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雨が降っていた。 見上げれば簡単に雨粒が自分の顔を叩き、濡らしていく。酷く狭い視界の中で、暗く淀んだ空気が重く圧し掛かるようだった。太陽は沈み、雨雲は鈍色に沈み、目を焼く街灯は届かない路地裏。据えた臭いの充満するその一角に。 彼女は、座っていた。 雨水を含んで重くなった服は露出が多く、まだあどけない10代半ばの彼女には少し違和がある。ところどころの束にピンクの混じった金の髪は、やはり水分を含んでその顔や首に貼り付いていた。おそらくはしっかりと化粧を施されていたのであろう名残を残...
雪乃に!サイコロ振らせろ!! | 2022.01.13 Thu 23:55
目を開けて、初めて見たのは少年の顔だった。 そんな場合でもないのに、ぼんやりと。表情というのは、一度に幾つもの感情を表すことが出来るのだなと思った。 心配、歓喜、悲壮、感動…。たくさんの感情の名前が頭をよぎったが、しかしどれも彼の感情には相応しくはないと感じた。 彼は、誰なのだろう。 どうして、彼はそんな顔で自分を見ているのだろう。 わからなかった。 彼が、誰なのか。 彼の名前が、何と言うのか。 「君は、誰?」 彼女の口から放た...
雪乃に!サイコロ振らせろ!! | 2022.01.11 Tue 23:47
今回は全体で一ページほどの長さにすること。 テーマはこちら。一人の老女がせわしなく何かをしている――(中略)――そのさなか、若いころにあった出来事を思い出している。 二つの時間を超えて〈場面挿入(インターカット)〉すること。〈今〉は彼女のいるところ、彼女のやっていること。〈かつて〉は、彼女が若かったころに起こった何かの記憶。その語りは、〈今〉と〈かつて〉のあいだを行ったり来たりすることになる。 この移動、つまり時間跳躍を少なくとも二回行うこと。 一作品目:人称――一人称か三人称のどちらかを...
水平線上の雨 | 2022.01.11 Tue 19:53
JUGEMテーマ:小説/詩 「結局、新人対スサノオの形になっちまったすね」伊勢が、特別嫌味のようでもなく、ただ深刻な色の声で呟いた。 「――」木之花は、もはや何も言い返すことができないでいた。 「新人さんたちだけにはしない」天津はそれでも言い返す。「必ず追いつく」 「ああ」大山が頷く。「我々も状況見て、すぐに態勢つくるから。ひとまずは任せる」 「はい」 天津に化けたスサノオが運転して行ったと思われるワゴン車の姿は、なかなか見つからずにいた。よもや、すでに地下へ潜ってしまっているのか―...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2022.01.07 Fri 10:30
図書室の隅に幽霊の席があります。ある秋の黄昏時、そこにひとりの男子が座っていました。一定のリズムで本の頁を捲っています。グラウンドから野球部の掛け声が、体育館からブラスバンド部の練習する音が聞こえます。図書室にいるのは私と彼だけでした。私はカウンターの内側で、好きなミステリ作家の新刊を読んでいました。 探偵が死体を発見した時でした。顔を上げると、幽霊の席の男子がカウンターで貸出カードを記入していました。彼は二枚のカードを差し出すと、私には目もくれず行ってしまいました。手にしている本は一冊...
水平線上の雨 | 2022.01.04 Tue 04:48
心にガツンと来る物語って、絵柄の好みとか好みの構成とかを軽く凌駕していくんだなぁ…としみじみ思いました。 本日知った、とある漫画家さんの漫画。試し読みが出来たから軽い気持ちで読んでみたら結構心を抉っていって、2022年二日目にしてちょっとアンニュイな気持ちになっております(笑) タイトルは伏せますが、内容は一言で言えば『鬱』。設定にリアリティがあって陰鬱だけど、絵柄が暗くないのでそこまで落ち込まないと思います。が、これは希望が見えてきたんじゃないか?と思った瞬間に思い切り心を折りに来てそ...
雪乃に!サイコロ振らせろ!! | 2022.01.02 Sun 22:38
そら あおい くも しろい しかもはいたように 樹々はみどりで 街なみをかくそうとする そうされてはならじと 幾層もの団地がかさなりあっている 声 こどもたちの かけぬけていくそのあと こだまする おじぎ あいさつ なんどとなくくりかえされる 老婆たちのしわぶき 自転車がいきかう かごとざせきで武装している それをゆっくりとおいこしてとまるくるま とびらがひらかれ 荷がおろされていく とおくはなれたおおどおりからの喧騒 ひっきりなしだ そうしてゆっくりと かげがすこしづつかたちをかえていく そこにわたしは...
with a kiss, passing the key | 2022.01.02 Sun 00:00
JUGEMテーマ:小説/詩 しかし、と地球は思うのだった。じゃあ神は“出現物”ではないと言えるのか? 神は何でできている? 神は、いつからそこにいたのか? そもそも何処にいたのか? 宇宙が始まり地球が形成された頃、もうすでに神は神の姿で存在していたのか? ジャイアントインパクトが起きていた頃、神は宇宙の中にふわりと佇みそれを眺めていたというのか? 「案外」地球は我知らず呟いていた。「ジャイアントインパクトって、神が私にあれこれぶつけてきてたやつだったりして」 「え?」鯰...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.12.31 Fri 13:09
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