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想い出す世界・忘れる世界 この世界の可視的な成り立ちを根底からひっくり返すことも、定型短詩は得意である。短さのゆえに、読み手は仮構された世界の奥ゆきをいかようにもはるばると想い描くことができる。異世界のほんの欠片を提示されるだけで、私たちは深い呼吸を取り戻すことができる。「もしも」が「ほんとうは」へと壮大に膨らむ。 月の夜の柱よ咲きたいならどうぞ 池田澄子 月の夜の柱の望みを肉感的に感じ取り、応答する作者の口ぶりが微笑ましく躍動的だ。 ...
星辰 Sei-shin | 2018.07.16 Mon 15:23
〈けもの〉の匂い 〈けもの〉に喩える営みによって解放されるものがある。 私たち、あるいは私たちの内なるなにものかを、解き放つための十七音、または三十一音の潔さ。 大いなる鹿のかたちの時間かな 正木ゆう子 梟(ふくろう)や森の寝息の漏るるごと 無田真理子 早春の馬はしり過ぎ火の匂い 穴井太 狼(おおかみ)のごとく消えにし昔かな 赤尾兜子 こめかみは鱗(うろこ)のなごり稲光 秋月玄  ...
星辰 Sei-shin | 2018.06.30 Sat 15:28
隠し持つ欲望 無意識を表現してこその文学。 俳句や短歌といった定型短詩において、無意識に隠されているものはどれほどの振幅で表現され得るだろうか。 致死量の遊びせんとや犬ふぐり 三木冬子 肉体やとりとめもなく青葉して 鳴戸奈菜 能面のくだけて月の港かな 黒田杏子 馬を洗はば馬のたましひ冱(さ)ゆるまで人戀(こ)はば人あやむるこころ 塚本邦雄 「致死量の遊びせんとや」は、もちろん『梁塵秘抄』の「遊び...
星辰 Sei-shin | 2018.05.28 Mon 21:08
〈少年〉の居場所 学生たちの作品についてはほぼ語りつくした感がある。 彼らの提出してくれた作品を論じることが授業の中心になった分、じっくり鑑賞するつもりであった近現代の作品をそれほど論じられず、残念な想いもないではなかった。ここでは、準備しておいた作品群からいくらかなりともピックアップして、〈現在〉に通じる〈生き難さ〉の質感について、それを超えようとする表現営為について、今しばらく語ってみたい。 少年のかくれ莨(たばこ)よ春の雨 中村汀女 この家...
星辰 Sei-shin | 2018.04.29 Sun 12:52
〈更新〉への想い? 己れの無意識を浸す不条理感を超えてその〈生〉を更新したいという想い、更新すべきだという想いが、学生たちの作品には〈生き難さ〉の痛みとともに十字架のように貼りついている。 誰かの人形 N・M たくさん辛いことが重なった 僕は必死に生きようとした たくさんの人を傷つけた 私は自分のために「愉しいこと」だと錯覚した たくさんの努力が認めてもらえなかった 俺は結局何にもできなかった 誰かに愛してもらいた...
星辰 Sei-shin | 2018.01.27 Sat 14:28
6 宮崎駿が、大人の恋愛感情の〈純粋さ〉を、子供の恋愛感情(彼によれば、その最も純粋な形態は「幼児期」に認められるものらしい)に還元せんとするのは感心しないけれども、私は、だからといって、幼児的なエロスの世界・感覚を、大人への成長過程の脱皮を強いられる中で「切り捨ててもかまわない」未熟な心性とみなして貶めているわけでは決してない。 人見知りしないで済む、幼児的な兄弟―姉妹的感覚ないし双子的感覚による、閉ざされた親密さの世界・絆というものは、たしかに、男女...
星辰 Sei-shin | 2017.12.25 Mon 17:28
JUGEMテーマ:日本文学 角川の高野聖を外科室欲しさに購入後、積読していて 気が乗ってきたので読んだ 「義血侠血」「夜行巡査」この辺りが凄く好みだ ちょっと読みにくい感じだったが音読にすると リズムがいい 山月記を少し前に読んで、こちらも面白かった この時代は漢学というか漢詩とかに通じていることが前提なのか さも当然のように練り込んでくるので混乱したが 途中で何となく分かってきたら面白くなってきた 西遊記にも出る悟浄の話が思っていたより面白い 鏡花の「義血侠血」の村越欣弥は何故自殺した...
Una bella giornata! | 2017.11.12 Sun 00:58
天と地? 学生たちの作品が、作者の意図を超えて、近現代史に通底する〈生き難さ〉の極北のあり方の象徴として鑑賞し得るのと同様に、明治以降の古典的とも言える詩歌作品もまた、作者の個人的な生活史の文脈から解き放たれて、〈現在〉にも通じる魂の苦闘、まなざしの挑戦として読み解くことができよう。 『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する「ATフィールド」と「人類補完計画」になぞらえるなら、学生たちの作品には、過剰な自意識(「ATフィールド」的なもの)と、「人類補完計画」的な他...
星辰 Sei-shin | 2017.10.28 Sat 10:36
2 『少年猿飛佐助』では、「夜叉姫」も「佐助」も姉の「おゆう」も、夜叉姫の手先となっている凶悪な「山賊たち」も、全ての登場人物たちは、誰一人として、個性的な〈人格〉としては描かれていない。 このアニメでは、〈人〉は、森羅万象の一存在として、あくまでも〈風景〉の一部として描かれている。主人公は〈風景〉であり、世界(コスモス)をつかさどっている〈気〉の流れなのである。 「夜叉姫」とは、生命と虚無の両義性を備えて渦巻いている、渾沌(カオス)としての本源的な〈闇...
星辰 Sei-shin | 2017.09.30 Sat 16:21
天と地? 天と地。 非日常と日常、あるいは理想と現実とも言い換えられよう。 この二元的な対立の図式は古典的だが、現在の若者たちはその両極を、どのように感受しているだろう。 ゴーストタウンに堕ちた鳥 N・M 「主」を探して飛ぶ小鳥 理想郷目指して飛び続け 休むことなく飛び続け 「主」を見つけて飛び急ぎ 「主」を映した鏡に衝突 目眩と絶望に包まれて 小鳥は孤独に堕ちてった ある日小鳥を見つけた少年が 小鳥を...
星辰 Sei-shin | 2017.08.29 Tue 11:44
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