetry | 2020.12.22 Tue 21:43

Box Seeker

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「ねえ、見て」  家に帰ると、彼女がキッチンのダイニングテーブルから僕を呼ぶ。テーブルの真ん中には小さな箱が置かれている。彼女はその箱をじっと見つめている。 「どう?」  彼女が箱を指差す。小さな箱だ。少し緑がかった黒い色。艶はなく表層はざらついた感じがする。形は立方体で、八つの角の一カ所だけが斜めにカットされたように欠けている。その部分だけ鮮やかな紅色をしていた。この箱を気に入っているのだろう。彼女の眼差しからそう感じた。 「どうって?...

pale asymmetry | 2020.12.18 Fri 20:56

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