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JUGEMテーマ:戯言 カードをシャッフルするなら風切り羽に気をつけて。そんな誰かの声が微かに聞こえる。でもそれは風の音だったかもしれない。突然北に向きを変えた風の、その翻る音だったかも。あるいは波の音だったかもしれない。遠くの海域に落下した人工衛星が起こした引き波が、波打ち際の子猫を掠っていく音だったかも。それとも雷の音か。あるはずのない祭りの最後に、儀式によって無理矢理召喚された雷鳴だったかもしれない。そのどれであったとしても、私は従うしかない。その声を、その響きを疑ってしま...
pale asymmetry | 2024.09.12 Thu 21:20
JUGEMテーマ:戯言 そこら中にばら撒かれている道しるべは全て出鱈目だ。蹴飛ばしたその瞬間に我楽多に成り上がったとしても手遅れだ。「でも道しるべって甘いものだから、出鱈目くらいがちょうど良いのよ」なんて君は嘯く。ラクーンの着ぐるみを纏って安楽椅子で揺れている。その波長は眠気を砕く。過剰な覚醒が僕を我楽多に錆び付かせる。「どうしてそんな格好なんだい?」って君に聞いたら、「魔が差したというところかしら」と笑う。その笑顔は何から何まで偽物だ。それでも偽善は欠片もない。だから僕は安心し...
pale asymmetry | 2024.09.11 Wed 20:03
JUGEMテーマ:戯言 遠くで響く銃声には、誰も反応しない。すぐ近くの爆音の方に、脅かされているから。空気は温いのに、雨は冷たい。それは鉱石のように硬く地面を叩く。巨大な船は水面から少しだけ浮き上がり、有毒のバグをばら撒きながら航行する。それを航行と表現していいのか私には今一つ自信が持てなかったけれど、ただ誰もが受け入れているようだったので、その船は乗客を満載して出発してしまった。残していった無数のコンテナには、有害な廃棄物が詰め込まれているから、私は防護服のシールを再確認してロ...
pale asymmetry | 2024.09.09 Mon 18:27
JUGEMテーマ:戯言 海に沈む月は、硬く口を閉ざしている。語るべき事象は無限にあるはずなのに、それは砕かれ煌めく黄金となって水面に帯を描く。私たちは国道からそれを眺めて、何度か溜息を吐く。あなたは温かくそれを吐き、私は冷たくそれを吐く。黒い犬が私たちの間で行儀良く座り、私とあなたを交互に見つめながら、時折低く唸った。それはこの中途半端な夜気が気に入らないのだろうと私は解釈した。それであなたにそう言うと、あなたはゆるやかに首を振る。 「白露だよ」 あなたは独り言のようにその...
pale asymmetry | 2024.09.07 Sat 20:34
JUGEMテーマ:戯言 闇の中で勾玉が巴に戯れあっているから、行かなければいけないんだ。あなたはそんなことを言って、私を壁に突き飛ばした。私は背中を強くうって、一瞬呼吸が止まり、世界がぐらついたのを感じた。その後であなたを真っ直ぐに見つめ、勾玉が戯れている闇は、たぶん純粋な闇なのだろうと思ったりした。純粋な闇はとても甘い。私はそれを知っている。その闇をあなたに教えたのは私だから、あなたがその闇にすっかり捕らわれたのだとしたら、それは私のせいだ。床にしゃがみ込みあなたを見上げる私を...
pale asymmetry | 2024.09.06 Fri 19:17
JUGEMテーマ:戯言 落下するコインはフロアで弾けることなくそのまま沈んで行ってしまった。たぶん地球の裏側まで行ってしまったのだろう。あるいはその裏側の地面を突き抜けて、宇宙にまで飛び出してしまったかもしれない。月面まで到達しただろうか。それともラグランジュで微睡んだりするだろうか。いやいやもっともっと放浪して、銀河の中心のブラックホールに吸い込まれたかも。そしてもう僕を振り返ることはない。コインは僕を置き去りにして行ってしまったのだ。僕もコインを追いかけたりしない。だって今日...
pale asymmetry | 2024.09.05 Thu 17:35
JUGEMテーマ:戯言 ゆっくりと石を穿つ雨垂れのような眠気に纏わり付かれる。その眠気が嫌いじゃないから、私からも包まっていく。ソファーの背もたれにかけっぱなしのモッズコートを裏返して床に敷く。イチゴジャムのような重い赤のギンガムチェック。その裏地がさらに私の眠気を純粋な事象へと洗練させる。つまりこの眠気は太古の時代から私の螺旋に織り込まれているもので、だから私は逆らう必要などないのだ。けれど私は眠気として愛でているわけだから、眠ってしまうわけにはいけない。眠ってしまえばそれは眠...
pale asymmetry | 2024.09.03 Tue 19:04
JUGEMテーマ:戯言 丸裸になれば涼しくなるだろう。そんな風に笑う管理人は綺麗なコードを忘れている。そして彼はそれを手にすることは永遠にないのだ。狩り取られた毛皮が重要な意味を持っていると考える限り、彼が世界を踏みならすことは出来ない。ズブズブと沈むばかりで、やがては溺れてしまうだろう。それが彼にはお似合いなのかもしれないが、見送る私は何とも言えない哀しさを抱えることになってしまう。その状態が不快かと言えば一概にそうとも言えない。そうとも言えないところにさらに厄介さを感じてしま...
pale asymmetry | 2024.09.02 Mon 19:01
JUGEMテーマ:戯言 小さな庭で、道に迷う。もちろん本当に迷ったわけではない。道に迷ったような心許ない気持ちになったということ。何故だろう。陽光ははっきりとした熱を振らせていたし、鋭すぎる光の束が庭の隅々まで光らせている。だから庭の細部まで顕わになっている。そのうえ風がなかったから、庭の何処も揺れ動いていない。揺らぎがないから、庭は完全に固定されているようだ。何処にも、私が心もない気持ちになる要素が見当たらない。あるとしたら、庭が過剰な凪を纏っているというくらいだろうか。でもそ...
pale asymmetry | 2024.09.01 Sun 21:19
JUGEMテーマ:戯言 失われた断片たちは、全て泥の中に沈んでいる。煌めいていたとしても、燃え上がっていたとしても、それを捉えることは出来ない。頭を垂れて祈るべきなのか。膝をつき、目を閉じ、呼吸を止めて願うべきなのか。そんなことに意味はない。意味なんて全くない。私は飛び込むべきなのだろう。泥の闇に自ら入り込み、闇雲に四肢を振り回して、断片たちを探すべきなのか。喉に、肺に、泥が流れ込んでも、血流の全てに闇の泥が織り込まれても、私は泥の奥底に潜降すべきなのか。べき、べき、べき…...
pale asymmetry | 2024.08.31 Sat 20:35
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