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JUGEMテーマ:戯言 岬の先端から、誰かが叫んでいる。それは西の岬だ。私は東の渚からそれを見つめている。風は立った今南から北に風向を変えた。翻ったというよりは、のたうったという感じに思えた。何者かの攻撃を受けたのかも知れない。それとも、ただの気まぐれか。どちらであっても、どちらでもなくても、風は表情を目まぐるしく変化させながら時の向こうへと吹いていく。それが北でも南でも結局は同じことだ。方角は時間に変換できない。それを気にするのは私だけかも知れないけど。 岬の先端から叫んで...
pale asymmetry | 2021.04.17 Sat 21:31
JUGEMテーマ:戯言 「南風が吹いたから、旅に出なくちゃね」 友達はそう言って旅立っていった。もうかなり昔の記憶。彼は世界中の都市ではない場所を巡り続け、最終的に僕らのミトコンドリアが生まれた都市に辿り着いた。 「都市を避けて移動していたのに、結局都市に飲み込まれてしまったよ。世界って難しいね」 最後に電話で話したときに、友達ははにかむようにそう言っていたっけ。そういえばこのときの電話は固定電話だったな。もちろんそのときは固定電話なんて言葉はなかったけど。第二次世界大戦...
pale asymmetry | 2021.04.16 Fri 21:30
JUGEMテーマ:戯言 例えばそれは、左手首の内側辺り。ピラミッドのような四角錐。色は鮮やかな瑠璃色だ。表面に銀河の様な輝きを纏っている。といってもそれはとても小さいから、眩しくもないし、目を奪われるような美しさも感じられない。そういうものだ。つまりそれが角だという話。角の話だ。最初からそのことしか話していない。 そういうものが、身体のあちらこちらに現れたりするとして、そういうものにどのくらい違和感を感じるものだろうか。一般論としての話。奇妙だと思うだろう。それはそうだろう。...
pale asymmetry | 2021.04.13 Tue 22:20
JUGEMテーマ:戯言 脚の長い獣が走る。枝垂れ桜の街道を。錆色の石畳は激しく波打ち、世界は起伏に富んでいるのだと、それこそが世界の基底事象なのだと告げているようだ。長い脚を振り回し、けれどその動きに一切の無駄はなく、獣は進む。追い風はない。全ての風は前から吹き、獣が生み出す風も、獣の前から吹いてくる。それは獣の風だったけれど、それを生み出した獣自身は、既に走り去った未来の獣なのだ。未来はこれから発生するわけではなく。過去と同じように既にあって、その獣自身も長い脚を振り回して走っ...
pale asymmetry | 2021.04.10 Sat 20:36
JUGEMテーマ:戯言 ざわついているのは気持ちではない。掻き乱されているわけでもない。熾っているのかと問われれば、それは確かにそうかも知れないけれど、私の奥底のさらに奥底の事象だから、それははっきりとは解らない。いや違うな。解ってはいるのだけど、胸を張って主張できないのだ。私自身が信じ切れていないと言うことだろうか。そんなことはない。ないと思う。やっぱり自信はない。 もっとも私に自信があろうとなかろうと、熾っているかどうかには関係はないだろう。つまりそれは私が熾しているわけ...
pale asymmetry | 2021.04.06 Tue 22:06
JUGEMテーマ:戯言 美しい顔立ちの男女が、手を繋いで森を歩いていた。見渡す限りの大樹の群。一見、そこに道はない。けれど、空気の流れが大樹の狭間を乱れてのたうち、それを辿るように促していた。美しい顔立ちの男女はそれを認識し、導かれて進んだ。 「ああ、あれは僕だね」 美しい顔立ちの男性が言う。 「隣にいるのは私だわ」 美しい顔立ちの女性が言う。つまり正面から二人の人物が歩いてきていて、それが美しい顔立ちの男女と全く相似の相貌をしていたのだ。どちらもそのまま導きの道を進...
pale asymmetry | 2021.04.02 Fri 21:22
JUGEMテーマ:戯言 遠い街のあなたを思うとき、私は仄かな香りを思い出す。少しだけ欠けた月を思い出す。ムシムシと湿った深夜を思い出す。そいうものたちを思い出しながら、空っぽの浴槽に横たわってみたりする。私は病んでいるのかも知れない。あの頃と同じように。あなたを苦しめたあの頃と。あなたを跪かせたあの夜と同じように。 このまま水のない浴槽で眠ってしまおうと思ったりしても、いくつもの記憶が私の後頭葉を鋭く刺激して、私を覚醒に留めようとするのだ。私自身を見失ってしまいたいのに、それ...
pale asymmetry | 2021.03.30 Tue 21:59
JUGEMテーマ:戯言 チェロを抱く。彼女のチェロを。遠い場所へ行ってしまった彼女のチェロを。その場所はこの場所と繋がってはいない。そこに行くためには、境界を越えなければいけない。それは容易ではない。少なくとも私には。苦しいのは嫌いだし、痛みは怖い。そういう想いを克服できない私には、境界を越えることなんて出来ない。 彼女は越えてしまった。 苦しみを受け入れたのだろうか。痛みを飲み込み、その中に裏返るように沈み込んだのだろうか。とにかく彼女は行ってしまった。もう戻ることはな...
pale asymmetry | 2021.03.29 Mon 21:29
JUGEMテーマ:戯言 弾丸は無回転で時空を切り裂き、現れた道がヴァイオレットの飛沫を上げる。あなたは真昼の月、私は未明の彗星。いつだってあなたは無頓着に笑う。いつまでも私は不機嫌な吐息。私の深海は今も静寂。無音のノイズが静脈を揺さぶる。あなたの水面はいつだって大波。砕ける前にライドする。 「転がれ」 叫ぶあなたは風の向こうを見つめてる。 「沈め」 呟く私は、目を閉じたまま。 「いいさ」 快活に笑うあなたの背骨。 「知らない」 私は囁き冷気を掻きむしる。 ...
pale asymmetry | 2021.03.25 Thu 21:12
JUGEMテーマ:戯言 あなたは時々スカラベに変身してしまうので、私は困ってしまう。けれどスカラベのあなたはとても綺麗だから、根本的な解決法を見つけ出そうとは思えないの。高貴な紫に輝くスカラベ。輝きの底には煌めきが沈んでいる。抱きかかえるのにちょうど良い大きさ。あなた自身も解っているのか、スカラベのあなたは私の懐に潜り込もうとする。私の内側にあなたの理想とする宇宙が存在していると確信しているようだ。スカラベのあなたは温かい。金属質な見た目なのに、伴侶動物のように温かい。だから私は...
pale asymmetry | 2021.03.21 Sun 20:48
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