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小説/詩

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小説/詩
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プールサイド

「何してるの」  花弁の声が降り注いで、あやうく溺れるかと思った。視界の端に人影を認め、鉛を装って答える。 「浮かんでる」  二十五メートルプールの真ん中で仰向けになって漂っていた。からだが浮かぶ感覚も、視界が仮想空でいっぱいになるのも、照りつける陽燈の温かさも好きだ。 「楽しい?」  考えたこともなかったから、どうかな、と曖昧な返事をする。からだを起こして立ち泳ぎしながら声の主を探す。  幽霊がいた。  透けるような肌、長い髪、華奢なからだ。僕に似ていると直感的に思って、いや僕が彼女に似て...

水平線上の雨 | 2021.07.04 Sun 23:59

負社員 第19話 働けど働けど尚楽にならざる我が暮らしよ何とかなーあれっ

JUGEMテーマ:小説/詩   「あれ、店長。おはようございます」板長が厨房に入って来るなり眼を丸くする。「びっくりしたあ。シャッター開いてるから」 「魚泥棒が来たとでも思った?」酒林は調理台に向かって包丁を振るいながら笑顔で答える。 「いや、そんな、はは」板長はスーパーの白いポリ袋を三つも提げて来ており、それらを別の調理台の上にどさどさと置きつつ苦笑する。「今日、燻蒸の予約日だったっけかなーとか思って」それから酒林の横に近づく。「お、鯛ですか」 「そ」酒林は頷く。魚をさばく手さばきは...

葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.07.04 Sun 16:37

詩『廃屋にて:A Ghost In The House』

ななめに ひるよりもあかるい そしてぼくのからだもななめにあかるい つきはのぼる まどにちかづけば ななめのしろさがます こんな時間に嬌声がひびく 街のこどもたちだろう にわを一望する こえのぬしたちがてにとるようにわかる フランドルの画家にでもなった気分だ かれらがこのぼくをおそれているのはしっている 廃墟の亡霊 それがぼくの渾名だ でもきみはきづかないだろうか どうしてこんなよふけにかれらがあそびほうけていられるのか、と そして、ぼくのめのまえにあらわれたきみはだれなのか、と

with a kiss, passing the key | 2021.07.04 Sun 00:00

ファースト・コンタクト講座

JUGEMテーマ:小説/詩   「コミュニケーションを構築する際、主に二つのスタイルがあります」講師は言った。  皆はそれぞれのメモリに情報を書き込んでいく。 「まず一つめ」講師は続ける。「最初から相手にガーッと近づき、その後この相手とは話が合わないということが判明すれば、少しずつまたは急激に、相手から離れ距離を置く、というスタイル」  皆は一生懸命書き込んでいく。 「それから二つめ」講師はさらに続ける。「最初は相手から距離を取り、様子見をして、この相手なら話が合うかも知れないと判断し...

葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.06.29 Tue 17:44

負社員 第18話 あなたの言ってることのタイトルがわかりません

JUGEMテーマ:小説/詩    天津の説明によると、研修内容としての後半部分「開いた岩の中に入り、その中でしかるべき動作を行い、岩から出てそれを閉じる」というところは午後以降、場合によっては明日行うとのことだった。 「岩が開くのに、そんなに時間がかかるという事ですか」時中の問いに天津は、 「それはその時その時、ケースバイケースで違うんですが、まあ研修期間中は一つ一つの作業をゆっくりと行っていきましょう。上でお昼を食べてから、また降ります」と説明した。   「いやあー、午前中だ...

葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.06.29 Tue 10:02

詩『レテのうみ:Lethe, The Sea』

そのひとときた 恋人をなくしたばかりのそのひとと じっとなみをみている うちよせるそのまじかにみをよこたえる そのひとと そのかたわらにしゃがんでやっぱりなみをみている 無言 沈黙 このときをどうよんでもかまわない ことばはなんのやくにもたたないのだから ふと視線をかんじる みあげているのだ わたしを きもちはわからないでもない でも いまはそのときではないだろう だからたちあがる すながまう そしてかぜをかんじる そらはあおい うみよりももっと

with a kiss, passing the key | 2021.06.27 Sun 00:00

負社員 第17話 沈黙が金なのか言った者が勝つのか例によって臨機応変に対応要なのか

JUGEMテーマ:小説/詩   「ん。どしたあ」鹿島がPCから顔を上げ、部屋の隅に設えられてある池の方を見た。「鯰?」 「べっつにー。大したことじゃない」鯰はゆらりと水中で身をよじりながら嘯く。 「そ」鹿島はまたPCに向き、資料や報告書の確認を続ける。「邪魔すんなよ」一言だけ、そういう。  鯰は、何も答えなかった。もしかすると、答え“られ”なかった、のかも知れない。恵比寿はそっと肩を竦めた。  声や言葉は穏やかだが、結局鯰は鹿島に“抑え”られている立場だ。その事を忘...

葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.06.22 Tue 09:13

詩『変貌:My Appearance Changed』

鏡にうつるのはあの娘だ わたしとどこがちがうというのであろう おなじ髪型 おなじ化粧 そうすればあの娘よりもはるかにうつくしい そうして、はじめる 内心にはえる虚像をねめつけながら おのがかんばせに粧ゐをほどこす ほぅら、もうできた 鏡のなかのおのれにみいり そして媚をうる かつてのわたし いや それを凌駕する だから きがえ たち まい そしてほほえむ さようなら そして はじめまして わたしのきょうは いまこれからさ そうしてなんどもなんども ひとり おどる くるくるくるくると 真実にめをそ...

with a kiss, passing the key | 2021.06.20 Sun 00:00

負社員 第16話 社の看板、背負うか、掲げるか、掌の上で転がすか

JUGEMテーマ:小説/詩    こつこつ  こつこつ  こつこつこつ    岩を叩く音は続いていた。    こつこつ  こつこつこつ  こつこつこつこつ  こつこつ  こつこつこつ  ひょんひょんひょんひょん    しん、と音が止んだ。皆、無言だった。“音”を再開させたのは、時中だった。彼はもう一度ハンマーを岩壁に打ちつけ始めたのだ。    ひょんひょんひょんひょん   「何だ、この音は」時中が眉をひそめる。 「ありましたね」天津が微...

葵むらさき言語凝塊展示室 | 2021.06.14 Mon 13:51

1997年から〜忘れかけた記憶〜。

JUGEMテーマ:小説/詩   1997年からの日々を邂逅するに当たり、記憶の断片の不確かさや跡切れが生じるという理由で、   書ける限界というものが自分でもわからない事と、不定期な連載になることをご了承願います。   また、事実なのか、フィクションなのかは、読み手にゆだねるものであります。   ****************************   1997年から〜忘れかけた記憶〜(1)   7月の声を聴いた頃だった。 隣の同じ建売一戸建て住宅に...

Jupiter〜夢を失わずに〜 | 2021.06.14 Mon 13:31

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