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病める児はハモニカを吹き夜に入りぬもろこし畑の黄なる月の出 『桐の花』 幼少期の病の思い出は、〈時間〉をやりすごさねばならない苦痛とともに、世界が不意に甘く秘密の扉を開いてくれるかのような、異次元との親密さの記憶として蘇る。 病児がハーモニカを吹きながら時をもちこたえてようやく夜になる頃、日常がふと異形の貌をみせるかのように、もろこし畑に黄の月が出る。病んだ自分と、病んだ黄の月。世界は閉じる。 不吉でもあり、甘い吸引力をも持つこの風景は、おそらくは白秋の幼少期に刻印...
星辰 Sei-shin | 2021.04.12 Mon 17:02
JUGEMテーマ:日本文学 「没後50年 今夜はトコトン 三島由紀夫」(NHKBS 4・4)を録画で観た。瀬戸内寂聴や美輪明宏など、三島由紀夫を直接知る人も登場して貴重な証言が聞けたし、ノーベル文学賞や東大全共闘、縦の会、市ヶ谷の自衛隊員への演説をめぐって、当時の生々しい映像もあって、50年前の衝撃的な事件を思い出しながら観た。 三島由紀夫と言えば、一番の問題はあの衝撃的な死である。この番組で佐藤秀明(三島由紀夫文学館館長)氏の解釈・解説になるほどと思った。 佐藤氏によれば、「英雄」...
見る 読む 歩く | 2021.04.07 Wed 19:43
「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,96 と、鏡の中から私の姿を見るなり言って、片手を後ろの方へ伸ばして、彼女が指し示すソォファの上には、三越へ頼んで大急ぎで作らせた着物と丸帯とが、包みを解かれて長々と並べてあります。 着物には口錦の入っている比翼の袷で、金紗(きんさ)ちりめんというのでしょうか、黒みがかった朱のような地色には、花を黄色く葉を緑に、点々と散らした總(ふさ)模様があり、帯には銀糸で縫いを施した二たすじ三すじの波がゆらめき、ところどころに、御座船(...
「3分読むだけ文学通」 | 2021.03.31 Wed 23:04
JUGEMテーマ:日本文学 今年も心待ちにしていたいちはつの花が咲いた。いちはつの花が咲くと、正岡子規の いちはつの 花咲きいでて 我目には 今年ばかりの 春ゆかんとす が浮かぶ。ネット検索だと、いちはつの花は紫らしく、我が家のはシロバナ。花の時季も5月とあるから、ひょっとして違うのかもしれないが、ずっと「いちはつの花」と思って、短命で亡くなった子規への感慨とともに大事にしてきた。今年も咲いた。いつものように咲いた。よかった、と思う。それが何十年も続いた。花もこちらもい...
見る 読む 歩く | 2021.03.27 Sat 19:22
JUGEMテーマ:日本文学 深田久弥は、昭和46(1971)年3月21日、山梨県・茅が岳登山中に脳卒中で急逝した。「山の作家 登山中に急死」のニュースは、夕刻、テレビ・ラジオが伝え、翌日は新聞各紙が大きく報じた。 翌年(昭和47年)4月、山村正光の案内で妻の志げ子が追悼登山、郷里に建てたお墓に手を合わせている時よりも、身近に夫を感じたと言い、同行の近藤信行も、茅ヶ岳が「墓標」のように思えたという。七回忌には終焉地点に記念木柱が建てられ、その後石碑が建立された。 そ...
見る 読む 歩く | 2021.03.21 Sun 10:26
JUGEMテーマ:日本文学 『日本百名山』で知られる深田久弥は、若い時から俳句に親しみ、戦後の郷里大聖寺時代には、「はつしほ句会」を興し、亡くなる直前まで月例句会の選者を務めた。没後、妻志げ子が『九山句集』を上梓した。戦前、鎌倉文士の時代には?浜虚子にも近づき、応召の際には「梅凛々し九山少尉応召す 虚子」の句が贈られた。大きな結社に属さなかったせいか、俳人関係の事典等に「九山の」記載はない。亡くなる前日、韮崎城址を歩いた時の二句を手帳に遺した。 犬ふぐりまず現は...
見る 読む 歩く | 2021.03.21 Sun 08:03
JUGEMテーマ:日本文学 『山と渓谷』1月号で、驚いたのは、深田久弥の富士山大滑降の記事だ。取材の『山と渓谷』記者も知らなかったというが、深田久弥のスキーについては関心のある私も、まったく知らなかった。現在はこの富士山大滑降の記録は写真と一緒に山の文化館に展示されているというが、昔々、私の訪れた時にこの展示はなかった。文学全集、文学事典の深田久弥についての掲載記事にも載っていなかった。 しかし、今回『人物書誌大系 深田久弥』(1988刊)の詳細・綿密な「年譜」に詳しい記載のあ...
見る 読む 歩く | 2021.03.19 Fri 05:04
JUGEMテーマ:日本文学 『山と渓谷』1月号、深田久弥の『日本百名山』特集と分かって注文した時には、既に完売。 やむなくAmazonから Kindle版「山と渓谷」を購入、その時は閲覧できたが、その後、読めなくなった。 購入履歴から雑誌名は出てくるが、読む手順がわからない。あれこれ試行錯誤したが、ダメ。時間の浪費。 仕方なくヤフーの知恵袋から知恵を借りた。それで、なんとか閲覧はできるようになったが、これは!というページを手もとに残そうにも、コピーが出来ない。全体のダウンロードも出来...
見る 読む 歩く | 2021.03.18 Thu 18:47
資質の親近性 私が、この書においてまず注目したいのは、篤胤と寅吉の感性及び内的世界の、異様なまでの「シンクロ率の高さ」である。しかも、それは、初対面の時からすでに発生している。 なぜ寅吉は、初めて出逢ったばかりの平田篤胤という人物に、人相を見ただけで、「あなたは神様なり」と言い得たのであろうか? たしかに、彼は、篤胤に出逢う直前に、「近いうちに、お前の頼りとなる人物に出逢う」という師の伝言を聞かされてはいた。 しかしだからといって、その人物が「平田篤胤」その人であると、どう...
星辰 Sei-shin | 2021.03.18 Thu 16:46
JUGEMテーマ:日本文学 「愛と美の宝庫」――実篤記念館収集名品展が、調布市文化会館たづくり1階展示室で開催中だ(〜2・28)。調べ物があて図書館に出かけたついでに寄った。実篤の作品の他に、親交のあった芸術家の作品、池大雅「曲江行楽図巻」、夏目漱石の実篤宛書簡や「禅堂風景」(淡彩画)などもあって、みどころがあった。
見る 読む 歩く | 2021.02.26 Fri 10:26
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