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JUGEMテーマ:戯言 時折、歩いていると何気なく自分の螺子を見つけることがある。アスファルトの路面に落っこちているのだ。強い南風が吹いていたりすると、僅かに揺れていることもある。でも転がっていくことはない。基本的に居心地よさそうに、日差しの強い日などは温かそうに横たわっているのだ。 いつ落としたのだろう。と、その場でしゃがみ込んで考えてみたりする。そしてこの場所を通るのは初めてであることに気づく。たった今落ちたわけではない。それは確かなことだと思われるから、どこかで私から落...
pale asymmetry | 2021.03.16 Tue 22:01
JUGEMテーマ:戯言 間に合わせの鎧はボロボロだ。それはもう流血を紛らわすだけの役にしか立っていない。それでも私の中の少年は結構けなげで、神にひるむことなく両脚を踏ん張って立ち尽くしている。私には決して出来ないことだ。だから羨ましい。そう素直に思う。思うだけで、何の手助けも出来ないけれど。 飛び散った鮮血を浴びて、私の中の少女は巨大化する。彼女は神になりたいのだ。全知全能の存在として、世界を薙ぎ払いたいのだ。あるいは業火で焼き尽くしたいのだ。世界というものがどういうものかを...
pale asymmetry | 2021.03.15 Mon 21:06
JUGEMテーマ:戯言 仕事から家に戻ると、テーブルの真ん中にカエルがいて、私を見つめていた。テーブルはリビングの真ん中にあって、それはざらついた灰色の丸テーブル。カエルは鮮やかなブルーだった。私の掌よりもずいぶんと小さい。カエルには詳しくないので種名は解らないけれど、何だか非現実的なカエルに見えた。色のせいだろうか、それとも雰囲気のせいだろうか。あるいは私の心持ちのせいかもしれない。 「ここが世界の真ん中というわけではないよ」 カエルが言う。幼い少年のような声だ。 「だ...
pale asymmetry | 2021.03.10 Wed 21:20
JUGEMテーマ:戯言 忘れてしまったことを、取り戻すことはもう出来ない。何を忘れてしまったのかを思い出すことが出来ない。忘れてしまったということさえ、もうすぐ忘れてしまうだろう。平坦な気持ちだけを抱えて、変化のない日常を嘆くだろう。大きなものと静かに向き合いたいだけなのに、煩雑な手続きが山積みになって立ち塞がったりする。イライラしたりはしないけれど、もちろんそれを心地いよいと感じるわけもない。というか、イライラしないのは私のキャパシティが大きいからではなくて、逆に小さすぎて常に...
pale asymmetry | 2021.03.09 Tue 21:43
JUGEMテーマ:戯言 「扉の話をしようと思う」 彼は煙草に火をつけながら言う。この部屋には灰皿がないので、適当な皿を差し出す。彼はその皿の模様に見入ってから、少し首を傾げた。そこに灰を落とすと、選択を誤って間違った並行世界へとトリップしてしまうのではないかと恐れたように感じた。 「私は窓の話がしたいのよ」 冷蔵庫からメロンを出し、半分に切ってスプーンで食べ始める。この部屋にはテーブルがなかったので、メロンは床に直接置いた。自然と私は顔を床に近づけることになり、獣のような...
pale asymmetry | 2021.03.08 Mon 21:25
JUGEMテーマ:戯言 些細なインフォメーションに気が向いてしまう。そればかりに意識が囚われて、私の奥底に種子が発生するのだ。ガラスが粉砕するような音が響いて、といってもそれが実際の音として響いているわけではなく、幻の響きに過ぎないのだけれど、とにかく響いて発芽するのだ。それはタケノコみたいな、角のような何か。急速に成長して、些細な一点を貫いて、さらに私の意識を捕らえて放さない。些細なインフォメーションが貫く些細な一点は、私の核の中心から少しだけずれた一点。私の全ての関節から力が...
pale asymmetry | 2021.03.05 Fri 21:43
JUGEMテーマ:戯言 「全力で走れ」 アドボードが私に命令する。林立するビルディングの群が、皆王冠のようにアドボードを戴き、その全てが私に命令するのだ。 「全力で走れ。手を抜くな。走り続けろ」 無音の声で、私を撃ち抜くのだ。機関銃のように。その弾丸を避けることなんて出来ないけれど、私は決して走るものかと軽やかに口笛を吹いてみたり。けれど気がつくと小走りで人の波に追いつこうとしているのだ。いけないいけない、誰かのシナリオに支配されそうだ。いや支配されたって構わないのだけれ...
pale asymmetry | 2021.03.04 Thu 21:10
私は人間だ。 人間であるはずだ。 そんな超然とした事実ですらもはや私のアイデンティティを証明することはできなくなった。 味方であるはずの同胞に背後から撃たれたからだ。 私はどうやら彼らの仲間ではなかったらしい。 何かをなそうとするたび潰され詰られ打ち捨てられた手足は力を入れるたびに傷み、 もはやこの生命のひしめく空間に、私が息をつける場所は存在しない。 皆と同じようにできないお前が悪いのだと、呪いのような誰か...
たまに浮上する | 2021.03.04 Thu 18:39
JUGEMテーマ:戯言 私が腐った書籍だということを知っているのは、私だけだ。周囲の人は誰一人として知らない。それはつまり、誰一人私の存在そのものを知らないということだ。だから私がどのような存在なのかなど知るはずもない。私は腐った書籍で、もう表紙と全てのページが張り付いてしまっていて、開くことも出来ない。一ページも開くことが出来ないから、そこに記述されている文章は全て無意味だ。ぎっしりと詰まった文字は、誰にも届かない。私はただ誰にも知られることなく、朽ちた状態からさらに朽ちていく...
pale asymmetry | 2021.03.01 Mon 22:14
JUGEMテーマ:戯言 「マッハで移動しているのは、あなたの脳天気な電気信号だけよ」 突然部屋に入ってきたロボットは、頭部の小さなスピーカーからそんなセリフを吐き出した。少し嗄れていたけれど、女性の声だと解った。直進力の強すぎる女性の声だと、僕には思われた。そのロボットは薄いピンク色のボディで、簡素な身体に対して両手の指だけが妙に精巧に出来ていた。その十本の指を忙しなく動かし続けている。何かを操作しているかのように。透明なキーボードやスイッチを弾いているように。あるいはレバーや...
pale asymmetry | 2021.02.26 Fri 22:10
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