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JUGEMテーマ:小説/詩 地球にとっては、実は対話どころではなかった。 ――誰だろう……? 地球はそんな疑問に囚われ、コア物質の噴出タイミングさえもう少しで誤るところだった。とんでもないことだ。まったく。システムを乱すのは、人間だけにして欲しいものだ。それというのも。 地殻を構成する花崗岩の中に、いつからいたのだろう――“その者”は? 「あー、冷んやりして気持ちいーい」そんな事をいう。 実体は見えないが――恐らく神なのだろう――なんとはなしに、ごろりと寝そ...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.09.27 Mon 11:06
問1:一段落〜一ページで、声に出して読むための語りの文を書いてみよう。 夕暮れ時の駅に列車が到着し、ひとびとが吐き出された。スーツ姿の会社員、制服姿の女子高生、ラフな格好のアルバイター。複雑怪奇な社会に組みこまれた歯車たちは、無意識に隊列を形成し、一定間隔を保って規則正しくホームを流されていく。 パッと一人が列から弾かれるように跳んだ。禿げ頭の中年男。折り目もわからないほど皺のよったスラックス、縫い目がほつれたグレーのジャケット、端の擦り切れた臙脂色のネクタイは緩んでいる。穴の開いたブラウ...
水平線上の雨 | 2021.09.26 Sun 07:50
いまぼくのてもとにはひとつもない かつてあったそのかお なやみをかかえこんでいるようにも ほくそえんでいるようにも つまり蠱惑のかおなのだ じつは世界中にあふれてる そしてだれもがそう認じている あのおんなだと あの女快だと であうおとこ だれもがあいつにもてあそばれたと そしてそのひとりがぼくだとなざしする ああ、そうやってほくそえんでいるがよい そうすれば、すくなくともぼくは安泰なのだ こよいもぼくはひとり 地下へとくだる そこでそのひとはねむっている
with a kiss, passing the key | 2021.09.26 Sun 00:00
JUGEMテーマ:小説/詩 前に文学批評空間に投稿していた「マイケル・マックルーアの声」を新・野坂政司の文の部屋に再投稿しました。 前のサイトの文面が読みにくかったからという理由です。 他の記事も、少しずつ新・野坂政司の分の部屋に再投稿する予定です。
野坂政司の拳禅一如 | 2021.09.23 Thu 11:07
JUGEMテーマ:小説/詩 「このコンテナって、何に使うの?」悠子は近所の主婦友達、綾香に訊いた。 「うーん、何だろね」綾香も首を傾げる。 「なんか、昔は倉庫代わりにしてたって聞いたけどね」もう一人の、情報通主婦友達、宏美が二人に教える。「大分前の、まだ町内会とか子ども会とかやってた時に」 「ああ」二人は納得した。「今はもうそういうの、ないもんね」顔を見合わせ頷く。 「うん。昔は子供服のお古とか、家で使わなくなった電化製品とかまで、不用品置き場みたいな感じでここに保管してたんだって...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.09.21 Tue 14:46
JUGEMテーマ:小説/詩 「昨日開いていただいた岩の“目”の位置を、覚えていますか」天津は訊いた。 前日に、岩盤への入り口を開いた辺りだ。だがすでにその入り口は閉ざされ、あの光り輝く空間は夢幻であったかのように、岩は足下から頭上遥か高くまで無言で立ちはだかる。小さく無力な人間という存在など気にも止めておらぬ風情だ。下手に逆らえば、瞬時に圧し潰されそうな気分を呼び起こす。 「えーと、どこだったかな」結城がきょろきょろと周りの岩壁に視線を巡らせる。 「あの辺りではないです...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.09.21 Tue 11:12
JUGEMテーマ:小説/詩 甘い匂い 甘い空 駆け抜ければ白い雲 まだ、夏空が見える 空気のにおいが好きだ スゥ〜っと、吸い込んだ時に、 風景が、時間が、時代が、こみ上げる こんな匂いがしたときを覚えている こんな風景の、こんな空だったと思い出す メープルシロップのかかった蒸しパンが ホカホカの湯気をあげている午後 おやつの時間に、飛び上がって喜んだにおいを思い出し そっと笑顔がこみ上げる ...
Jupiter〜夢を失わずに〜 | 2021.09.17 Fri 12:41
「くしゃみを買い取らせて下さい」 雑居ビルの一室。片隅に作られた申し訳程度の応接スペースのソファに、私は座っていた。慣れないスーツの膝に軽く触れる。 「どういう意味でしょうか? 私は事務職に応募したのですが」 くたびれたスーツに身を包んだ面接官が微笑む。 「そうでしたね。私、草目代行代表取締役の皺拭といいます」 社長だった。 「本題ですが、花昼さん、あなたのくしゃみを買い取らせて下さい。一回につき千円で」 くしゃみが多すぎる。一度始まると七、八回、長ければ二十回近く続く。 くしゃ...
水平線上の雨 | 2021.09.15 Wed 18:28
JUGEMテーマ:小説/詩 一夜明けた翌朝は、どんよりと曇った、肌寒い天候だった。 「おはようす!」結城は天候や気温や気圧に一切関係なく、事務室に入るなりフルボリュームで挨拶した。「昨夜はお疲れ様っした! ありがとうございました!」終劇後の舞台挨拶のように、腰から深々とお辞儀する。 「おはようございます。お疲れ様でした」木之花がにっこりと目を細める。「二日酔いなどはないですか?」 「はいっ、すこぶる元気です」結城は大きく頷く。「会社の諸先輩方とお話できて、大変勉強になり励みにもな...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.09.13 Mon 09:58
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