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茨木和生『句集 椣原(しではら)』(文學の森)より

    平成19 「運河」主宰 第9句集 懸想文売の狐目忘られず 悪たれの戻りてゐたる春祭 ぼうたんの散りざま淫らとも違ふ 一歩踏み出して動かず山椒魚 板の間は晒屋根なり岩魚焼く 蝮捕前歯一本出し笑ふ 夏帯の後ろ姿も見よといふ 日の昇る前の青空初氷 人選ぶごとき目差梟は 大き死のあとに重き死年の暮 太刀佩かせたる正月の死人(しびと)かな 初観音臍のめでたき仏かな 小刻みの影が正直目高の子 楢林椚林や夏の霜 福相と思ふ眠れる半裂を 山桜紅葉拾ふ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.12.03 Sun 22:31

明石晃一『句集 鎌倉」(文學の森)より

    平成24 「白桃」同人 第1句集 散らさずに登るすべなし萩の磴 落椿その上にまた落椿 淡きとも濃きともうつし世の桜 雛飾る部屋あたためてをりしかな 父の日や飴玉に口なぐさめて 血の薄くなりたるおもひ曼珠沙華 正座せり飾りをはりし雛の前 秋冷の潮鳴りを聴く力石 大空のいちばん底の袋掛 冬満月銀杏は白き木なりけり 秋簾子が来て巻いてゆきにけり 飛花落花峠の風もさくら色 時雨来て声高となる朝の市 暗闇をほぐして辛夷ひらきけり 金亀虫押さへし指...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.11.28 Tue 21:52

10/24 葛西臨海公園吟行

      ひさしぶりの吟行です。   葩さんの海が見たいという要望で葛西臨海公園にやってきました。 今回は初参加の宗治さんもいらしたので、俳句の作り方を少し説明しました。   俳句は花鳥風詠が主流ですが、これをざっくり天地人の三要素で分けます。   天は天候、天体、雲、光、鳥など。 地は地形、風土、動植物、固形物など。 人は人工物や人為的な行為などです。     この中にさらに大小があります。大きいものばかりだと雄大ですが茫洋とした句に。 ...

小金井句会記 | 2023.11.21 Tue 09:45

第386回坐忘会 令和5年霜月句会

JUGEMテーマ:俳句    開催日:令和5年11月19日(日)  場 所:本部道場 南寮会議室  参加者:8名  投句者:7名    霞山老師の巡錫、幽谷先生と義幸さんの闘病などで少し寂しい会になりましたが、秀作が多く充実した会でした。  最高得点者は“眞澄さん”でした。    今回の兼題は「小春」「木の葉髪」「酉の市」   ------各自の高得点句を紹介します。--------   ※黒板に一茶忌とあり村役場  幽谷先生・  人ごみに紛れて一人酉の市...

座禅修行だより | 2023.11.20 Mon 17:25

遠藤正恵『句集 野遊び』(本阿弥書店)より

    2012年 「家」会員 「濃美」同人 第一句集 麦の芽や鳥のかたちの土の笛 引鴨のはばたき沼を明るうす 籐椅子に覚めて読みつぐ航海記 象嵌の太刀一つ置く夏館 廻廊の水かげろふや光悦忌 矢車のまはりつづけて村さびし 植ゑられて早苗たちまちなびきたる 地虫鳴く千の仏に燭ひくく 錆こぼしつつ花冷の船箪笥 敷茣蓙の波うつてゐる遠はたた 一睡の覚めて雪降る音の中 鷹鳩と化し帆船は壜の中 晩涼の合せ鏡の向かう側 別々の黄落を来し楽器函 はらからのとほき...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.11.19 Sun 21:06

松山好江『句集 遺跡野』(文學の森)より

  平成30 「宇宙」同人 第一句集 女生徒の胸の弾けし更衣 朴落葉ごつこの皿に適ひたる 雷神のエールに応ふエースかな 夫婦滝落ちて烈しく一になる 機内にてストレッチせるアロハシャツ 一族の引きたるあとの端居かな 堆きもの処分して秋高し 新型の風邪にあふるる小児科医 青くなるほど薫風を浴びにけり 登山靴一歩たりとも油断なし 丑三つが活動の時あぶらむし 日向ぼこ無用の用の媼かな 生身魂日本の足で確と立つ 篤農の腹心として案山子立つ   JUGEMテーマ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.11.12 Sun 20:23

山代あづさ『句集 桜襲』(狩俳句会)より

    平成10 「狩」同人 第2句集 犬撫でて落第の子の後向き 人魂の巧みな動き夏芝居 出まかせの名で呼んでやる枯野犬 肩凝らぬだけが取り柄の古ジャケツ 寒紅や嘘とまことの使ひ分け 雪女泣くに男の胸いらぬ 葬送ののち梅林へ歩を移す 切り返す言葉おさへてレース編む 落ちてなほ夢見ごこちの合歓の花 送り火の消えてひとりに戻りけり 露の世のつゆの縁の浅からず 笑ひ皺深くなりたり初鏡 喪の家と背中合せの冬籠り 蹠より冷えて案内の僧に蹤く うららかや夢食...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.11.05 Sun 23:06

国吉玲子『句集 秋燕』(ふらんす堂)より

    2010年。 第一句集 「泉」会員 蓮根掘り雲を残して帰りけり 白萩に触れたる傘を畳みけり 残寒の干潟ぶつぶつしてゐたり 駆け抜ける毛虫の落ちて来ぬうちに 瓢箪の括れはじめし雫かな 潦跳んできのこの国に入る 山羊の腹みな大きくて冬日和 くれなゐの一筋走る冬の斧 小鳥来る置きつぱなしの乗馬帽 ひと弾みして新藁となりにけり 押し合つて口の裂けたる燕の子 括られて尻美しき冬菜かな 鳶の胸鷗の胸や寒日和 鎌倉の松の匂へる弓始 味噌玉の湯気をさ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.10.30 Mon 22:08

第385回坐忘会 令和5年神無月句会

JUGEMテーマ:俳句    開催日:令和5年10月23日(日)  場 所:本部道場 南寮会議室  参加者:8名  投句者:8名    突然、朝夕寒くなり、寒暖の差にも戸惑うこの頃、この日も活発な俳句談義が交わされました。  最高得点者は “のりこさん”でした。    今回の兼題は「秋思」「月」「運動会」「松茸(飯)」   ------各自の高得点句を紹介します。--------   ※蓑虫は吹かれ上手や池の上  幽谷先生・  松茸に手を出す妻の袖を引く ...

座禅修行だより | 2023.10.26 Thu 13:06

加藤楸邨『句集 怒涛』(花神社)より

    昭和61 「寒雷」主宰 第十句集 たんぽぽのぽぽと絮毛のたちにけり 斧あげて風におどろくいぼむしり 咳をしてをれば猫きて嚏せり 躓きて雁の別れのもう見えぬ 残雪に手を拭ひけり与謝峠 月さして青柚子は葉とわかれけり 芭蕉忌を一日おくれてしぐれけり 透きとほる白魚の胎火事の中 蜂に螫されし男の顔の置きどころ 蝉の音の棒の折れたるごとく止む 落日と柿の柿いろばかりかな すれちがふ子につけられぬ草虱 陽炎が消え団子屋のそこにをり あらがへる背骨一...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.10.23 Mon 22:15

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