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JUGEMテーマ:小説/詩 宵の明星が皓皓と輝き 日没後の深き橙色の西の空を見詰めながら、 西方浄土といふ言葉が頭を駆け巡れば、 何処か感傷的な感情が込み上げてくるかと思ひきや そんな感傷に浸る余裕は微塵もない私は 私の内部に巣くふ異形の吾の頭を噛み切る術を探しては、 私の内部、其処を私は五蘊場と名付けてゐるが、 その五蘊場を我が物顔で闊歩してゐる異形の吾が のさばればのさばるほど 私の懊悩は深まるばかりで、 この私と吾との跨ぎ果せぬ乖離は 私の絶望の距離なのだ。 常人...
My First JUGEM | 2021.12.06 Mon 01:25
Jに
with a kiss, passing the key | 2021.12.05 Sun 00:01
JUGEMテーマ:小説/詩 幸一のヴィトンのバッグは首尾よく空(から)になった。 銀行を出た幸一は、郵便局に寄って転居届けを出した。転居先は五日前に飯田橋で会った友人宅である。電話をいれて、郵便物を受け取っておいてくれと頼むと、 「まあそれはいいけど、それより、この前もらった二十万は返すよ」と、その友人はいった。あの日、幸一は、一緒に住んでいることにしてくれといって彼に二十万を渡していたのである。 「おい、お前、なにか悪いことをしているんじゃないだろうな。桧山信用金庫の佐伯という...
狙われた男 | 2021.12.04 Sat 20:50
JUGEMテーマ:小説/詩 「スサノオっすか」結城が天津を見た後、岩天井を振り仰ぐ。 「塞ぐだと」時中が岩壁を左右に見回す。 「できるのでしょうか」本原が首を傾げ疑う。 その直後、暗闇が訪れた。 「うわっ」結城が叫び、 「塞いだのか」時中が呟き、 「できましたね」本原が溜息混じりに囁いた。 は、と天津が溜息をつき「何のつもりだ」と苦言を呈する。 スサノオは答えない。 「くっそー、もう一回やろう」結城は先ほど突き刺したローターを岩壁から引き抜いた。 「できるのか」時中が闇に慣れ...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.12.03 Fri 11:31
「おカネを持ち込んではいけないのでしょうか?」 幸一は平静を装って係官に訊くが、内心は穏やかでない。 「いや、そういうわけじゃありませんが、ただ、お若いのにあまりにもたくさんの現金を持っていらっしゃるので」 「へんなおカネじゃありませんよ。必要があって今日おろしてきたんです。なんなら、銀行に聞いてもらってもいいですけど。」 幸一はそういって、胸ポケットから高山営業部長の名刺をとりだした。 男は名刺と幸一の顔を交互に見て、 「疑うわけじゃありませんが、もしよけ...
狙われた男 | 2021.12.03 Fri 09:57
JUGEMテーマ:小説/詩 やっと月曜日になった。まるで一週間も函館に留め置かれたような気がする。 約束の十一時ちょうど、幸一は檜山信用金庫本店営業部を訪れた。 応接室に通され、男の行員から二枚の伝票を渡された。幸一は九千万と五千七百万の数字をそこに書き込んで、社判と銀行印を押して行員に返した。 「通帳もお借りできますか?」 そういって、行員は伝票と通帳を持って部屋を出ていった。 またもや幸一は待たされた。いつまでたっても誰も来ず、じりじりし始めたときである。 「お待たせ...
狙われた男 | 2021.12.02 Thu 22:58
JUGEMテーマ:小説/詩 待てども、高山はなかなか戻ってこない。不安で胃がねじれそうになったとき、ようやくふたりが戻って来た。 「お待たせしてすみませんでした」 高山は申し訳なさそうな顔をして、 「高橋さん、実はお願いがあるんです。今ここで奥尻支店の支店長と話して頂けますでしょうか。電話をつなぎますから。佐伯支店長のことはご存知ですよね? いや、気を悪くしないでくださいよ。我々としては、通帳と印鑑をお持ちだけでは高橋さんが本当に会社の方であるかどうか……」 それ...
狙われた男 | 2021.12.02 Thu 10:48
JUGEMテーマ:小説/詩 「部長、現金じゃなくて預手(よて)ではだめなんですか?」 総務課長がいった。 預手とは預金小切手のことである。 現金紛失や詐欺などの事故を防止するために古くからある銀行振り出しの小切手のことだ。その小切手を現金化するためには、どこの銀行でもいいが窓口に持っていかなければならない。したがって、盗んだものだとすれば犯人は必ず足がつく。備え付けられた防犯カメラによっても容姿(ようし)風体( ふうてい ) が一目瞭然となるのだ。 また、預手は線引き小切手として発行さ...
狙われた男 | 2021.12.01 Wed 20:34
JUGEMテーマ:小説/詩 二人は四階の応接室に入った。 「お取り引き頂いているのは、手前どもの奥尻支店ですね。大変でしたでしょう。会社は大丈夫でしたか?」 ソファに座るなり、高山が心配そうに訊いた。 「いまは、あとかたもありません」 「そうですか……」 高山は声を落とした。 「うちの支店もえらい被害をうけました。明和不動産さんの近くにありましたからね」 高山の手に、窓口の女が渡した一億五千万円の通帳が握られている。高山は幸一の靴に目をやり、その目はヴィト...
狙われた男 | 2021.11.29 Mon 12:14
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