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山本歩禅『句集 森の鹿』(私家版)より

    昭和59。 「かつらぎ」同人。 群羊のねむるはいづこ月の原 外套を脱げば胸なるクルスかな 地を蹴ればはや天のもの寒鴉 子を負へば耳に舞ひをる風車 涅槃図はひろびろと目のとどかざる 泉あり遠き神代に恋ありき 炎天に即して松のいさぎよし 学問の純粋を恋ひ落葉踏む 桜貝かざせば空の広さかな 葛湯吹きつつも渡独のこと思ふ うるはしき五月ハイネもかく詠みき かの古城葡萄黄葉の丘を統べ 胸の辺にとまる夜の雪とまるまま 雪霏々として殉教者フスの像 囀の...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.08.14 Wed 22:35

杉本雷造『句集 昨日の翳』(卯辰山文庫)より

    平成3。 「頂点」代表同人。 第3句集。 老梅を撫でれば眼窩ありにけり 手を拍(う)ちて雪が降りだす伊賀の里 仏顔のすこし見えたり凍雑巾 絵日傘をゆっくり廻す爆心地 流星のあとの暗がり水子塚 北枕してよく見える紅葉山 いちまいの経木となりて囀れり 赤ん坊の熟睡(うまい)のつづき鳥交る 秋の雨ふっと千人針が顕(た)ち のどちんこ見せては嘆く盆の家 海鼠を噛む私のなかの他人なり 十指みな耶蘇名が欲しき寒茜 垂直の影と歩いて降誕祭 倒立のイエスを...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.07.23 Tue 21:58

6/18 ギャラリー双句会

  だいぶ間が空きました。   六月は梅雨でなかなか吟行もいけないだろうということで「雨」をテーマに句を作り持ち寄るという形で句会を開きました。 しかし六月は思ったほど雨が降らず、七月になってから雨続きになってしまいました。   ◆慧   我一人静かにおりる雨音を聴く   雨の雫苔の粒子も芽吹くかな   石が映え緑が映える文月の雨   滲むる雨屹っと立つかな紀元杉   雨の中屋久杉立つよ鹿跳ねる   屋久杉に篠つく雨...

小金井句会記 | 2019.07.22 Mon 09:36

中村与謝男『句集 楽浪』(富士見書房)より

    平成17。 「幡」星辰集作家。 第一句集。 田水張り青天を田に漲らす 黒葡萄包む「山梨日日」に 義姉にときめきしことあり栗の花 体操の息揃ひたる広島忌 双六の終の二人となつてゐし 豆粒のごとく現れ耕せり 沙羅の花見つめてをれば散り難き 帰省子に立ちはだかれる大江山 朝涼のひらめきごとを走り書き 流燈を水に放ちて残れる手 白桃のやはらかく刃を受け入れし 黒きビニールそれだけの鳥威し 立冬の丹後にガラス質の雨 少年の鋭角の肘泳ぐなり 観桜の...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.07.14 Sun 23:43

畠中順一『句集 うはずみ桜』(自家版)より

    平成11年。 そばだてし耳に初音の応へけり 高層のビルが見下ろす青嵐 燈火親し充棟の書を侍らせて 着膨れしわれをポストの笑ひけり 大粒や四万十川の夏の雨 窯出づる備長炭の棒紅蓮 佐保姫も驚く数の犬ふぐり 鳥語聞き渓声を聞き坐禅草 銀杏落葉踏みて紅顔蘇る 掌をのせて少女驚く夏薊 蜩の声拾ひ聞く蝉時雨 民宿の灯に邯鄲のセレナーデ 烏瓜いのち一夜の花真白 靖国に詣る詣らぬ終戦日 老人の海を見てゐる開戦日 城主顔して見下ろせり麦の秋 蝿を追...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.07.03 Wed 22:36

尾亀清四郎『句集 八荒』(銀杏発行所)より

    平成10。 「銀杏」主宰。第6句集。 最後はヨーロッパを旅した句で占められ、私が行ったのと近い年で同じ場所に行ってもいるが、やはり海外詠は難しいと思う。同時期の知っている場所でありながらさほど心に訴えない。いわんや知らない人ならなおさらだろう。 糶終へし糶子波止去るサングラス 甚平や傘寿の手足恙なき くちびるの薄きを当てて瓢の笛 小きざみの時に高音を瓢の笛 神環り神馬無聊の脚か踏む 梅園の一歩に得たり一花の紅(こう) 初花をわが誕日の机上とす 祭ぎ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.24 Mon 22:02

安田俊子『句集 冬薔薇』(ふらんす堂)より

    1990年。 「嵯峨野」同人。 軽やかに轆轤まはりて春立ちぬ 開扉して菩薩の御目花に向く をろがめばわれも善女や御身拭 過疎となる三戸に落花惜しみなく 花筏ついと離れてゆくもあり 掌に落花こころに古き恋ありぬ 花に立ち学徒たりし日思ひをり ゆれ残るふらここに夕迫りくる 旅鞄土産の新茶匂ひけり 屈葬のごと膝いだき暑に耐ふる 漁り火と競ふ宮津の夜店の灯 退院のことには触れずメロン切る ばらの香の極まりしとき崩れけり 去来墓小さきをたづね蚊にさされ ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.19 Wed 22:21

井沢正江『句集 晩蝉』(牧羊社)

    昭和52。 「雪解」同人。 浸す手に水の刃立つる泉かな 秘仏見る障子は白刃立つるごと 火の怒りあからさまなり古暖炉 すくひつつ白魚のみな指にそふ 落花まだ一片づつの間ありけり 一片にまなじり引かれ花ふぶく 片膝の起たんとほとけ堂若葉 わが歳の人の訃昼寝起たしむる 曳く杖のすでに分身秋の暮 黄落に立ち光背をわれも負ふ 日向ぼこ起ちてにはかに四囲くらき 一行のひまどる仏書読初に 春宵のをんなの煙草食(を)すごとく 道暮るる一人静も去りしごと ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.15 Sat 22:24

荻野信子『句集 推古の音色』(本阿弥書店)より

    1990年。 「雨月」同人。 太綱を地にお木曳の休みがち 善も悪も弥陀は一如と初法話 大吉にも一戒はあり初みくじ 春寒や降ろさるるなき磔刑像 こけし一つ買ふ惜春の旅の果 礫にも寄りくる迅さ柳鮠 炉塞いで畳まさをの小半畳 非力の手合はす他なき原爆忌 廊渡り来る看護婦の聖歌隊 老ごころ知るは老のみ冬ふかし 衣更へて志さむか句の軽み 毀損仏並ぶ宝蔵梅雨ふかし 梅雨冷の肘抱き齢さびしめる 涸るるまで滝の四季詠みなほ未完 大文字の客往年の下宿生 絞り...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.10 Mon 23:16

尾亀清四郎『句集 飛天』(東京美術)より

    平成6。 「銀杏」主宰。第5句集。 追馬の勝ちし合図の鉦たたく 渓流に瓜冷ゆるころ客来る頃 春月に放つ矢をもて神楽果つ 大梁に湯気岐れたつ薬喰 堂寒し大和坐りのみ仏と 汲みて売る寒鯉槽の底ひより みづうみに出てそれつきり春の雷 新彊に蜃気楼見て旅も果 次の間に積みて嵩なき藺座布団 月の宮神馬も小舎に目覚めをり 初斧の竹一本を伐りしのみ 常濡れの道来て滝に正面す 落しある水の音なく夕月に 竜田姫追ひてこの道滝に尽く 誰の手ものがれて自在雪...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.06 Thu 22:49

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