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JUGEMテーマ:戯言 美しい顔立ちの男女が、手を繋いで森を歩いていた。見渡す限りの大樹の群。一見、そこに道はない。けれど、空気の流れが大樹の狭間を乱れてのたうち、それを辿るように促していた。美しい顔立ちの男女はそれを認識し、導かれて進んだ。 「ああ、あれは僕だね」 美しい顔立ちの男性が言う。 「隣にいるのは私だわ」 美しい顔立ちの女性が言う。つまり正面から二人の人物が歩いてきていて、それが美しい顔立ちの男女と全く相似の相貌をしていたのだ。どちらもそのまま導きの道を進...
pale asymmetry | 2021.04.02 Fri 21:22
JUGEMテーマ:戯言 遠い街のあなたを思うとき、私は仄かな香りを思い出す。少しだけ欠けた月を思い出す。ムシムシと湿った深夜を思い出す。そいうものたちを思い出しながら、空っぽの浴槽に横たわってみたりする。私は病んでいるのかも知れない。あの頃と同じように。あなたを苦しめたあの頃と。あなたを跪かせたあの夜と同じように。 このまま水のない浴槽で眠ってしまおうと思ったりしても、いくつもの記憶が私の後頭葉を鋭く刺激して、私を覚醒に留めようとするのだ。私自身を見失ってしまいたいのに、それ...
pale asymmetry | 2021.03.30 Tue 21:59
JUGEMテーマ:戯言 チェロを抱く。彼女のチェロを。遠い場所へ行ってしまった彼女のチェロを。その場所はこの場所と繋がってはいない。そこに行くためには、境界を越えなければいけない。それは容易ではない。少なくとも私には。苦しいのは嫌いだし、痛みは怖い。そういう想いを克服できない私には、境界を越えることなんて出来ない。 彼女は越えてしまった。 苦しみを受け入れたのだろうか。痛みを飲み込み、その中に裏返るように沈み込んだのだろうか。とにかく彼女は行ってしまった。もう戻ることはな...
pale asymmetry | 2021.03.29 Mon 21:29
JUGEMテーマ:戯言 弾丸は無回転で時空を切り裂き、現れた道がヴァイオレットの飛沫を上げる。あなたは真昼の月、私は未明の彗星。いつだってあなたは無頓着に笑う。いつまでも私は不機嫌な吐息。私の深海は今も静寂。無音のノイズが静脈を揺さぶる。あなたの水面はいつだって大波。砕ける前にライドする。 「転がれ」 叫ぶあなたは風の向こうを見つめてる。 「沈め」 呟く私は、目を閉じたまま。 「いいさ」 快活に笑うあなたの背骨。 「知らない」 私は囁き冷気を掻きむしる。 ...
pale asymmetry | 2021.03.25 Thu 21:12
JUGEMテーマ:戯言 あなたは時々スカラベに変身してしまうので、私は困ってしまう。けれどスカラベのあなたはとても綺麗だから、根本的な解決法を見つけ出そうとは思えないの。高貴な紫に輝くスカラベ。輝きの底には煌めきが沈んでいる。抱きかかえるのにちょうど良い大きさ。あなた自身も解っているのか、スカラベのあなたは私の懐に潜り込もうとする。私の内側にあなたの理想とする宇宙が存在していると確信しているようだ。スカラベのあなたは温かい。金属質な見た目なのに、伴侶動物のように温かい。だから私は...
pale asymmetry | 2021.03.21 Sun 20:48
JUGEMテーマ:戯言 痛みは内へ内へと潜降していくものではない。外へ外へと羽ばたいていく感じだ。だから痛みを抱えているのだとは言いがたい。この痛みは私のものではないのかも知れない、とさえ思えてしまう。確かに私の内部で疼いているというのに。これは毎年のことだ。何者かが私に教えているのだ。世界は、こういう痛みによって展開していくのだと。そうであるからこそ、世界だと全ての生命に認識されるのだと。その上で、全ての生命が同じように展開するのだと。 皆そうなのだろうか? 皆この痛みを感...
pale asymmetry | 2021.03.20 Sat 21:29
JUGEMテーマ:戯言 時折、歩いていると何気なく自分の螺子を見つけることがある。アスファルトの路面に落っこちているのだ。強い南風が吹いていたりすると、僅かに揺れていることもある。でも転がっていくことはない。基本的に居心地よさそうに、日差しの強い日などは温かそうに横たわっているのだ。 いつ落としたのだろう。と、その場でしゃがみ込んで考えてみたりする。そしてこの場所を通るのは初めてであることに気づく。たった今落ちたわけではない。それは確かなことだと思われるから、どこかで私から落...
pale asymmetry | 2021.03.16 Tue 22:01
JUGEMテーマ:戯言 間に合わせの鎧はボロボロだ。それはもう流血を紛らわすだけの役にしか立っていない。それでも私の中の少年は結構けなげで、神にひるむことなく両脚を踏ん張って立ち尽くしている。私には決して出来ないことだ。だから羨ましい。そう素直に思う。思うだけで、何の手助けも出来ないけれど。 飛び散った鮮血を浴びて、私の中の少女は巨大化する。彼女は神になりたいのだ。全知全能の存在として、世界を薙ぎ払いたいのだ。あるいは業火で焼き尽くしたいのだ。世界というものがどういうものかを...
pale asymmetry | 2021.03.15 Mon 21:06
JUGEMテーマ:戯言 仕事から家に戻ると、テーブルの真ん中にカエルがいて、私を見つめていた。テーブルはリビングの真ん中にあって、それはざらついた灰色の丸テーブル。カエルは鮮やかなブルーだった。私の掌よりもずいぶんと小さい。カエルには詳しくないので種名は解らないけれど、何だか非現実的なカエルに見えた。色のせいだろうか、それとも雰囲気のせいだろうか。あるいは私の心持ちのせいかもしれない。 「ここが世界の真ん中というわけではないよ」 カエルが言う。幼い少年のような声だ。 「だ...
pale asymmetry | 2021.03.10 Wed 21:20
JUGEMテーマ:戯言 忘れてしまったことを、取り戻すことはもう出来ない。何を忘れてしまったのかを思い出すことが出来ない。忘れてしまったということさえ、もうすぐ忘れてしまうだろう。平坦な気持ちだけを抱えて、変化のない日常を嘆くだろう。大きなものと静かに向き合いたいだけなのに、煩雑な手続きが山積みになって立ち塞がったりする。イライラしたりはしないけれど、もちろんそれを心地いよいと感じるわけもない。というか、イライラしないのは私のキャパシティが大きいからではなくて、逆に小さすぎて常に...
pale asymmetry | 2021.03.09 Tue 21:43
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