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JUGEMテーマ:戯言 「あなたのドアノブはどこにありますか?」 グレイの長い髪を羊のように纏めた老婦人が、私の肩を激しく揺さぶりながら問い掛けている。 「私のドアノブはもうないのです。あなたのドアノブも、失われてしまったのではありませんか?」 それはもう叫ぶような口調で、今にも泣き出しそうな表情をしている。だから私はドアノブというものが、とても大切なのだろうと感じた。この世界になくてはならないもので、失われてはいけないものなのだと感じた。 「早く、早く、あなたのドアノ...
pale asymmetry | 2021.11.08 Mon 21:00
JUGEMテーマ:戯言 高度四百キロメートルから、落下するはずのない雫が墜ちてくる。それが私のこめかみを打ち抜き、瞬時に全身に染み渡る。そういう痛みを抱えて、私は私を抱きしめる。痛みが私になり、私が痛みになる。そいう雫が宇宙からもたらされる。正確には宇宙ではないのかもしれないけれど。 高度四百キロメートルの一点で、雫は生まれるわけではない。それはこの世界が誕生したその瞬間から、いやこの世界が誕生する一瞬前から、そこにあったんだ。そうに違いないんだ。あり得ないとしても、私がそう...
pale asymmetry | 2021.11.03 Wed 21:22
JUGEMテーマ:戯言 意味のある言葉の連なりが、意味のある文章を生み出すとは限らない。言語は地図のようにいかないので、見たままを正確に写し取ることは不可能だ。ましてや感じたままを写し取ることなど出来るはずもない。特に時制については全く対応出来ない。今を言語化することが出来ないのだ。常に過去の過ぎ去った事象を追いかけて記録しているだけで、まさにこの瞬間に起きている反応を言い表すことが出来ないから、だからカンバセーションは難しいのかもしれない。 もっとも、共通の言語を操っている...
pale asymmetry | 2021.11.02 Tue 22:02
JUGEMテーマ:戯言 空から墜ちてきたのは、モノクロームの果実だった。それは白い果実。そして黒い果実。二つの果実が墜ちてきたわけではない。その果実はたった一つで、その色は白であり黒だったのだ。重なり合う白と黒。それは過去と未来。善と悪。昼と夜。殺戮と抱擁。そして私の理性と私の本能。 雨上がりの朝だった。風はなく、空気はゆっくりと上昇していた。だから、私の身体はしっとりと濡れていた。私はその身体を持て余していた。跳ね飛びたいような、走り出したいような、歌い叫びたいような、目を...
pale asymmetry | 2021.11.01 Mon 21:18
JUGEMテーマ:戯言 明日何もかもが終わるわけではないから、私は整えなければいけない。ジャンプの直前に、重心を移動するように。スムーズに加速するためには身体を暖機しておく必要があるだろう。まあ、私は機械ではないけれど。それに果たして加速が必要なのかどうかもはっきりとしないし。 ギシガシとあちらこちらが痛んでいるように思える。それは私に関すること、そして私に繋がる事象だけではなく、私とは全く無関係な、惑星の裏側で弾けたエフェクトに関することさえも。それがやがて私が立つこの場所...
pale asymmetry | 2021.10.31 Sun 21:01
JUGEMテーマ:戯言 髪を切る、鏡を覗き込んで。鏡の中の私は笑っていない。泣いてもいないけれど、愉しそうにも見えない。痛みに耐えているように見えたりもするし、その痛みを心地よく感じているようにも見えたりする。本当はどちらでもないし、どれでもない。どのような状態でもないし、何か特定のカテゴリーに分類したり出来ない。そういうのは無意味だ。 私は私でしかない。私でない私など存在しないのだから、どのような私であっても受け入れるしかない。 私は私の髪を切る。鏡の中の私は髪を切られ...
pale asymmetry | 2021.10.28 Thu 21:11
JUGEMテーマ:戯言 見通せない不安よりも、見通せる不安の方が怖い。そう思ってしまう心持ちが日差しを浴びている。濁りは不確かな多様性を感じさせる。遙かな昔に、自発的に対称性が破られたように。少し肌がヒリヒリと痺れるのは、紫外線のせいというより、低空を飛び回る哨戒機のせいだろう。何度も旋回しては私の空を行き来している。 私のものだと思えば、この空は私の空になる。私の上空の、極狭い範囲だけだけど。 見通せる恐怖が不必要な揺らぎを生み出し、それが素粒子の行動を鈍らせてしまう。...
pale asymmetry | 2021.10.25 Mon 20:27
JUGEMテーマ:戯言 8日間は192時間で、11520分で691200秒。ごろごろと転がり続けてもいい。ただただ眠り続けてもいい。夢を噛み砕くぐらいに深く眠り、綺麗な闇を抱きしめているのも良いだろう。もちろんそうはしない。この時間は、無駄な時間だ。無駄な時間だからこそ有意な時間だ。これは化学反応によって構築された時間で、だからケミカルに分解することは可能だけれど、そんなことをするくらいなら掃除機に吸わせた方が役に立つだろう。何の役に立つのかというと、世界を揺らがせるための螺子として。 で...
pale asymmetry | 2021.10.24 Sun 21:09
JUGEMテーマ:戯言 赤いネズミを追いかけろ。そいつの目は深い青に輝いている。それはブラックホールの地平線の輝き。目を合わしてはいけない。もちろん吸い込まれてしまうさ。そして戻ってはこれない。インフォメーションさえ残さずに消滅。お気楽で極楽なトリップを望むならそれも良いけれど。 ネズミの赤い背を追いかけろ。それは疾風のスピードで逃げていく。空間が繋がっていると思ってはいけない。そんなものは積層的な幻影なんだ。そのスピードは空間の広がりよりも速いから、時間なんて意味をなくして...
pale asymmetry | 2021.10.19 Tue 21:33
JUGEMテーマ:戯言 時々、自分の手が汚れているかどうかが気になってしまう。穢れているかどうか、と言った方が正確かもしれない。穢れていることがいけないことだとか、穢れていることに耐えられないとか、そういうことではない。それにその汚れ、穢れは目に見えるそれではない。透明なのだ。ざらついた感じがするけれど、それも実際にざらついた感触があるわけではない。そういう類いの穢れが、どうしようもなく気になってしまうのだ。 何かを握りしめれば、手は穢れてしまうものだ。何かを払いのければ、手...
pale asymmetry | 2021.10.18 Mon 21:20
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