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JUGEMテーマ:戯言 お前の小指はどうしてそんななのだ、と猫に問われた。巨大な蝙蝠は灰色で、その無音の飛翔は飛翔そのものの存在を隠蔽している。もちろんそれは空の青も隠蔽している。そんな午後の遅くに、海を見下ろすカフェへと歩いているときのこと。風は覚醒を促す強い北風だったけれど、眠気を誘う湿度の方がもっと強くて、私のうつつは希薄な感じだった。 お前の右手の小指は、どうしてそんな風に曲がっているのだ、とその黒猫はじっと私の小指を見つめている。光線が発射されそうなほどにじっと。黒...
pale asymmetry | 2019.11.19 Tue 20:23
JUGEMテーマ:戯言 その鳥は、九十九折りになった灰色の空を飛翔していた。風を虜にしているのか、翼は微塵も動いていない。それでもそのスピードは前方の空気を分解し、後方で透明な螺旋を構築している。透明だからそれは見えなかったけれど、美しかった。見えていないからこそ、私はその美しさに感嘆した。きっと鳥は蒼空を目指しているのだろう。しかしそんな空は存在しないのだ。鳥自身が生み出さない限りは。あの鳥はその意味に気づいているだろうか。いいや、気づいてはいないだろう。そして求めるものには永...
pale asymmetry | 2019.11.17 Sun 20:55
JUGEMテーマ:戯言 大海原で嵐に翻弄されている船のように眠い。コミックブックを読みたいのに、瞼を持ち上げるのが難しい。このまま眠ってしまいたいけれど、そうはいかない。それは僕の宿命で、だから変えることは出来ないのだ。それは冬が踊り始めたことと関係していたりするけれど、その相関はあまり強くはない。むしろ彼女が今ここにいないということのほうが、強く関係しているのだろう。例えばそれは今夜が満月ではないこととも関係しているだろうし、流星群の余韻が夜空の端っこでくすくす笑っていることと...
pale asymmetry | 2019.11.14 Thu 20:47
JUGEMテーマ:戯言 私は立っている、両足で、天を見つめ、青空に雲が欠片も見当たらないことに歓びを感じながら。その青は、異次元にシームレスで繋がる青だ。こちらから電波を飛ばせば、必ず返事が来るだろう。向こう側にありえない瑠璃を感じさせる青だ。私によく似た誰かが、電波を受け取ってくれるだろう。その私によく似た誰かも、私を欲しているだろう。 「ハローハロー」 私は呟いてみる。叫ぶ必要なんてない。私は瑠璃と繋がり、その瑠璃は私によく似た誰かと繋がっているのだから。糸電話みたいな...
pale asymmetry | 2019.11.13 Wed 21:48
JUGEMテーマ:戯言 扉を開けているのに、扉は閉められていく。蓋を開いているのに、蓋は閉じられていく。瞼を持ち上げているのに、瞼は重く落ちていく。全てが矛盾しているようで、それでいて矛盾からは確かに解放されている。解放されているとしか感じられないのに、そうであるのに、そうではない気がするという奇妙な感覚にさざ波を立てられている。 「そういうことなんだよ」 彼が囁く。私のうなじを擽るように。私たちは横たわっている。名前のない時間のなかで。 「そういうことなんだ」 私は...
pale asymmetry | 2019.11.06 Wed 22:12
JUGEMテーマ:戯言 私は網を打つ、そして私を絡め取る。網の目模様の内に閉じ込め、網目紋様を纏わせる。私は私を採り、私は私を摂る。私にはそれが出来るし、私にしかそれは出来ないのだ。両手を組み合わせて小さな三角窓を作り、適当な目標をとらえて右左と交互に目を閉じてみたり。そして自分の利き目が左目なのだと再確認してみたり。あは、リズムがたりないな。 私は網を打たれ、そして私に絡め取られる。網の目の模様の内に守られ、網目紋様に抱きしめられる。優しく温かく柔らかく、私は昇華される...
pale asymmetry | 2019.11.05 Tue 21:56
JUGEMテーマ:戯言 私は泳ぐ。壁に向かって。壁に正対して、静かに目を見開き、呼吸を制限して、痛みを封じ込めて。苦しみは一時。あとは死の直前の浮遊感。そこに片足だけを置いて、生に踏みとどまる。脳と心が鬩ぎ合い、痛みと恍惚が絡み合う。多分痛みと恍惚は、根源的に同じものなのだろう。だから耐えようと思えば、いくらでも耐えられるのだ。痛みに、人は。人だけじゃなく、あらゆる生命は。つまりきっと、生命としての活動そのものが痛みであり、痛みであるということは恍惚なのだろう。 だから、こん...
pale asymmetry | 2019.11.04 Mon 20:57
JUGEMテーマ:戯言 多分これは私の血流の中の空想だ。空を駆ける想いということだ。稲妻のように角を露わにした旋回を繰り返し、未明の空を駆け巡る想いなのだ。夜はしっとりと横たわっていただろうか。いや、そうではなかったな。沈黙を重く抱えて沈んではいたけれど、そこに潤いはなかったはずだ。乾いた不確かな意思が、咲き誇っていた花の栄華が終わりを迎えたことを感づいていたのかもしれない。そのとき孔雀は飛んでいただろうか。鳳凰のように黄金色の羽根を振り撒いて飛んでいただろうか。色は確かに鳳凰め...
pale asymmetry | 2019.11.01 Fri 21:39
JUGEMテーマ:戯言 少年は描く。巨大な怪獣を。流星さえ躊躇する断崖に。シルバーのサインペンで。もちろん油性で、驚くことに極細で。エンパイアステートビルくらいの足場が必要だったけど、そんなものは手に入らない。手に入ったとしても格好悪い。格好悪いし、重苦しい。少年はドローンに乗り、軽快に愉快に、冗談みたいに不真面目に滑り滑り飛翔することを選ぶ。クロムな感じがするだろう、なんて嘯きながら。クロムはシルバーと相性がいいからね。 首にかけたスピーカからは、グラムロックが響いてる。そ...
pale asymmetry | 2019.10.28 Mon 20:19
JUGEMテーマ:戯言 月を見つめるのに飽きてきた。飽きるくらいに、私はずっと月を見つめているのだ。細くとがったカーブする月。角か、船か、器か、それとも私の骨盤か。風はなく、夜の空気はただ沈んでいる。ただ沈み続けている。それに巻き込まれて私も沈んでしまわないのが不思議なくらいに、真摯に沈んでいる。何処から何処へ沈むのか。見知らぬ世界から見知らぬ世界へ。私は世界たちのことを何も知らない。並行するすべての世界が、何某かの共感によって、緩やかに結ばれているはずなのに。 角であるなら...
pale asymmetry | 2019.10.25 Fri 21:04
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