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JUGEMテーマ:戯言 「扉の話をしようと思う」 彼は煙草に火をつけながら言う。この部屋には灰皿がないので、適当な皿を差し出す。彼はその皿の模様に見入ってから、少し首を傾げた。そこに灰を落とすと、選択を誤って間違った並行世界へとトリップしてしまうのではないかと恐れたように感じた。 「私は窓の話がしたいのよ」 冷蔵庫からメロンを出し、半分に切ってスプーンで食べ始める。この部屋にはテーブルがなかったので、メロンは床に直接置いた。自然と私は顔を床に近づけることになり、獣のような...
pale asymmetry | 2021.03.08 Mon 21:25
JUGEMテーマ:戯言 些細なインフォメーションに気が向いてしまう。そればかりに意識が囚われて、私の奥底に種子が発生するのだ。ガラスが粉砕するような音が響いて、といってもそれが実際の音として響いているわけではなく、幻の響きに過ぎないのだけれど、とにかく響いて発芽するのだ。それはタケノコみたいな、角のような何か。急速に成長して、些細な一点を貫いて、さらに私の意識を捕らえて放さない。些細なインフォメーションが貫く些細な一点は、私の核の中心から少しだけずれた一点。私の全ての関節から力が...
pale asymmetry | 2021.03.05 Fri 21:43
JUGEMテーマ:戯言 「全力で走れ」 アドボードが私に命令する。林立するビルディングの群が、皆王冠のようにアドボードを戴き、その全てが私に命令するのだ。 「全力で走れ。手を抜くな。走り続けろ」 無音の声で、私を撃ち抜くのだ。機関銃のように。その弾丸を避けることなんて出来ないけれど、私は決して走るものかと軽やかに口笛を吹いてみたり。けれど気がつくと小走りで人の波に追いつこうとしているのだ。いけないいけない、誰かのシナリオに支配されそうだ。いや支配されたって構わないのだけれ...
pale asymmetry | 2021.03.04 Thu 21:10
私は人間だ。 人間であるはずだ。 そんな超然とした事実ですらもはや私のアイデンティティを証明することはできなくなった。 味方であるはずの同胞に背後から撃たれたからだ。 私はどうやら彼らの仲間ではなかったらしい。 何かをなそうとするたび潰され詰られ打ち捨てられた手足は力を入れるたびに傷み、 もはやこの生命のひしめく空間に、私が息をつける場所は存在しない。 皆と同じようにできないお前が悪いのだと、呪いのような誰か...
たまに浮上する | 2021.03.04 Thu 18:39
JUGEMテーマ:戯言 私が腐った書籍だということを知っているのは、私だけだ。周囲の人は誰一人として知らない。それはつまり、誰一人私の存在そのものを知らないということだ。だから私がどのような存在なのかなど知るはずもない。私は腐った書籍で、もう表紙と全てのページが張り付いてしまっていて、開くことも出来ない。一ページも開くことが出来ないから、そこに記述されている文章は全て無意味だ。ぎっしりと詰まった文字は、誰にも届かない。私はただ誰にも知られることなく、朽ちた状態からさらに朽ちていく...
pale asymmetry | 2021.03.01 Mon 22:14
JUGEMテーマ:戯言 「マッハで移動しているのは、あなたの脳天気な電気信号だけよ」 突然部屋に入ってきたロボットは、頭部の小さなスピーカーからそんなセリフを吐き出した。少し嗄れていたけれど、女性の声だと解った。直進力の強すぎる女性の声だと、僕には思われた。そのロボットは薄いピンク色のボディで、簡素な身体に対して両手の指だけが妙に精巧に出来ていた。その十本の指を忙しなく動かし続けている。何かを操作しているかのように。透明なキーボードやスイッチを弾いているように。あるいはレバーや...
pale asymmetry | 2021.02.26 Fri 22:10
JUGEMテーマ:戯言 深呼吸が大切なのだろうと、水たまりを覗き込んで思う。水たまりは当然だけれどとても浅く、そこには目につく生態系も存在しない。もちろん顕微鏡レベルで観察すれば、そこには広大な独自世界が広がっているのかも知れないけれど、あいにくと私の両眼は近視で乱視のポンコツレベルなので、そんな世界は見いだせない。あるいはそこにはイメージの量子的観測で、想像を凌駕した知性体が私を見返しているのかもしれないし、浅いと感じるその水たまりに腕を差し込めば、肩口まで沈み込んでしまったり...
pale asymmetry | 2021.02.23 Tue 22:05
JUGEMテーマ:戯言 そのとき私はカフェにいて、その店で一番安いホットコーヒーを飲んでいた。そのコーヒーはとても酸味が強く、世界は斜めに広がっているのだと私に教えてくれるから好きだった。店の全ての窓も扉も全開で、風は我が物顔で吹き抜けていく。小僧だな、と思った。なんかそういう感じの妖怪のように感じる風だった。そしてその小僧が不可思議な香りを運んできた。芳ばしく甘い香り。ゴツゴツとしていて、でもよく見ると全ての角は丸まっている。そういう感じの見知らぬ果実のような香りだった。 「...
pale asymmetry | 2021.02.20 Sat 21:54
JUGEMテーマ:戯言 キリンが踊る。私の口の中で。跳ね飛び上顎を弾く。回転して歯を擦る。舌の上を転がって、カラカラと笑う。キリンが笑う。キリンって笑う? 笑うとしてもカラカラとではないだろう。ではこの私の口中の何者かはキリンではないのだろうか。しかし私には見える。私の口中で踊るキリンの姿が。いや待て。私は何故私の口中が見えるのか。私の目は口中にあるのか。それとも私の口中が目の前に風景として広がっているのか。あるいはそれは箱庭として私の胸の内にあって、それがあたかも見えているよう...
pale asymmetry | 2021.02.19 Fri 21:44
JUGEMテーマ:戯言 キリンが踊る。私の口の中で。跳ね飛び上顎を弾く。回転して歯を擦る。舌の上を転がって、カラカラと笑う。キリンが笑う。キリンって笑う? 笑うとしてもカラカラとではないだろう。ではこの私の口中の何者かはキリンではないのだろうか。しかし私には見える。私の口中で踊るキリンの姿が。いや待て。私は何故私の口中が見えるのか。私の目は口中にあるのか。それとも私の口中が目の前に風景として広がっているのか。あるいはそれは箱庭として私の胸の内にあって、それがあたかも見えているよう...
pale asymmetry | 2021.02.19 Fri 21:44
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