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橋場千舟『句集 視線」(ふらんす堂)より

    2008年 「半夜」同人 「船団の会」会員 第3句集 名月をオペラグラスで眺めけり ものの芽がまだ何色といふでなく ひとつ傘さす冷ゆること言ひ合うて 河豚雑炊ふぐの口して吹いてをり まばたきをして白梅に近づきぬ 磯巾着夢の中まで闖入す 飛花落花見し夜の深き眠りかな 逢うてすぐさくら見に行きたいと言ふ 買うて来て冬瓜二日目もごろり 寒風に顔を小さくして帰る 血の通ふほどに御室のさくら満つ 鮟鱇や言へば言ひ返されさうな 芦の穂の高さに物を考へる ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.09.11 Mon 12:53

杉本征之進『句集山椒魚』(角川書店)より

    2018年 「運河」同人 第1句集 はんざきの眼なかなか見つからず 熟考の末の一歩か山椒魚 はんざきのゐぬかと岩に目を凝らす 挨拶の泡が二つ山椒魚 首出して見ても水槽山椒魚 手をうつて見てもはんざき応へざる 二三回会へばともだち山椒魚 頼りなき四肢を頼れる山椒魚 山椒魚動きて子ども喜ばす 山椒魚にも動かねばならぬ刻 一跨ぎ出来る流れに山椒魚 初旅も山椒魚のゐるところ   JUGEMテーマ:俳句

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.09.06 Wed 19:46

山中弘通『句集 寶船』(角川書店)より

    平成18 「運河」編集同人 第3句集 春の鯉かたまつてゐてよく動く 観梅に来て観桜の段取りを 秋興や渚にひとりゐることも 猪狩の片眼つぶれし紀州犬 真言をとなへて点火虫送 赤き月出て来し祇園祭かな 二つ折手拭被す菌籠 豊玉姫一人静となられしか 板の間の板上げて出す蝮酒 斑鳩町字法隆寺芋茎干す 尾根筋のはつきり見ゆる鵙日和 冬紅葉ことに没日の差すときの 初氷にて厚氷御杖村   JUGEMテーマ:俳句

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.09.04 Mon 22:08

大石悦子『句集 百花』(角川書店)より

    平成9 「鶴」同人 第3句集 祭馬涼しき木蔭もらひけり 海抜を訊きて涼しくなりにけり 葛切に家居の腹の出来にけり 訊かれたることに答へず真菰刈 眼の力曼殊沙華にて使ひきる 枯山が日ごと枯山らしく見ゆ きのふ恋ひけふ憂かりける花茨 袖口をひろらに安居したまへり 伊勢道の拳のやうな蓬餅 病院のかへりをあそび獺祭忌 ポケットに木の実ポシェットにも木の実 蹤いてくる鹿に一瞥春日巫女 角立てて待春の加賀金平糖 うまさうに炒つてあるなり鬼の豆 涅槃...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.08.30 Wed 21:06

相内をさむ『句集 黒潮の沖』(文學の森)より

    平成31 「きたごち」同人 第1句集 夏草の踏み分けらるる芭蕉句碑 黄八丈織る工房の古簾 若杉の秀の揃ひたる冬景色 欄間拭く巫女の二の腕年用意 ハンカチの木の花拾ふ朝の園 国境を跨ぎ虹張る大瀑布 鰯雲みすゞ生家の空覆ふ 紅差せるマリア観音五月闇 麦秋の鉄路の果ての大落暉 悪役も主役も香る菊人形 茶の花の散り初めて知る花の頃 氷柱もてつららを払ふ納屋の軒 たまに鳴る島の土産の貝風鈴 振り返る牛追ひ立てて牧閉ざす 園長の和紙の法被の鬼やらひ ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.08.29 Tue 19:40

苑実耶『句集 大河』(角川書店)より

    平成23 「空」同人 第1句集 真剣のきつ先に立つ博多独楽 左義長の振舞ひ酒に煤浮けり 次の世も隣に居たし螢狩 我が影も灼けて円形闘技場 日傘くるくるいつまでも待つつもり 人妻であるを忘るる花野かな 石仏につづく石段椿落つ 病む父の窓に桜の押し寄せし 汗の子を身ぐるみ剥がす勝手口 夫の声聞いてはをらぬ茄子を焼く うねりては声凄じき稲雀 案山子のみ傾いてをり刈り了へて 百の燭大きく揺れて御開帳 灯の点るころに家路や日焼の子 餅つきに一人暮...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.08.23 Wed 22:52

矢島久栄『句集 太白』(邑書林)より

    1994年 「狩」同人 第2句集 だんだんに真顔草虱を払ひ 手入れせし松をくぐりて庭師辞す 天上に雨もりの染み里神楽 顎紐のあとくつきりと一年生 植ゑ替へて早や優劣の茄子の苗 衣更へて海へかたむく心かな 咲くことをやめてすなはち散蓮華 みちのくの日がにこにこと芋煮会 くるぶしを風の過ぎゆく魂まつり 太陽を飴色にして干大根 かたまつて日をこぼさじと犬ふぐり 又の名の投込寺のさねかづら 牡蠣鍋や壁に実物大の舵 母の息足して円かな紙風船 風音をマ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.08.19 Sat 21:06

山崎秋穂『句集 満目』(牧羊社)より

    平成3。 「南風」同人 第3句集 空蝉にのこるひかりの茶色の眼 こゑのあと音の澄みゐて松手入 そのまはりをぐらく涅槃し給へり 警策のいろなき風にひびかせぬ 落葉駆ける地上一寸夕あかり しはぶきのひとつ此岸に初法会 漆黒の土間に降り込む春の雪 雛の灯眠気大事にねむりけり 噴水のいきなり高し原爆忌 行くほどに霧濃くほとけ立ち給ふ ばらばらに整ふ礎石秋の風 瀬田川は大湖をしぼり雁わたる そのいろの土となりつつ落葉みち 絶壁に水仙根づく怒涛かな ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.08.14 Mon 20:18

第383回坐忘会 令和5年葉月句会

JUGEMテーマ:俳句    開催日:令和5年8月6日(日)  場 所:本部道場 南寮会議室  参加者:10名  投句者:6名    原爆忌の日の句会。その日を彷彿とさせる灼熱の日であった。  暑さにも負けず、117句もの投句があり、活発な句評が交わされた。  幽谷先生は自宅療養で病状は軽くないとのことながら、沢山の秀句を送って頂いた。    最高得点者は“眞澄さん”と“桃雲”でした。    今回の兼題は「花火」「墓参り」「蜩」   ...

座禅修行だより | 2023.08.09 Wed 08:33

山口速『句集 道しるべ』(富士見書房)より

    平成11 「狩」同人 第3句集 朴落葉土になじめぬままの反り 飾り海老龍に劣らぬ髭を張り たかんなに近づく鍬を後ろ手に 遠く来て茅の輪一歩でくぐり抜け 神殿に脱ぎ捨てられて蛇の衣 生きるとは残さるること鳥雲に あかがねの拳ゆるめて種を蒔く ひぐらしのこゑもちりばめ光堂 白鳥を載せみづうみのたなごころ もの言はぬひと日が欲しや龍の玉 冴え返る魚拓には目がひとつのみ 硬さうに張られ遠野の代田水 暑気中り寝ころびて聴くレクイエム 名前などどうで...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.08.06 Sun 21:30

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