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7 東京オリンピックの翌年に当る一九六五年は、戦後史にとって、ひとつの特筆すべき画期であった。この年にひとつの時代が終り、新しい時代が始動を開始したのである。 六五年に放映されたNHK大河ドラマ(第三作目)は緒形拳の主演による『太閤記』(吉川英治原作)であった。 この作品は、織田信長役の高橋幸治や明智光秀役の佐藤慶などの準主役級の脇役たちの渋い好演もあって、なかなかに優れた出来ばえで、特に、秀吉役の緒形拳の生気溢れる晴れやかな笑顔と高橋幸治の寡黙で重厚な、奥ゆきのあ...
星辰 Sei-shin | 2016.04.17 Sun 15:47
藤村操の死 藤村操の自殺後間もなくの明治36年5月26日、黒岩涙香が主宰していた万朝報には、操の叔父で著名な東洋史学者であった那珂通世の哀悼文が「巌頭之感」とともに掲載され、翌27日には涙香もまた「少年哲学者を弔す」と題した一文によって操の死を「哲学のための死」と意味づけ、かくして少年の死は、この国における「哲学のための」自殺第一号としてジャーナリスティックな讃美の的となった。 「人生不可解」は若者たちの間で流行語と化し、華厳の滝へ身を投げる者が続出したため、当局は「巌頭之感」を削...
星辰 Sei-shin | 2016.03.20 Sun 16:52
4 一九五〇年代の日本人の生存感覚に息づいていた闇の気配は、六〇年代の初頭までは、たしかにその生命力を保っていた。 一九六〇年から六一年にかけてテレビ放映され大ヒットした子ども向け冒険活劇ドラマ『快傑ハリマオ』は、そのような生命感覚の最後の輝きを象徴する印象的な作品であった。 東南アジアを舞台に、帝国主義列強の植民地支配に苦しむ原住民を助けて、解放と独立のために戦う謎のゲリラ隊のリーダー「ハリマオ」(実際は、消息を断った、日本海軍の特務機関の将校「大友中尉」)...
星辰 Sei-shin | 2016.03.20 Sun 16:43
この「川喜田晶子KJ法blog」とは別に、私が編集責任者としてブログ「星辰 Sei-shin」を新たに開設いたしました。 そのいきさつにつきましては、「星辰 Sei-shin」のプロフィールのページ及び、川喜田八潮の記しました「ブログ「星辰」開設のごあいさつ」をご覧いただければとおもいます。 川喜田二郎と川喜田八潮の思想的な共通点とも言えることですが、ブログタイトルの説明文として、「〈脱・観念的〉な生活思想の追求による、新しい世界視線創造の試み」と掲げました。 KJ法という方法に関わりながらも常に、川喜田二...
川喜田晶子KJ法blog | 2016.02.24 Wed 18:34
はじめに 明治36年(1903年)5月22日、藤村操(当時16歳10ヶ月)という少年が自殺した。 日光華厳の滝に身を投じる直前、彼が楢の大樹の幹を削って書き遺した「巌頭之感」は呪文のように当時の若者の心をとらえ、後追い自殺者はその後四年の内に未遂も含め百八十五名にのぼったとされる。 「巌頭之感」の全文は次のようなものだ。 悠々たる哉天壌、遼々たる哉古今、 五尺の小躯を以って此大をはからむとす。 ホレーショの哲学竟に何等のオーソリチーを価するものぞ。 万有の真相は唯一言に...
星辰 Sei-shin | 2016.02.18 Thu 21:15
1 私は一九五二年生まれだから、二十世紀後半の五十年近くを生き抜いてきたことになる。 私が生まれた頃、日本社会は、大量の失業者を生み出したドッジ・ラインによる強引なデフレ政策と朝鮮戦争の特需景気で一気に独占資本中心の戦後資本制の再建を成しとげ、終戦以来の飢えと極貧の時代を抜け出すと共に、アメリカのバックアップの下に自民党の長期単独政権による高度経済成長への途を準備しつつあった。 しかし、それはまだ古き良き時代だった。 巨大な犠牲を払いながらも、日本人はこの...
星辰 Sei-shin | 2016.02.18 Thu 15:38
ある20代の女性の言葉が印象的でした。 「私は勘がいい方なんですが、いつも、その勘よりも、こうした方が得だとか、有利だとか、そういう気持ちで、勘の方にフタをしてきた気がするんです。そうやってフタをしたときにいつも道を間違えてしまって。」 これは今の若い世代に共通する苦い苦い認識のようにおもわれました。 大学で講義などしますと、今の学生は、ちゃんと聴いているのかいないのか、釈然としない表情だったりするのですが、ふと、今、こちらの言葉が皆のはらわたに沁みわたっている、と感じる瞬間があるもので...
川喜田晶子KJ法blog | 2015.07.30 Thu 18:01
〈守り人〉シリーズで人気のファンタジー作家、上橋菜穂子の最新作『鹿の王』を読みました。 文化人類学者としての貌も持つ作者は、多彩な民族の風習や世界観を生き生きと描き分けつつ、民族が「生き抜く」ことと人が「生き抜く」ことを複雑に絡み合わせたファンタジーを次々と発表。今や大人も子どももその作品世界に魅了されています。 代表作の〈守り人〉シリーズでは、主人公のチャグム皇子が精霊の卵を身に宿してしまい、サグという「こちら側」の世界とナユグという「あちら側」の世界とを生き抜き、その成長を通...
川喜田晶子KJ法blog | 2015.05.30 Sat 16:47
★霧芯館ーKJ法教育・研修ーのホームページはこちら→ http://mushin-kan.jp 「最近東京を騒がした有名な強盗が捕(つか)まって語ったところによると、彼は何も見えない闇の中でも、一本の棒さえあれば何里でも走ることが出来るという。その棒を身体の前へ突出し突出しして、畑でもなんでも盲滅法に走るのだそうである。 私はこの記事を新聞で読んだとき、そぞろに爽快な戦慄を禁じることが出来なかった。 闇! そのなかではわれわれは何を見ることも出来ない。より深い暗黒が、いつも絶えない波動で刻々と周...
川喜田晶子KJ法blog | 2015.04.29 Wed 11:14
昭和二年、「ぼんやりした不安」に呑み込まれて自ら命を絶った芥川龍之介は、大正九年、「赤い鳥」に「魔術」という寓話を発表しています。 バラモンの秘法を学んだという若い魔術の大家“ミスラ君”を訪れた主人公の“私”が、鮮やかな魔術に魅せられて自分も習得しようとするのですが、ほんの二、三分見させられた夢の中で愚かしい慾に足をすくわれ、魔術を使う資格の無いことを露呈してしまうというお話です。 夢の中で主人公は、習いたての魔術を友人たちに披露し、暖炉の中の真っ赤な石炭を無数の金貨に変じてみせます...
川喜田晶子KJ法blog | 2014.03.30 Sun 21:45
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