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JUGEMテーマ:戯言 脊椎が引きちぎられるような恐れを感じた。裏側から見つめてしまったから。いや、その瞬間に立ち会ってしまったということの方が問題だったのかもしれない。呼吸が乱れそうになるのを、思考の速度を落とすことでやり過ごす。綺麗だったから、そうすることができた。恐ろしいものは大抵綺麗だ。世界はたぶんそうなっていて、だから私はまだ生きている。 表側に顔を出すと横殴りの波を喰らう。衝撃というより、感じるのは熱情だ。誰かの溜息が聞こえるような気がして耳を傾けると、それは私の...
pale asymmetry | 2023.02.10 Fri 21:45
JUGEMテーマ:戯言 小石を蹴飛ばすと私のつま先が少し痛い。当たり前のことだけど当たり前じゃない。この痛みは小石から私に注がれたものなのか、それとも私が小石に注いだものの逆流か。どちらであったとしても、私は受け入れなければいけないのだろう。つまりそれは私の外に拡がる世界と私の内側に閉じられた世界との接続を意味するのだから。 「あたしは天帝なのよ」 紫のドレスを纏った少女が言う。私を真っ直ぐに見つめて言う。黄昏時の街角で私は足を止め、膝を折って少女と視線を合わせる。 「だ...
pale asymmetry | 2023.02.09 Thu 19:55
JUGEMテーマ:戯言 いつの間にか、身体に傷跡がついている。いつ、何が原因でついたのかさっぱり解らない。まるでかまいたちにやられたかのように、体表面のあちらこちらに私の気を引こうとしているかのように、赤いラインが引かれている。 傷を撫でてみる。痛みはない。違和感も感じない。この傷跡はもうすっかり私だ。 眠れない夜に、小さなオレンジの明かりを灯し、そんな傷跡のことを考える。たぶん私はこのような傷跡と、もっと親しくなりたいと思っているのだろう。自分の気持ちの本当のところは、...
pale asymmetry | 2023.02.08 Wed 20:04
JUGEMテーマ:戯言 自分が旅の途中で途方に暮れているのだと気づき、戦慄が走る。立ち止まり、深呼吸。本当はその場に蹲り泣き叫ぶか、丸まって眠ってしまいたかったけれど、雨脚が強くなってきたので両脚に力を込めて立ち尽くしていた。前方には長く延びる道。振り返っても長く延びる道。右を向いても左を向いても斜めを見上げても道だ。そして私は道の上にいる。 やっぱり私は見失っているのだろうか。翼はこんなにも煌めいているのに。 取り敢えず傘を閉じ、地面に刺す。雨の粒は大きく、宝石のようだ...
pale asymmetry | 2023.02.06 Mon 19:51
JUGEMテーマ:戯言 日曜日は嫌い。想いの声が聞こえなくなるから。空が透きとおっていても、雨が千切れ飛んでいても、足取りは重くなるばかり。私の与り知らぬところで、世界が踊っている。誰かと楽しそうに踊っている。それに加わりたいわけではないのだけれど、その事象からかけ離れてる自分が、かけ離れているとしか思えない自分が悲しくなる。 本当はそんなことないってことを知っているよ。でも日曜日は嫌い。声の想いが届かなくなるから。風が暖かくても、雲が優雅にスキップしていても、吐き出す息が希...
pale asymmetry | 2023.02.05 Sun 20:49
JUGEMテーマ:戯言 世界の本性を暴くための証明は、私の与り知らないところで転がっているようだ。それはきっと透明なシャボン玉に記述されていて、陽光を浴びて微かな七色に染まりながらジャングルや砂漠を転がり、弾けて消えるのだろう。だから私が目にすることはない。私はジャングルにも行かないし、砂漠にも縁がないから。 シャボン玉と共に弾けた記述は、直ちに硬く折り畳まれて余剰空間に秘されてしまう。それは誰かの企みではなく、もちろん神様の気まぐれでもなく、この世界の理に過ぎない。あなたが...
pale asymmetry | 2023.02.03 Fri 18:59
JUGEMテーマ:戯言 風の流れが見えたなら、私はしくじることがなくなるのだろうか。不安に震えたり、恐れに抉られたりすることもなくなるのだろうか。まだ幼い頃ならば、私はそう信じられたかもしれない。けれど少なからぬ経験を積み、不完全ながら風の流れが見えてしまう今は、もうそうは思えない。 風の流れが見えても、私はその風を避けることは出来ない。それがどんなに穢れていても、どんなに私を痛めつけても、どんなに私をぼやけさせても、私は構わず風に吹かれてしまうのだ。何故だろう、世界を諦めて...
pale asymmetry | 2023.02.02 Thu 19:17
JUGEMテーマ:戯言 扉を開く数字が、宙を漂っていく。こういうことか、と思った。世界に悪意は満ちているけれど、でもそれ以前に数字は漂っているのだ。悪意が強硬に数字を発掘するわけではなく。ただ目を見張り、耳を澄まし、あるいは何気なく手を伸ばしただけで、その数字は悪意に捕らえられてしまう。 けれど何の躊躇もなく、数字を宙に放つ人たち。もちろんそこに悪意はない。けれど善意もない。つまり今この世界には善も悪もないのかもしれない。それは二者がぶつかって中和させられてしまったというわけ...
pale asymmetry | 2023.02.01 Wed 20:03
JUGEMテーマ:戯言 白く濁った空気の中を、船は進む。ゆっくりと滑らかに、動力もなく帆に風を孕んでいるわけでもないのに。私はどこにいるのだろうか。川の流れに掠われているのだろうか。それとも大海の真ん中か。海流が私を運んでいるのだろうか。死滅回遊魚のように、帰ることのない旅路にいるのかもしれない。 でも、帰ることはなくても還る旅なのかもしれない。 そんなことを思うのは、拭えない淀んだ眠気のせいだろう。そんな眠気に長く纏わり付かれているのは、私が傷ついているからだろうか。そ...
pale asymmetry | 2023.01.30 Mon 20:48
JUGEMテーマ:戯言 ひどく頭痛がするので、左右のこめかみの蓋を開き、中から発条や歯車や螺子を取り出す。案の定かなり錆びている。しかも悪い錆方だ。とても汚い錆方なのだ。錆びるのは構わない。生命は常に酸化することによって活動しているのだから、構成パーツは錆びてしまうのは当たり前だ。でもそれは綺麗な錆方でなければいけない。生命が清浄に活動しているのなら、綺麗に錆びるはずなのだから。 しかし左右のそれぞれから零れ落ちたパーツたちは、皆汚く錆びている。このまままでは再び頭蓋骨の内側...
pale asymmetry | 2023.01.26 Thu 22:00
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