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JUGEMテーマ:戯言 くだらないことだと思われるかもしれないけれど、指先の傷が痛む。右手の人差し指。先端が小さく裂けている。ほんの小さな傷。けれど深い傷。だから紛らわすことの出来ない痛みが蠢いている。その痛みは指の先端から私の全身を疾走し、ランゲルハンス島でバカンスしたりしながらまた疾走を続ける。やがてその疾走が昇華され、それは透明な結晶になって、私の溜息に紛れて世界に羽ばたいていくのだ。透明なエフェクトを世界にばら撒くために。 それはたぶん取るに足らないエフェクトで、世界...
pale asymmetry | 2021.09.27 Mon 22:12
JUGEMテーマ:戯言 巨大な水槽は、澄んだ液体で満たされている。それが水なのかどうかは、私には解らない。掬い取って飲んでみれば解るかと思ったけれど、怖くて出来なかった。それが、あまりにも澄んでいたから。私の身体で濁らせてしまいそうで怖かったのだ。私の身体はそれなりに汚れていて、私の魂もそれなりに穢れているから。 巨大な水槽には幾条もの光の帯が照射されている。それは七色の色彩の帯で、何か意味ありげな角度をそれぞれが描いて液体に突き刺さっている。水面下でもそれは些かも減衰するこ...
pale asymmetry | 2021.09.25 Sat 21:20
JUGEMテーマ:戯言 それを失ってしまうことがとても嫌だ。そう思ったところで、全ての事象は失われてしまう。この世界に失われないものなど何もない。そのことを十分に理解しているけれど、それでも私は失われることに嫌悪してしまうのだ。何もかもか、どこかから訪れてどこかへと去って行く。それがどこなのか、私は知らない。知りたいと願ったとしても、知ることは出来ない。そうであるから、私は決して願ったりしない。どこかがどこであろうと、それは確かに存在するのだ。それだけで十分だろう。失われてしまっ...
pale asymmetry | 2021.09.21 Tue 21:52
JUGEMテーマ:戯言 歩道の街路樹の根元にアンクレットが落ちている。銀色のアンクレット。二足で走る犀の装飾が施されている。それはコミカルで、どこか切実な形をしている。水平線に近づきつつある陽光が、そのアンクレットをくっきりと輝かせている。私は立ち止まる。左手に握っていたリードが張り、犬も立ち止まる。私を振り返り首を傾げる。そしておずおずといった感じで、私の傍らまで戻ってくる。老犬なのだ。 私は膝を折り、そのアンクレットを見つめる。それは私のアンクレットだ。今私の左足首に巻か...
pale asymmetry | 2021.09.19 Sun 21:23
JUGEMテーマ:戯言 存在しない三角が見えるように、風景にないはずの空白を感じる。意味のある空白だろうか。意味のない空白だろうか。あるいは、意味はないのにあるかもと思ってしまう空白だろうか。どれでもあってどれでもない。どれかを選択することは出来たかもしれないし、選択肢は無限に、いや有限かもしれないけどその数は那由他だ。十分に吟味して、身勝手に選ぶことだって出来ただろう。でもしない。 空白は、空白だ。 それが三角形であろうと、四角形であろうと、五芒星であろうと六芒星であろ...
pale asymmetry | 2021.09.18 Sat 21:23
JUGEMテーマ:戯言 私の身体を深紅の野獣が這っている。無音の咆哮を上げて、私の血流を震わせている。その震動が、私を際限なく濁らせる。私の頭の中は錆の味で満たされる。 私は卵になるしかない。オーバードーズで感覚を殺して、生きているのか死んでいるのよく解らないような境界線を漂うしかないのだ。いや、しかないわけではない。選択肢は無限にあるけれど、そうすることを私は好んでいるのだ。愛していると言っても良いだろう。だからそうするのだ。卵になって漂うのだ。 その卵の殻の内側を、深...
pale asymmetry | 2021.09.14 Tue 21:49
JUGEMテーマ:戯言 昨日倒れたあの人のことを、私はどれくらい憶えているだろうか。あれは何年前の昨日だっただろう。あの人は全力で駆け、駆け巡り、そして倒れたのだ。私はどこまで目撃しただろう。私はどこから目撃しただろう。記憶は時間に上書きされて、どれが本当でどれが偽りなのかが曖昧になっていく。そしてその曖昧さが、私を癒やしてくれたりもするのだ。嫌なのだけど。 呼び起こせる確実なイメージはいくつあるだろう。ベランダに続く窓は開け放たれていた。風はゆるやかで、夜気は生温く湿ってい...
pale asymmetry | 2021.09.12 Sun 21:23
JUGEMテーマ:戯言 「踊れ」 そう叫んで旗を振る人がいる。大きな旗を櫓の上で激しく振り回している。その旗は煌めき、空気を切り裂き、身悶えるような波打ちに意味があるように思える。 「踊るな」 そう叫んで旗を振る人がいる。重そうな旗を塔の屋上で一心不乱に振り回している。その旗も煌めき、空気を叩き割り、咆哮しているような波打ちに意味があるように思えてしまう。 「踊れ」 「踊るな」 どちらの叫びも、もっともな理論のように思えてしまう。熱量に惑わされることなく、冷静に考...
pale asymmetry | 2021.09.09 Thu 21:02
JUGEMテーマ:戯言 幻想皇帝が私に命じたのは、アルマジロの説得だった。ちょうど一週間前に帝都の空に現れ、陽光のほとんどを隠し、月光の全てを隠し、流星を喰い、虹を吸い込むアルマジロは、今も奔放に帝都の上空を転がっている。 「貴殿なら出来るであろう?」 幻想皇帝は挑発的に私を睨んだが、私はそういう眼差しに反応できるほどプライドが高くはなかった。いや高くないどころか、プライドなど全くなかった。さらに加えていかなる矜持も有していなかった。というのも、私は生まれながらの怠け者なの...
pale asymmetry | 2021.09.08 Wed 20:53
JUGEMテーマ:戯言 痛みと眠気のなかで、私は幻影を見る。それは触れることが出来る幻影。纏うことが出来る幻影。目の前で片膝をつき、その幻影が私を見下ろしている。湿った風が私の頬を撫で、太陽は黒色に陰り、地面は紫紺の花びらに覆い尽くされている。それはもう失われてしまった花だ。この世界からも、全ての世界からも。 「私は追放されてしまったのだ」 声は少しばかりノイズに乱されていたけれど、優しさに満ちているように感じられた。 「罪を犯したわけではないのだけど、罪を犯さなかったこ...
pale asymmetry | 2021.09.05 Sun 21:49
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