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JUGEMテーマ:戯言 白く濁った空気の中を、船は進む。ゆっくりと滑らかに、動力もなく帆に風を孕んでいるわけでもないのに。私はどこにいるのだろうか。川の流れに掠われているのだろうか。それとも大海の真ん中か。海流が私を運んでいるのだろうか。死滅回遊魚のように、帰ることのない旅路にいるのかもしれない。 でも、帰ることはなくても還る旅なのかもしれない。 そんなことを思うのは、拭えない淀んだ眠気のせいだろう。そんな眠気に長く纏わり付かれているのは、私が傷ついているからだろうか。そ...
pale asymmetry | 2023.01.30 Mon 20:48
JUGEMテーマ:戯言 ひどく頭痛がするので、左右のこめかみの蓋を開き、中から発条や歯車や螺子を取り出す。案の定かなり錆びている。しかも悪い錆方だ。とても汚い錆方なのだ。錆びるのは構わない。生命は常に酸化することによって活動しているのだから、構成パーツは錆びてしまうのは当たり前だ。でもそれは綺麗な錆方でなければいけない。生命が清浄に活動しているのなら、綺麗に錆びるはずなのだから。 しかし左右のそれぞれから零れ落ちたパーツたちは、皆汚く錆びている。このまままでは再び頭蓋骨の内側...
pale asymmetry | 2023.01.26 Thu 22:00
JUGEMテーマ:戯言 それは馬に見えた。緑青色の馬に見えた。けれど馬ではないだろうとも思えた。それには身体中から長く鋭い棘が生え出ていたから。それは風にしなり、何かを奏でるように揺らぐ。でも実際には何も奏でてはいないから、それは無音で疾走する。あるいは透明な音楽を奏でているのかもしれないけれど、私がそのように想像しなければ、その音楽は存在しない。 私はその音楽を存在させたいのか、そうではないのか、それは解らない。それはとても難しいのだ。自分自身の気持ちの、正確なフォルムを把...
pale asymmetry | 2023.01.24 Tue 21:03
JUGEMテーマ:戯言 山高帽の紳士は窓から飛び込んでくると、アップライトピアノを抱え上げ、それを躊躇なくバスタブに沈めた。そんな馬鹿な、と私は思った。サイズ感がおかしかったからだ。ピアノは明らかにバスタブより大きかったのに、完全に沈んで水面を覗いてもその姿を捉えることが出来なかった。 「やれやれ、深海はどこにでもある」 飛び散った雫を払いながら、山高帽の紳士は軽く会釈する。 「小生のことはドラゴンフライと呼んでくれたまえ」 左手に持っていたステッキで、紳士はバスタブ...
pale asymmetry | 2023.01.23 Mon 20:32
JUGEMテーマ:戯言 恐れることなく翼を大きく広げれば良い。そう彼は教えてくれた。翼がないならそれで良い。想像の翼を広げるだけで十分だ。彼はそう叫んで笑う。想像の翼では飛べないわ。私がそう言うと、跳ねろ跳ねろと彼は跳ぶ。その内飛べる日も来るさ、なんて嘯いて何度も跳躍する。 地面に残る影が、その揺らぎが炎のように格好良くて、私は彼に同意する。一緒に跳ねて、また跳ねる。そして本当に飛べるような気分になって、歓喜の叫びを上げてしまう。彼はそれに呼応するように踊り出し、空気を掻き混...
pale asymmetry | 2023.01.22 Sun 20:18
JUGEMテーマ:戯言 終わろうとしている炎に、私は何もして上げられない。終わってしまったその後に、この炎は何を失うのだろうか。何かを得る可能性もあるのだろうか。あるいはここではない別の高次元へ旅立つのだろうか。もしそうなら、それはどのようなところなのだろう。そういう場所が、どこかの銀河の中心にあって、どんな炎もいずれはそこに行き着いたりするのだろうか。 そうであれば良いなと思う。 そうでなくても、それでも良いと思える。 明日も晴れれば良いな、と思ったりもする。 ...
pale asymmetry | 2023.01.21 Sat 21:39
JUGEMテーマ:戯言 手招きする人がいたので近づいてみると、それは看板だった。縦長の茶色い駐車場を示す看板で、ちょうど私の頭の高さに『P』というアルファベットが白い文字で描かれている。長方形だから、人間と間違いようがない形だ。それにどう見ても手招きしているようには見えない。でもついさっきは確かに手招きしている人に見えたのだ。 「まあ、そういうこともありますよ」 その看板が私にそう言った。どこにも口は見当たらないのに。 「そういうことって?」 私は思わず尋ねてしまう。...
pale asymmetry | 2023.01.18 Wed 21:33
JUGEMテーマ:戯言 大きな事象を語る人は、私の深層をしらない。だからその首元を掴んで股間を蹴り上げることもできたけど、もちろんそんなことはしなかった。だって、私の方もその人の深層を知らないのだから。そして互いに互いの深層を知りたいとも思っていないから、事態は複雑になっていく一方だ。 その上、その人は自身の道筋の上に私を無理矢理並べようとするから、私は正直困ってしまう。そこに悪意はないのだけれど、私たちは関わりが希薄すぎて、それが吐き気を感じてしまう原因になる。その人が描く...
pale asymmetry | 2023.01.17 Tue 21:25
JUGEMテーマ:戯言 巨大な緑柱石に、剣が突き刺さっている。尖った天辺に息の根を止めるように突き刺さっている。剣からは片翼の翼が生えていて、それが鋭い北風を孕んで膨らんでいる。太陽はまさに昇ろうとしていて、風は黎明の残酷さに染まろうとしている。私は緑柱石の前に立ち、剣を見つめている。 朝が始まろうとしている。でも世界は終わろうとしている。私にはそれが解る。何故だかそれが解る。 「あなたは閉じようとしている?」 私は何者かに問い掛ける。どこにもその姿は見えないのに。 ...
pale asymmetry | 2023.01.16 Mon 21:36
JUGEMテーマ:戯言 「もっと目を見開いて世界を見なさい」 街路ですれ違った白い猫が私に言う。その猫の瞳はターコイズ。だからその言葉を信じなければいけないのだと思えた。それで立ち止まり、私は空に目を向ける。林立するビルの輪郭に切り取られた空。意外と青く眩しい。その空の果てから戦車が降ってきた。もすごいスピードで落ちてきた戦車が路面に突き刺さる。けれど音も衝撃もなかった。ああ、もっと見開かなければいけないのだなと思った。 「チャンスは何度もある。だから常に弾を込めておけ。そし...
pale asymmetry | 2023.01.14 Sat 21:08
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