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JUGEMテーマ:小説/詩 「それで、このあとどうするの?」母が祖母にきいた。「妖精があらわれるまでずっとここで待つつもり?」 「いいえ」祖母は肩をすくめた。「どうやら粉送りたち、もうこの森の中にはいないようだから、場所を変えるわ。でもせっかくだから、ひとつやっておきたいことがあるの」そう言って祖母は、肩からななめにかけてある小さなバッグの口をあけ、中をのぞきこんだ。 ハピアンフェルがその近くに、ふわりと降り立つ。 「出ているわ」祖母がそっと言い、ハピアンフェルを見てにこりと笑う...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2020.04.28 Tue 13:22
JUGEMテーマ:小説/詩 ◇◆◇◆聡明鬼◆◇◆◇ 第97話 血の色(全100話) 他のどの鬼の姿も、眼には入らなかった。 その眼に見えているのは唯一足、刀を手に素早く移動し続けるテンニのみであった。 リューシュンはその姿を追い、焔を噴いた。 だがもどかしいことにテンニはいつも寸前でそれをかわし、不敵な笑みさえ浮べながらリューシュンから遠ざかる。 リューシュンは怒りの咆哮を挙げ、テンニを追い、焔で襲った。 その焔がテンニ以外の鬼どもを焼き殺そうとも、今のリューシュンに...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2020.04.27 Mon 11:58
みるともなくながめていた 車窓 そこにうつるのは田園 まさにそれだ みどりとあおの階調 そこにときおり朱や橙がまじる なにもない そうおもう これまでも そして これからさきも そこに くろいかげが不意におそう ほんの一瞬の出来事だ ふりかえっても とっくにみえない みちはまっすぐで 加速するばかりなのだ そのはやさとともに わすれさってしまえばいい だってみえないのだもの だってここは2度とこないのだもの でもずっとしこりとなってのこっている 不安とはそういうものだ 1点のようなちいさいもの それが次...
with a kiss, passing the key | 2020.04.26 Sun 00:00
JUGEMテーマ:小説/詩 かぐわしく香る色とりどりの花にはたちまち実がなり、花びらはおしげもなくはらはらと散り落ちていった。ああ、とため息をもらす人もいた。私も、こんなにあっという間に散っちゃうなんてもったいないなあ、と思った。 「フュロワ神が、時間を早くまわしているんだろうね」父がつぶやく。 「えっ」私はおどろいた。「時間を?」 「そう。花たちの時間をね」父がにっこりと笑う。「ぼくたちがあっというまに老人になったりはしないと思うから、だいじょうぶだよ」 「そうなんだ」私は少し...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2020.04.21 Tue 14:31
JUGEMテーマ:小説/詩 ◇◆◇◆聡明鬼◆◇◆◇ 第96話 夢祓え(全100話) いくつかの種の植物には、悪夢を取り込むという力がある。 そういった植物の枝葉を用いて、人形を作る。 マトウは小さな紅い実をつける植物を好んで使った。 その小さな丸い実を、まるで眼のように人形の頭のところに刺しつけるのだ。 マトウはそれをする際、無論言葉もなく真面目くさった貌でやっていたのだが、リシは内心、つい笑いそうになるのを必死で耐えなければならなかった。 人形に、わざわざ眼をつける...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2020.04.21 Tue 14:14
「もうー、お姉ちゃんったらー。両親もー。」 「あはははは!」 「・・・笑っていいのか悪いのか、判断に迷う・・・。」 「・・・思い出したらおなかが痛い・・・。・・・でも・・・、そっか・・・。そうなんだ・・・、じゃあ・・・えっと・・・、バッグに入れてきたかな・・・。車の中だっけかな・・・。あ、バッグの中にあったあった。」 ・・・ お姉ちゃん、バッグの中から大事そうに小さい紙の袋を出すと、神妙な顔をして、私に差し出した。 ・・・ 「はい、これ。・・・今見てもいいし・・・。後で...
碧海 | 2020.04.19 Sun 16:43
「えへへ・・・。また泣けてきちゃった・・・。」 「・・・いっぱい泣きなよ・・・。一番つらかったのは奈津美なんだから・・・。よく耐えたよね・・・。」 「・・・ううん・・・。お姉ちゃんとお父さんとお母さんの方がつらかったよ・・・、絶対・・・。あたしなんか当事者なんだから・・・、耐えて当然だよ・・・。全然だよ・・・。」 「・・・そんなことないって・・・。」 「・・・3人がそばにいてくれたから・・・心強かったし乗り切れた・・・。耐えられたのは家族のおかげだから・・・。でも・・・、お姉ちゃん...
碧海 | 2020.04.19 Sun 16:17
「違うよ!捨てたんじゃなくって、生かしただよ!・・・」 「うんうん、ほんとそうだよね・・・。ほんとにそう・・・。お姉ちゃん、言ってくれたよね・・・あの時も・・・。」 「・・・」 「・・・」 「・・・」 「・・・諒ちゃんね・・・、まーちゃんの結婚式の次の日・・・、私にそういうこと・・・、ぼかしてだけど・・・、知ってたって・・・打ち明けてくれたの・・・。」 「・・・」 「・・・そしてね、そっと労わるように・・・手を握ってくれたの・・・。」 「・・・」 「・・・私、なんかもう泣...
碧海 | 2020.04.19 Sun 15:53
「・・・奈津美・・・。二階でちょっと寝てきなさい!熱がある顔してる・・・。」 「ぶっ!・・・だから、違うって!元気だってば!お姉ちゃん、心配性!それより、お茶入れるね!コーヒーが良い?」 「あ、そだね・・・、お茶にしようか。・・・飲んだらまじでお昼寝したら?飛行機、疲れたでしょう?・・・って、亜沙美と一緒だね!お茶、昼寝、夕飯コース!」 「言えてるー!」 「あたしがお茶用意するから、あんた、ここでマッサージでもしてなさい。」 「はーい、わかりました!よろしくお願いします。」 ・...
碧海 | 2020.04.19 Sun 15:14
「はい!着きました!お疲れ様!私、ゆっくり車入れるから、奈津美は先に降りて、家、入ってて!」 「はーい!お疲れ様です!車、よろしくお願いします!」 おー!懐かしい我が家! この間来たのいつだっけ?まーちゃんの結婚式以来?まさか?・・・ 何年経ってんの?!って話だよね! お泊りバッグを持って、なぜかちょっとはやる気持ちで、玄関まで急ぎ足で行ってみた。 ・・・あー! この匂い!!実家の香り〜! 玄関の前に立つと、実家の匂いがするー! 「お母さんー!ただいまー!九...
碧海 | 2020.04.19 Sun 14:06
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