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JUGEMテーマ:小説/詩 「昔の化粧品?」天津が訊く。 「はい」本原が答える。 「何故昔の化粧品の匂いを知っているんだ」時中が訊く。 「私の祖母が使っていた化粧品と同じ匂いだからです」本原が答える。 「祖母ってあの、東海道五十三次のお婆ちゃん?」結城が訊く。 「それは父方の祖母です。化粧品の祖母は、もう亡くなりました」本原が答える。 「そうでしたか」天津が声を落とし、 「ではあの匂いは」時中が声を落とし、 「本原さんにとっては、懐かしい匂いなのかあ」結城が比較的声を落とした。 「...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.11.12 Fri 12:04
ガラス製のドアを開けると、ほんのり温かい空気に包まれた。加湿器が蒸気を噴いている。アロマオイルだろうか、不思議な香りが漂っている。観葉植物が二、三ある程度なのに、森のようだと思う。 「いらっしゃいませ」 「こんにちは」 椅子に腰かける。今日はどうします? と訊かれ、前回と同じ感じでと答える。 「それじゃ、切りますね」 鋏が入れられる。さく、という微かな音と感触に嬉しくなる。店内を満たすBGMはあまり聞かないジャンルの洋楽で、渋い男性ボーカルが耳に心地よい。さくさくさくと、鋏が細かくリズ...
水平線上の雨 | 2021.11.11 Thu 00:40
JUGEMテーマ:小説/詩 翌日、研修室に集合した新人たちに最初に告げられたのは、研修内容の変更についての事だった。 正確にいうと、研修内容の前倒し、である。つまり、本来の予定ではあと一日、練習用の洞窟にてイベント遂行手順の演習を行い、その後から現場でのOJTになるはずだったのだが、急遽それを一日分繰り上げ、本日ただ今より実際に受注した現場に向かい、天津立会いのもとでイベントを執り行うというのだ。 「大丈夫なのでしょうか」本原が無表情ながらも不安げな言葉を口にする。 「大丈夫で...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.11.05 Fri 11:59
JUGEMテーマ:小説/詩 心は揺らぐ 枯葉のように落ち葉のように 宙を舞うかの如く 風に流され 自分の気流に流され 自分の気圧に影響され 他者の言葉で闇を作り 人間なんて、こんな鏡合わせのような 出て行く念と受け取る言葉と波動に 自分の世界の言葉しか選ばない 誰かの目で見た事実を語られれば、また違う展開が 自分というものの狭さを教えたり また、悪魔のささやきを聞いたりもする 他者の言葉なんて 都合のいい...
Jupiter〜夢を失わずに〜 | 2021.11.05 Fri 10:51
夜がかえってくる 身をかたくしてそうおもう しじまばかりがこだまして もう随分とたつ 夜はなくなってしまった 否 本来のすがたをとりもどしたと ああだけどわたしのしっているそれは喧騒と猥雑にみたされていたのだ 闇と光があやなす一瞬の夢 おそろしくもあるが なつかしくもある なぜってそこでわたしがうまれたのだから そこで享楽をえていたのだから 夜は死にひんしている そしてそのままその存在を記憶のなかにのみながらえるのだと あなたもそうおもったはずだ そしてひとりのアッシェンバッハを覚悟したはずだ だが...
with a kiss, passing the key | 2021.10.31 Sun 00:12
JUGEMテーマ:小説/詩 ――もうあんな惨状はまっぴら御免だ。 恵比寿は心の底から強くそう思っていた。 ――何もできなかった……ただ惨状を見守ることしかしてやれなかった。 逃げ惑う人びと、阿鼻叫喚、無情にもすべてを呑み尽くす、火砕流。 ――俺たち神は、実際のところ無力だ。 焼ける棟々、木々、田畑、真っ白な灰、そして真っ黒な灰。 ――あの後も地球はずっと変わらず、相変わらずそのシステムを稼動させ続けてる……当たり前だけど、当たり前のように。 茫然自失の...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.10.29 Fri 12:37
問一:最初の課題で、執筆に作者自身の声やあらたまった声を用いたのなら、今度は同じ(または別の)題材について、口語らしい声や方言の声を試してみよう――登場人物が別の人物に語りかけるような調子で。 問二:書いてみた長い文が、単に接続詞や読点でつなげただけで構文が簡単になっているなら、今度は変則的な節や言葉遣いをいくらか用いてみよう。 両問共通:二種類の分の長さでそれぞれ別の物語を綴ったのなら、今度は同じ物語を両方で綴って、物語がどうなるのか確かめてみよう。 問一: そうそう、おかしなことと...
水平線上の雨 | 2021.10.25 Mon 00:16
JUGEMテーマ:小説/詩 「ふふん」スサノオは結界を見て、鼻で笑った。「まあ今時の若い奴らは弱っちいからな」 天津は何も言わず、視線を右に、左にゆっくりと動かした。 「それでも例えば、石礫を無限に一つ所に投げつけ続けたとしたら、そりゃあ幾ら神の張った結界でもいずれは崩れるだろうけどさ」 「なぜそんなことを」天津は眉をしかめた。「新人さんたちに危害を加える気か」 「例え話だよ、ただの」スサノオは呆れたような声で言い、それからケラケラと楽しそうに笑った。「新人を潰したところで、俺に...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.10.22 Fri 12:17
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