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井沢正江『句集 晩蝉』(牧羊社)

    昭和52。 「雪解」同人。 浸す手に水の刃立つる泉かな 秘仏見る障子は白刃立つるごと 火の怒りあからさまなり古暖炉 すくひつつ白魚のみな指にそふ 落花まだ一片づつの間ありけり 一片にまなじり引かれ花ふぶく 片膝の起たんとほとけ堂若葉 わが歳の人の訃昼寝起たしむる 曳く杖のすでに分身秋の暮 黄落に立ち光背をわれも負ふ 日向ぼこ起ちてにはかに四囲くらき 一行のひまどる仏書読初に 春宵のをんなの煙草食(を)すごとく 道暮るる一人静も去りしごと ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.15 Sat 22:24

荻野信子『句集 推古の音色』(本阿弥書店)より

    1990年。 「雨月」同人。 太綱を地にお木曳の休みがち 善も悪も弥陀は一如と初法話 大吉にも一戒はあり初みくじ 春寒や降ろさるるなき磔刑像 こけし一つ買ふ惜春の旅の果 礫にも寄りくる迅さ柳鮠 炉塞いで畳まさをの小半畳 非力の手合はす他なき原爆忌 廊渡り来る看護婦の聖歌隊 老ごころ知るは老のみ冬ふかし 衣更へて志さむか句の軽み 毀損仏並ぶ宝蔵梅雨ふかし 梅雨冷の肘抱き齢さびしめる 涸るるまで滝の四季詠みなほ未完 大文字の客往年の下宿生 絞り...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.10 Mon 23:16

尾亀清四郎『句集 飛天』(東京美術)より

    平成6。 「銀杏」主宰。第5句集。 追馬の勝ちし合図の鉦たたく 渓流に瓜冷ゆるころ客来る頃 春月に放つ矢をもて神楽果つ 大梁に湯気岐れたつ薬喰 堂寒し大和坐りのみ仏と 汲みて売る寒鯉槽の底ひより みづうみに出てそれつきり春の雷 新彊に蜃気楼見て旅も果 次の間に積みて嵩なき藺座布団 月の宮神馬も小舎に目覚めをり 初斧の竹一本を伐りしのみ 常濡れの道来て滝に正面す 落しある水の音なく夕月に 竜田姫追ひてこの道滝に尽く 誰の手ものがれて自在雪...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.06 Thu 22:49

佐藤瑠璃『句集 尾白鷲』(東京美術)より

    昭和51。 秋櫻子門下。 公魚の湖はなれてはすぐ凍てぬ 傘触れて牡丹のひとつくづれけり 牧夫来て牛つどひそむ九輪草 絵硝子を影ひかり過ぐ夏の蝶 すぐ母に風邪さとらるる初電話 蘆花鏡花母の遺せし書を曝す 梟に白夜の森の暗からず うごくもの大雪渓の羊のみ 鯵刺の銜へし白魚ひかりけり 船追ひて蟹摑みゆく尾白鷲 竹伐れば高天原にひびきけり 流氷の相搏つ音や夜の港 流氷の起伏まばゆき日の出かな 魚籠ぬけし蛸ゐて海女の跪坐ながき 牧牛に宗谷の霧...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.02 Sun 21:54

大竹きみ江『句集 往くさ帰るさ』(牧羊社)より

    昭和60。 「雪解」同人。第3句集。 くさめして月にふたたび顔あげず 一塊の野火燃ゆ沼の面にも 花疲れ老の手をひくそのことに 涅槃図の隈なる蝶は吾がつれ来し 種芋を伏せて母の地うたがはず み仏を辞して日傘の道ふたたび 冷やかに観光は妃の寝所へも 闘牛に血湧かず汗の仏徒われ 初秋風十指ひろげてかよはしむ 御僧に別辞を萩に一瞥を 闇汁のとなりは仏間ゆるされよ 天よりの引く力いま凧のぼる ギプス出て五体わがもの青き踏む わくら葉や均らしてあれど爆地...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.05.27 Mon 22:21

由山滋子『句集 雪繽紛』(東京美術)

    昭和60。 「かつらぎ」同人。第一句集。 夭夭の一語を識りし夜長かな 鷽替の神事に巡査もまれけり 風花の地に触るるともなく消ぬる 一束の菫をもつて存問す 群青の深雪月夜といひつべし 我が声におうと出られし裸僧 一面にしろがね光り干鰯 登りけり風土記の丘の高ければ 男山われに対する端居かな 白き鬚もつるる花は烏瓜 露の径叡山百句志し 描きしごと黒猫をりぬ芥子の花 花伝書に対して灯火親しめり 燦々と日のとどまれる牡丹かな 炉の婆は素十先生語...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.05.20 Mon 22:06

館野翔鶴『句集 峻嶮の鷹』(河内野発行所)より

    昭和61。 「河内野」主宰。第4句集。 流さるるさだめの雛を舟に積む 入水の滝も崩御の渕も澄む 波は円重ねやまざる噴井かな 猪垣の走る縦横無尽かな 総指揮は消防署長芦を焼く 春泥につらねて敷きし歩板かな 布の水ばかり望遠鏡の滝 踊笠ふかくかむりしうらみあり 牡丹鍋つづく落人物語 振り返り見し眼するどき寒垢離女 十字架にステンドグラスより初日 洗ふ娘にまたも大根車着く 上段の羽子板売れしどよめきよ 閉山のことに出水の物語 稲雀空をおほふと...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.05.16 Thu 22:52

『浅井陽子集(自註現代俳句シリーズ12期11)』(俳人協会)より

    平成29。 「運河」「晨」同人。「鳳」主宰。 蝶が蝶追ふ感覚の縮まらず 籐椅子のヌードモデルのガウンかな 祭の子父の太腿つかみ来る 新聞を漏斗に種を収めけり 月山の仔狐跳べる良夜かな 盆梅展二階の畳ふはつけり 一樹とは強きものなり山桜 清水の舞台の下の恋の猫 木雫のかたちくづさず凍りけり 切岸にまんまるの穴鳥の恋 月明の藁屋にピアノ連弾す 榾足して匂ひかはれる春炉かな 夏の蝶ひたすらといふ高さとぶ 水見舞水が一番よろこばれ 春筍の土ぬぐは...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.05.09 Thu 20:56

前田攝子『句集 雨奇』(角川書店)より

    2018年。 「漣」主宰、「晨」同人。第3句集。 「春のまのあたり句会」で拙句が前田主宰の特選となり、賞品としていただいた。 去年今年海のきはまで星満ちて 比良晴れよ比叡晴れよと揚雲雀 尼様のひときは小柄花まつり 一抱へ馬へ抱きくる藤若葉 虫干や箱を出にくき古今集 刺強きものを離れず秋の蜂 晩秋の日溜りとなる湖心かな 寒ムや世の何かくづれてゆく気配 龍天に登り赤子に蹴る力 みづうみは真闇いちまい白鳥座 大皿の山河に余る江鮭 雑炊や亡き人に腹立てて...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.05.04 Sat 11:05

山下喜子『句集 猪垣』(東洋文化社)より

    平成13。 「橡」同人。第3句集。 さねかづら父を男として論ず 雪折れの竹又竹や直指庵 落鉄の馬曳かれくる夕ざくら 父の日の師の長眉にまみえけり 零戦も遺品のひとつ露置きて 麺麭の山割って勤労感謝の日 ふくろふや楮ふた夜を川晒し 子の家の客となりたる素足かな 雪折れの木の仏性やほととぎす 菖蒲湯や男の子すこしく買被り 翁忌や歴々としてわが師系 沈む日や円板とまる草刈機 かのナチの国より戻り原爆忌 秋立つと朝刊にのるリルケの詩 足摺や岸摺...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.04.30 Tue 21:19

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