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悼む人(下)(天童荒太)

JUGEMテーマ:日本文学  上巻の感想に書いた3人がどうなったか書くのは完全なネタバレになるので遠慮しておくとして、下巻で特に印象的だったのは主人公の母親の闘病の様子。末期がん患者の衰弱していく感覚が細かく描かれているが、そんなところまで作者が経験しているわけないし、一体、どういう取材をもとに想像力を広げたのか、とても気になった。その一連の描写だけでも読む価値がある小説。亡くなってしまう(あっ、ネタバレだ!)母親も含め、登場人物たちそれぞれにその後の人生があることを読者に意識させな...

本、読みました。 | 2020.05.10 Sun 09:50

悼む人(上)(天童荒太)

JUGEMテーマ:日本文学  事故などで亡くなった人が死亡した場所を回りそれぞれの死を「悼む」生活を続けている主人公。取材の過程で主人公の存在を知った雑誌記者、主人公の母親、そして自分が殺した夫を悼む主人公の姿を見たことから行動を共にすることになった女性という、3人の視点で物語が進む。雑誌記者が主人公の生き方に納得することはあるのか、主人公の母親はガンで亡くなる前に息子と会うことができるのか、夫殺しの女性が最後に夫から伝えられた言葉は何だったのか、そんな謎を残しながら物語は下巻へ。こ...

本、読みました。 | 2020.05.10 Sun 09:49

恋歌(朝井まかて)

JUGEMテーマ:日本文学  歌人の三宅花圃が何気に手にした師中島歌子の手記から舞台は幕末へ。天狗党の動きを背景に一人の女性が動乱の水戸で生き抜いた姿を描いた話は最後にまた元の時代へ戻ってくる。最後のキーとなる人物の正体は、明かされる前に消去法であの人物だなと察しはついたが、それでもその着地の仕方は見事。清六を始め脇を固める登場人物の描き方が上手いし、文章も良い。「貫目のある」などという表現、他では見かけないよ。今まで私が読んだ直木賞作品の中ではナンバーワンだと思う。正直、期待して読...

本、読みました。 | 2020.05.10 Sun 09:45

人生劇場 青春篇(尾?士郎)

JUGEMテーマ:日本文学  青春篇はそれほど面白くないと聞いた覚えがあるんだけど、そんなことは全然なかった。続きが読みたくなったわ。その後について映画では見たんだけど、原作でどう描かれているのか知りたくなった。ユーモアを感じる文章。ちょうど真ん中あたりの章替わりのところに「幕間二十分 ― 読者諸君ハコノ休憩時間ヲ利用シテ食堂ニオハイリ下サイ」とあるのなど笑うしかない。こういうゆったりした小説、久しぶりに読んだような気がする。これ、続編というかこの後の各篇がなかなか手に入らないようなの...

本、読みました。 | 2020.05.09 Sat 16:08

青の時代(三島由紀夫)

JUGEMテーマ:日本文学  実際の事件をモデルにした作品。文章が硬く、ゴツゴツした印象。昔はこういうのを純文学だと思っていたんだなぁ。先日読んだ「宴のあと」は随分読みやすく感じたが、あれはこの本から10年後に書かれた作品だったからか。高校時代に読んだ「仮面の告白」や「金閣寺」はどちらに近い文章だっただろう? 純文学という印象が残っているから本作に近かったかもしれない。あの2作も、今だと純文学どころかただの硬く読みにくい文章だとしか思わないだろうが…。それでも小説として評価される...

本、読みました。 | 2020.05.09 Sat 12:29

宴のあと(三島由紀夫)

JUGEMテーマ:日本文学  実話をもとに構図が描かれているせいか、いろいろな意味で読みやすい。もっといえば、三島由紀夫ってこんな陳腐な小説を書いていたのか、というのが正直な感想。印象的だったのは主人公の「墓」に対する思い。作品の表面で繰り広げられる政治的モチーフの応酬の中にあって、この「墓」の存在はそこだけ別の光が当たっているように感じた。あとは最後の山崎の手紙。著者のメッセージはそこに込められているのだろうが、それを読み解くのは決して難しくない。一度お読みになってみては…と...

本、読みました。 | 2020.05.09 Sat 12:28

花まんま(朱川湊人)

JUGEMテーマ:日本文学  短編集。どれも明示されていないが懐かしい昭和の風景。空気の匂いまで伝わってくるような文章。巻頭の「トカピの夜」と巻末の「凍蝶」は差別が背景にありその描写が切ない。表題作の「花まんま」は生まれ変わりの話。その意味でSFだが、その有り得なさを不自然に感じさせずに物語が進む。読後「あってもいいよね、こういうこと」という感想。イカン、少し疲れているかも。他に3編収録。(2019.11.26読書メーターにUP)   にほんブログ村

本、読みました。 | 2020.05.08 Fri 23:00

ホテルローヤル(桜木紫乃)

JUGEMテーマ:日本文学  表題のラブホテルに関わりのある人たちをそれぞれ主人公にした短編集。現在から過去という実際とは逆の時間軸で物語が並べられている。そのため、登場人物のその後を既知しながら読むことになるが、冒頭作の「シャッターチャンス」だけはその後がわからないため、二人のこの先が不透明だった。もっともこれは私の読解力不足かもしれない。個人的にベストだったのは「星を見ていた」。切ない、痛いし切ない。そう感じるのは現実にありそうな話だからなのかな。(2019.11.7読書メーターにUP) ...

本、読みました。 | 2020.05.08 Fri 21:41

対岸の彼女(角田光代)

JUGEMテーマ:日本文学  著者の直木賞受賞作。痛い。心に沁みる。青春小説であり中年小説。事実、現在と主人公と関わりの深い人物の高校時代が交互に描かれる。主人公は女性だが、本作のテーマは性別を選ばない。出会い、友情、そして別れ、どれも切ない。年を重ねることの意味を見つけることで、主人公は長い間自分を覆っていた殻から抜け出すことができたが、第三の人物(ナナコ)は何をしているのか。それを明らかにしない理由も示されているが気にはなる。結局、小夜子、葵、ナナコとも同じだし、そこが切ない。(...

本、読みました。 | 2020.05.08 Fri 21:35

空中ブランコ(奥田英朗)

JUGEMテーマ:日本文学  直木賞を受賞した程度の知識しかなくて読み始めたので、2つめの作品の4ページ目で、これは傍若無人な神経科医を狂言回しに置いた連作集だと気付いた。毎回、彼の所に診察の訪れる患者が主人公。いずれも原因不明の症状に困り果てての来院だが、それらの患者を神経科医はビタミン注射と真意不明の奇妙な対応で完治させてしまう。各話とも最後は清々しいが、特に、色気たっぷりだが無愛想な看護婦が最後に感情を見せるシーンは最終話は微笑ましい。(2019.9.26読書メーターにUP)   に...

本、読みました。 | 2020.05.08 Fri 21:25

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