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JUGEMテーマ:戯言 昨日倒れたあの人のことを、私はどれくらい憶えているだろうか。あれは何年前の昨日だっただろう。あの人は全力で駆け、駆け巡り、そして倒れたのだ。私はどこまで目撃しただろう。私はどこから目撃しただろう。記憶は時間に上書きされて、どれが本当でどれが偽りなのかが曖昧になっていく。そしてその曖昧さが、私を癒やしてくれたりもするのだ。嫌なのだけど。 呼び起こせる確実なイメージはいくつあるだろう。ベランダに続く窓は開け放たれていた。風はゆるやかで、夜気は生温く湿ってい...
pale asymmetry | 2021.09.12 Sun 21:23
JUGEMテーマ:戯言 「踊れ」 そう叫んで旗を振る人がいる。大きな旗を櫓の上で激しく振り回している。その旗は煌めき、空気を切り裂き、身悶えるような波打ちに意味があるように思える。 「踊るな」 そう叫んで旗を振る人がいる。重そうな旗を塔の屋上で一心不乱に振り回している。その旗も煌めき、空気を叩き割り、咆哮しているような波打ちに意味があるように思えてしまう。 「踊れ」 「踊るな」 どちらの叫びも、もっともな理論のように思えてしまう。熱量に惑わされることなく、冷静に考...
pale asymmetry | 2021.09.09 Thu 21:02
JUGEMテーマ:戯言 幻想皇帝が私に命じたのは、アルマジロの説得だった。ちょうど一週間前に帝都の空に現れ、陽光のほとんどを隠し、月光の全てを隠し、流星を喰い、虹を吸い込むアルマジロは、今も奔放に帝都の上空を転がっている。 「貴殿なら出来るであろう?」 幻想皇帝は挑発的に私を睨んだが、私はそういう眼差しに反応できるほどプライドが高くはなかった。いや高くないどころか、プライドなど全くなかった。さらに加えていかなる矜持も有していなかった。というのも、私は生まれながらの怠け者なの...
pale asymmetry | 2021.09.08 Wed 20:53
JUGEMテーマ:戯言 痛みと眠気のなかで、私は幻影を見る。それは触れることが出来る幻影。纏うことが出来る幻影。目の前で片膝をつき、その幻影が私を見下ろしている。湿った風が私の頬を撫で、太陽は黒色に陰り、地面は紫紺の花びらに覆い尽くされている。それはもう失われてしまった花だ。この世界からも、全ての世界からも。 「私は追放されてしまったのだ」 声は少しばかりノイズに乱されていたけれど、優しさに満ちているように感じられた。 「罪を犯したわけではないのだけど、罪を犯さなかったこ...
pale asymmetry | 2021.09.05 Sun 21:49
JUGEMテーマ:戯言 優しい旅人は分厚いマントを纏っていたけれど、汗の一滴も浮かべてはいなかった。凶暴な陽光は、彼にはどんな手出しも出来ないようだ。私は汗びっしょしで、しきりに陽光を呪い、ミネラルウォーターを飲み続けている。アミノ酸が洗い流され、水だけになって蒸発してしまいそうなくらいに。 「これは独楽ではないよ」 直径33ミリのコインを懐から取り出し、優しい旅人は指で摘まんで翳す。何故それの正確なサイズが解ったのかというと、コインの表面に33ミリと刻印されていたからだ。ある...
pale asymmetry | 2021.09.01 Wed 21:07
JUGEMテーマ:戯言 僕らは、八月の足跡を追いかけていた。全速力で追いかけていた。 と書いたところで僕はキーボードの指を止める。八月の足跡って何だろう。砂浜に直線で伸びていく誰かの足跡だろうか。いやいや、それは人の足跡で八月のじゃないな。では八月の足跡って、どんなのをイメージすればいいのだろう。目を閉じ腕を組み、じっと考えてみる。何も思い浮かばない。全然思い浮かばない。ユーリにチャットで訊いてみた。 {8月の足跡って、どんなのをイメージする?) ユーリからは二秒で返事...
pale asymmetry | 2021.08.31 Tue 21:58
JUGEMテーマ:戯言 一つは、バリケードのこと。巨大なコンクリートの塊。立方体のブロック。真ん中にくびれがあって、頭頂部に金属の輪、逆さになったU字が突き刺さるような輪。赤錆色で襞が多数。露出した血管のようにも見える。あるいは啓示のようにも感じる。この輪を覗いてみなさいと促されているように感じたりするのだ。この輪から見える景色は思いも寄らない地獄なのだからとか、逆にこの上ない天国なのだよとか、そういう類いの啓示。まあ、この二つは根元が同じなので、同じ風景が見えるわけなのだけど。 ...
pale asymmetry | 2021.08.27 Fri 21:19
JUGEMテーマ:戯言 時間を持て余している人がいるのだという。持て余しすぎて、心が沈んでいる人がいるのだという。時間を追いかけている人がいるのだという。どこまでも追いかけようと、なりふり構わず疾走している人がいるのだという。どちらもやがて倒れてしまって、助けが来ないと嘆くことになるのだという。 私はといえば、時間に踊らされている。ヘトヘトになるまで踊らされているというのに、甘い汗をかいて何故だか気持ち良くなったりしている。夏の最中に秋の鳴き声を聞いたりして、何かがおかしいと...
pale asymmetry | 2021.08.26 Thu 21:26
JUGEMテーマ:戯言 手首は横に薙いではいけないのだそうだ。邪魔なものが多すぎるのだという。深く傷つけたければ、縦に強く切るのが良いのだそうだ。そうすれば、必要十分な痛みを感じることが出来るのだろう。私はしないけど。しもしないのに、それが印象として私に確実に沈み込んだりするのは、それが、つまりその傷が、その痛みが綺麗だと思えてしまうからだろう。何故そう思えるのかは全然解らないけれど。 痛みには弱いのだ。それは確か。でも激痛が走ったとき、声が出ない。そして動きが止まらない。私...
pale asymmetry | 2021.08.24 Tue 21:35
JUGEMテーマ:戯言 もう夕暮れ時のはずなのに、それは欠片も見当たらない。陽光はまだ凶暴なままで、その支配力によって風まで沈めてしまった。無風の街路には、オートモービルがひっきりなしに行き交うのに、運転席に人影は見えない。誰も乗っていないはずはないのだけれど、陽光の反射が強すぎて車内が見えないのだ。そして私は世界の終わりを感じてしまったりする。騒々しい音を響かせながら、忙しなくオートモービルが駆け巡っているというのに。 歩道には人影がない。前方見渡す限り、後方を振り返っても...
pale asymmetry | 2021.08.21 Sat 20:58
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