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JUGEMテーマ:戯言 私は湖と森の境界線上にいて、両足の踝までを水面下に逃がしている。ラピスラズリの硬く冷たいベンチシートに、私は腰を下ろしている。樹間から見える空は茜色で、太陽は見当たらない。あるいはその茜色は満月が放っているのかもしれないけれど、それは解らない。宵の明星か明けの明星が放っているのかもしれないし、彗星が空を横切りながら放っているのかもしれないけれど、それも解らない。私には何も解らないのだ。私が世界に組み込まれている意味も。 このラピスラズリのベンチシートは...
pale asymmetry | 2020.06.16 Tue 19:34
JUGEMテーマ:戯言 少しだけ、私は蹲っている。ほんの少しだけ。裂け目を縫い閉じられたその糸の違和感が、私をげんなりさせている。虹なんて見えるはずがないと思いながら、知らず知らずのうちに虹を探している。森の奥の薄暗い木々の根元で、ニッチを求めるコケの王冠として虹が存在しているかもしれないなんて考えながら。意味を嫌っているわけではないのだ。むしろどんな意味も受け入れたいと思っている。なのに意味の方が、私から逃げていく。そしてその後ろ姿を見つめていると、私は眠くなったりする。ミニチ...
pale asymmetry | 2020.06.11 Thu 21:38
JUGEMテーマ:戯言 長いテーブルだった。銀色と白色の中間の色をした細長いテーブルだった。大陸の西の端から東の端まで横断して伸びるテーブルだった。少女は西の端に腰掛けていて、少年は東の端に腰を下ろしている。だから、この二人が互いの顔を見つめることは出来ない。二人はきっと出会うこともないだろう。それでも少女は少年の存在を、少年は少女の存在を知っている。互いに相手がこのテーブルの端にいることをよく知っている。そしてそれこそが、世界の真理なのだということを理解しているのだ。 テー...
pale asymmetry | 2020.06.10 Wed 21:11
JUGEMテーマ:戯言 ショウビンの風が吹いている。ショウビンの風だからもちろんそれは朱色だ。鮮やかで軽やかな朱色だ。それが渦を巻いて海から吹いてくる。ぐるぐると渦を巻きながら、弾丸のような直進性を秘めて吹いてくる。人々は傘を開き、その風に乗って大空を舞う。雨は降ってはいなかったけれど、そらはドンヨリねずみ色だ。巨大な灰色の獣が寝そべって惰眠を貪っているからだ。それは本当に巨大すぎて、見上げているのがどの部分なのか見当も好かない。たとえばそれはつま先のごく一部かもしれない。それと...
pale asymmetry | 2020.06.08 Mon 21:54
JUGEMテーマ:戯言 その球体は僅かに歪んでいる。カリスクリソイド計測でコンマ1パーセントほど。もちろんその歪みには意味があって、それは球体が箱であるということを表しているのだ。その球体を箱として成立させるために、その歪みが欠くことの出来ない要素であるということだ。これはとても単純な理屈で、それ故に多くの矛盾をはらんでいる。矛盾というものがこの世界に存在するのならば。あなたの世界には存在しているだろうか、概念としてのそれではない。目の前に構造体として機能し、触れたり、時には並走...
pale asymmetry | 2020.06.05 Fri 21:16
JUGEMテーマ:戯言 水曜日は菱形。ダイヤの形。ダイヤと言ってもジュエルじゃない。トランプのスートのほう。色は瑠璃色。鉱石のようにキラキラ光るような。それは個体なのに、表面が絶えず流動している感じ。閉じ込められた液体のようだ。液化された鉱石が閉じ込められているような、という意味。あり得ない。だから高揚するの。 水曜日のダイヤはご機嫌だ。風もないのに空を浮遊する。キラキラと光の破片を撒き散らしながら。それは旅の途中にノマドたちと戯れ踊る詩人のようだ。不純な酒にどっぷりと溺れ、...
pale asymmetry | 2020.06.03 Wed 22:01
JUGEMテーマ:戯言 時世のせいか、列車にはほとんど人影がなかった。私が選んだ車両には私の他にはもう一人乗客がいるだけだった。私の斜め前の座席に腰掛けるその人物は、ねずみ色の背広姿に同色の中折れハットを被る老紳士だった。彼は左の掌を胸の前で天井に向けて開いている。その掌の上にはガラス玉が乗っているように見えた。ビー玉くらいの大きさで、虹色に輝いて見える。それが、彼の掌にあるように思えた。 ように見えたとか、ように思えた、と表現したのは、はっきりとしなかったからだ。そこにガラ...
pale asymmetry | 2020.05.31 Sun 22:00
JUGEMテーマ:戯言 何も抱きしめてなどいないのだ。そのことはよく解っている。解っているからこそ、私は潜ませなければいけないのだろう。コードはそこかしこに漂っていて、それは基本的に透明なのだけど、時折気まぐれに色彩を纏ったりする。そういうときに、的確にそれを捉えて集めて、次の千年のために固定しなければいけないのだと思ったりしている。ガチャガチャと言葉を吐く若者が、自身の法を振り回し、周囲の困惑に気づかないふりをして突き進むのをただ見送っているのは退屈なものだから。 そういう...
pale asymmetry | 2020.05.30 Sat 20:45
JUGEMテーマ:戯言 漆黒の鎧兜は、夜よりも沈んでいる。それは曇天の夜よりも遙かに重く沈んでいる。ざらざらとした空気が凝り固まる夜よりもずっと。だからその鎧兜も重いはずだ。場合によってはこの大陸よりも重いかもしれない。あの大洋よりも重いかもしれない。曇天の向こう側にあるはずのエンケラドスよりも重いかもしれない。 長い刀を鞘から解き放ち、その切っ先を神へと向ける。反射できる光源は何もないはずなのに、その切っ先がきらりと鼓動する。それは別の次元から送られた電撃が、漏れ溢れている...
pale asymmetry | 2020.05.26 Tue 22:25
JUGEMテーマ:戯言 ああ、これは死ぬな。と思った。今私が立っている場所は完全に相手の間合いだ。それなのに私の間合いには遠すぎる。このままでは為す術なく殺されるな。そう思った。疑いようもなくそう考えた。しかしそれでも何かを成さねばならない。行動を起こすだけでは駄目で、その行動を成就させなくてはいけないだろう。容易なことではないだろうけど。 相手がその切っ先を打ち落とすなら、私もまた渾身の力で振り下ろさなければいけないのだろう。たとえそれが相手には届かず、空を切ったとしても。...
pale asymmetry | 2020.05.24 Sun 21:20
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