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JUGEMテーマ:戯言 「真っ逆さまに墜落すれば、全ての糸を断ち切れるかもしれないよ」 ピグミーマーモセットの幻影が私に囁く。それはとても魅力的な助言だ。けれどそれは間違いなく最悪な助言だ。私はそう思うから、そう思える礼節をまだ持っているから、墜落したりしない。螺旋階段の渦の中心に見える遠い地面が、どんなに甘くふかふかに思えても。 「でも君は操り人形で過ごすのは嫌なのだろう?」 ピグミーマーモセットの幻影はくるくるとトンボを切りながら宙を舞う。トランキライザーが全然効いて...
pale asymmetry | 2024.08.29 Thu 19:20
JUGEMテーマ:戯言 通風口からの排気は冷たくて心地良い。その気流は汚れているのかもしれないけれど、それでも心地良い。そう感じるのは、その気流にノイズがなかったからだ。世界は過剰なノイズに溢れている。それは刺々しいわけではないけれど、私の皮膚に執拗に引っかかり、私をノイズの内部に引き込もうとする。冷たい排気にはそのノイズが織り込まれていなかったから心地良いのだ。そしてその場所に一人で居ると、とても贅沢な時間を纏っていると思える。だからさらに心地良くなれる。私は沈む。私だけの想い...
pale asymmetry | 2024.08.27 Tue 21:11
JUGEMテーマ:戯言 白地に黒縁模様の子猫は、その老人の足下で甘えるように頬を擦り寄せていた。白黒の縞模様の尻尾が、何かを掴むように丸まっている。透明な何かを実際に掴んでいるのかもしれない。形のない質量もない色彩もない何かを。それはこの宇宙のものではなくて、並行世界の宝物なのだろう。だからこの子猫は並行世界からやって来たのかもしれない。そう思えた。 「私の妻なんです」 老人が足下の子猫を指差して告げる。黒いスーツ姿の老人はネクタイを着けてはいなかったけれど、それが喪服であ...
pale asymmetry | 2024.08.26 Mon 18:26
JUGEMテーマ:戯言 何も失っていないけれど、何も得ていない。そんな暮らしが続く。何の不満もないけれど、満足もしていない。それを日常と呼ぶんだよとあなたが笑う。私は笑わない。螺旋の先端を千切り取り、宙に投げて土に刺す。その螺旋は地面から水を得て天に向かって育つかもしれない。でも鋭すぎる陽光に焼かれて枯れるかもしれない。きっと根付くさとあなたは言う。きっと枯れるだろうと私は思う。そんな私たちは肩を寄せ合い、エアコンディショナーの制御下にある部屋でショートフィルムを見つめている。視...
pale asymmetry | 2024.08.24 Sat 20:25
JUGEMテーマ:戯言 港の端に車を止めて、月の出を待つ。日が沈んだばかりだから、月が水面から浮上するのはだいぶ先だ。それでもあなたはフロントガラスの向こうに目を凝らしている。薄闇に消されそうになりながら、小さな島がぼんやりと浮かんでいる。私はその島を眺めていた。その島の海岸線で細かく光る赤い煌めきを。それは瞳だ。生命体の瞳。きっと獣だろう。いくつもの煌めきが私を見つめている。そこじゃないと言われているように思えた。「お前の居るべき場所はそこではない。こちら側だろう?」と。ところ...
pale asymmetry | 2024.08.23 Fri 20:37
JUGEMテーマ:戯言 雨は不確かに降っていた。迷い惑い降っているようだ。何者かに迷わされているわけではなく、何者かに惑わされているわけでもない。自身の行く道を自身が探ることに迷い惑っているようだった。ああ、私と同じだなと思った。あるいは、私が身勝手に雨に投影しているだけか。私の迷いと私の惑いを。それでも私は雨との重なりを感じずにはいられない。その重なりが不確かであったとしても、形も色も有していなかったとしても、私がそれを感じるのならばそれはたゆたっているのだ。やわい雨だった。だ...
pale asymmetry | 2024.08.20 Tue 19:53
JUGEMテーマ:戯言 得体の知れない不快感に襲われている自分に気づく。原因は解らないし、いつそれに襲われたのかも解らない。いつの間にか、そんな状態に陥っていたのだ。記憶を辿ってもその不快感の出所には行き着けないし、思い返せば思い返すほど、そんなものが私に付け入るような出来事はないはずだった。けれど不快感は確かに私の胸の奥で蠢いている。鋭くはない。鈍重に私の心臓を刺激するような感じだ。強く悩まされるという感じではなく、ふとした拍子にその不快感に気を取られるような感じ。私はこの感覚...
pale asymmetry | 2024.08.18 Sun 18:41
JUGEMテーマ:戯言 空は橙色で、何処までも砂漠が広がっている。そういう世界では、鳳凰の尾羽を食さなければいけないのだという。けれど私たちが食したのは人魚の肉だけなので、私たちはこの世界に相応しくないのかもしれない。でも確かめようがない。誰かに問い掛けるわけにもいかないから。というのも、広大な砂漠には視界の何処にも人影がなかったから。人影だけではなく魑魅魍魎の影も、精霊聖獣の影も、人工生命体やロボットの類いも見当たらなかったから。つまりもっかのところこの世界には私たちしかいない...
pale asymmetry | 2024.08.17 Sat 21:01
JUGEMテーマ:戯言 碧かった炎は、すっかり翠色に変わってしまった。もちろん熱を失ってはいない。けれど空気に奔放な紋様を転写することはもはや出来ない。むしろ周囲の空気に取り囲まれて窮屈に控えめに踊っている。その紋様はもう何も語っていない。そこから姿形や声や匂いや、もちろん想いも読み取ることは出来ない。もうその炎を鎮めなければいけないのだ。炎はあるべき世界に戻る。消えてしまうわけではない。それをよく理解していても、この世界から見えなくなるのであれば、あるべき世界なんて私にとって何...
pale asymmetry | 2024.08.16 Fri 20:36
JUGEMテーマ:戯言 土を食べるように昼食を口にする。不快でしかない。暑さのせいではない。くだらない日常のせいでもない。くだらないことは受け入れて暮らしているから、そんなことで不快にはならない。食べるという振る舞い自体が、不快なのだ。枯れてしまいたいという欲求が、萎れてしまいたいという欲求が、訳もなく溢れてくる。身体がスムーズに踊るように動くからだ。それに反して軋む心。かけ離れた二つの事象が私を異界へと誘う。そんなものはないのに。そんなものはありはしないということを受け入れてい...
pale asymmetry | 2024.08.14 Wed 20:13
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