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甲板のうへを幾羽ものとりがゆきかう あおぞら - あおいうみ - まっしろな帆 手札にあるのは常套句ばかり みあげるわたしとはべつに もうひとつの視界がひろがる 陽をうけて帆先をこちらにむけてにらむそこから逃れるように おおきくたかく そしてゆっくりとまわりこむ なみにゆれるおおきな全貌をましたにとらえ そして逆光のなかに船尾をとらえる しずみゆく陽はひろがる帆影にあって、みることもできない そしてわたしはあの娘にささやく 秘密の匣のなかとはおおちがいだろう、と 航海はこの先、ずっと平坦できっと...
with a kiss, passing the key | 2020.03.29 Sun 00:00
こんにちは、もりちゃんです。 今回は最近読んだライトミステリーの2冊をご紹介します。一つは騎月孝弘著『彩堂かすみの謎解きフィルム』で、もう一つは望月麻衣著『京都寺町三条のホームズ』です。 もりちゃんは元々はガッツリしたミステリーやスパイ小説のようなハードなものが好きでしたが、年をとったせいか好みも変わり、最近はライトミステリーや、人間を描いた内容が好きになりました。新しいジャンルに好みが移り、読書が増々好きになりました。 今回紹介する小説はライトミステリー...
もりちゃんの一休み | 2020.03.28 Sat 08:55
JUGEMテーマ:小説/詩 翌日、私は父と母といっしょに――父はけっきょく、母の箒のうしろに乗っていくことになった――聖堂へと向かった。 大工と、聖職者と、キャビッチスロワーを百人ずつ――フュロワ神のいいつけどおりに、たくさんの人びとが集まってきていた。 もちろん全員が聖堂の庭に入れるわけもなく、その周囲の道の上、つまりキューナン通りに、集められた人びとはあふれかえっていた。 それにしても、すごいなあと思う。 たった一日――いや、半日で、みんななにもうたがうことなく、神の...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2020.03.27 Fri 10:08
JUGEMテーマ:小説/詩 ◇◆◇◆聡明鬼◆◇◆◇ 第92話 最期(全100話) 風の音を、予測していた。 天心地胆を抜け陰陽界に入れば、いつものごとく風の音が聞えるのだろうと。 だが此度、それは聞えなかった。 否、聞えていたのかも知れないが、スルグーンの耳には届かなかったのだ。 何故ならば、そこには鬼どもがひしめき合っていたからだ。 鬼どもが、ぎゃあぎゃあと喚き声を挙げて我先に陽世へ抜けんと押し合いへし合いしていた。 スルグーンは翼を広げ、鬼どもの頭の上にするりと...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2020.03.27 Fri 10:07
JUGEMテーマ:小説/詩 尖っていた。 誰もかれもが若かりし頃に、何かにもがきながら 青春の日々、怒涛のような悩みの日々なのに笑いに興じていた。 カッコよく煙草を吸いたかった、アイテムという名の煙草。 時に、てめえなんざの顔に吹きかけてもやった煙を 自分でも深く吸い込みながら、チャラつかせる「火」というアイテム。 喧嘩するしか能がない、常にの陣取り合戦。お前より俺が上だろ?なめんなよ?のポーズ。 美学に育まれ、美学の中で生きる。 ...
Jupiter〜夢を失わずに〜 | 2020.03.22 Sun 14:37
ずっとなにもかわらずによどんでいる それがここを支配している ふえることもないかわりに、なくなりはけしてしない そして、だれもきづかない そうやって、そこでくらしている そして、ふとおもう このそとにはいったいなにがあるのだろう、と これからさきいったいなにがおこるのだろう、と だがじっさいはいたずらにときがすぎていくだけだ ゆめはみることができる しかし、ここでのくらしとさほどかわらない ひがのぼりひがおちる よるにねむればあさにおきる 時間は残酷だ かがみをみるまでもなく、かくじつにとしお...
with a kiss, passing the key | 2020.03.22 Sun 00:00
JUGEMテーマ:小説/詩 フュロワはにこにこしながら三人のアポピス類を地上に下ろしてあげたけれど、三人はおたがいにしがみつき合ってなかなかはなれずにいた。 「お前ら、この人が神さまだって知ってたか?」ユエホワがラギリス神を(本当に失礼なことに)指さしながらきくと、三人は無言で首を横にふった。 「えっ、知らないの?」私は目をまるくした。「なんで?」 「だって俺たち、ずっと人間界にいたから」ケイマンがぼそぼそと答える。「なにも知らないんだ……アポピス類のことも、地...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2020.03.17 Tue 10:03
JUGEMテーマ:小説/詩 ◇◆◇◆聡明鬼◆◇◆◇ 第91話 欺瞞(全100話) 焔を吐く。 左右に、そして上下に頸を振り、魔焔を渦のごとくに撒き散らす。 鬼どもの壮絶な悲鳴が焔の向こう側から轟いてくる。 消し炭と化したその者どもは瞬時に粉となり、焔の熱が生んだ風に散らされていずこへともなく散ってゆく。 背の上に落ちてくるものは揺さぶって振り落とし、尾に掴まろうとするものはそのまま締め上げて龍の頸の硬い鱗にぶつけ落とす。 龍馬たちはそれぞれに、空の天心地胆から降って来る無数の鬼ども...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2020.03.17 Tue 09:58
わたしをのせた列車ははしりつづけている いま、なすべきはそれを停め、ここからおりてしまうことだ 選択肢はそれしかない そしていく そしてはしる そしてそこへとむかう 身の危険はあるだろう 悪漢におそわれるやもしれぬ やすめる場所もない くうにくえないときもつづく 服はやぶれ けがをしないともかぎらない みちにまよい 所持金はわずかだ いまあるもの いま保障されている一切はきっとうしなわれる だがそこへとむかうしかない 骰子はとっくにとうじられたのだ しかも むくわれるともかぎらない たとえそこにたど...
with a kiss, passing the key | 2020.03.15 Sun 00:00
JUGEMテーマ:小説/詩 「えっ」私は目をまん丸く見ひらいた。「地母神界にも神さまがいるの?」 「うん。いるよ」フュロワはなにも迷わずまっすぐにうなずいた。「といっても“神”と呼ばれるようになったのはつい最近のことだけどね」 「どういうことだ?」ユエホワが眉をひそめてきいた。「それまでは神じゃなかったってことか?」 「そう」フュロワはまたうなずいた。「鬼魔だったよ」 「ええーっ」私は山火事を発見したときのように大声でさけんだ。 「鬼魔って……アポピ...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2020.03.10 Tue 21:39
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