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睡蓮 44

仕事が一段落したジャンはいつものごとく、あのパブへ寄った。勿論無精髭に血走った目、クマのある顔で、である。 「ビールね。」 席につくと、いつものウェイトレスがジョッキを1つ置いていった。 「あっ、そうそう、あの彼女来てるわよ。」 あの彼女? ジャンはジョッキを持った手を止め、問いかけるように片眉をあげた。 「あなたが間違って捕まえたあのこよ。」 間違って捕まえたって・・・スーレンか? あれから何度か大学の門まで行ったのだが、守衛ににらまれるわ、学生たちからも変な目でみられるわ、で...

さくらのもり | 2008.01.23 Wed 23:43

睡蓮 43

3日間にわたって行われた展示会は無事終了した。 黎子があの手この手で集客数を伸ばし、日本のブースは他国のそれと比べるとかなり賑わっていた。着物は3日間変わらずとも睡蓮の髪型、帯の結び方は毎回違っていた。その帯を見にやってくる客もいたくらいだ。 「これで終わりかと思うとなんだか寂しいですね。」  睡蓮は帯をといてもらい、着ていた着物を脱ぐと黎子に手渡した。 「日本にはいつ戻る予定なの?」 黎子は着物をたたみながら聞いた。 「去年の8月末に来たばかりだし、せめて2年は勉強しようと思ってる...

さくらのもり | 2008.01.23 Wed 23:40

睡蓮 42

出口まで一緒に来てくれると助かる、というルカを睡蓮は出口で見送った。 睡蓮と一緒ならば、ブースごとに止められることなく―特に女性―出口までたどり着けるからだ。 「じゃ、またね。気をつけてね。」  睡蓮は振袖を着ていてもかまわずに手を振る。 それに答えるようにルカも手を振った。  手を振った・・・俺が? エンジンをかけ、車内がぬくもるまで睡蓮とのやり取りをルカは思い出していた。 睡蓮が振るからつられて振りかえしただけだと思うことにした。誰かに手を振るなんて、一体いつ以来だろう。 ...

さくらのもり | 2008.01.21 Mon 22:14

第二十四幕 「キャッチ!」

週末は客の多い我らがチョッパーズ だが平日は常連しか店に現れず ぼ〜っとしながら携帯をいじっているだけで 給料をもらうのは若干心が痛むのだ。 「よし、久しぶりに行くか!」 と立ち上がる竜馬。 ホストコート(ドンキで5千円)を羽織り 軍団を引き連れて聖地・歌舞伎町へ向かう 2丁目から歌舞伎町まではおよそ10分ほどだが そこまでの道のりが長く、熱い視線も感じる2丁目軍団 当時・ドンキホーテの前はキャッチの溜まり場だった 女の子が10m歩けば10人のホストくんが声をかけてくる 駅まで辿り着くの...

映画青年銀二ノ二丁目劇場 | 2008.01.21 Mon 01:09

出会い

JUGEMテーマ:恋愛小説 あたし(さこ)27歳。 大好きなあの人(ゆうき)30歳。 自分の中にこんなに乙女で切ない恋心があるなんて知らなかった。 人を愛することがこんなに幸せで、暖かい気持ちになるなんて知らなかった。 ゆうきに出会うまでは。

行こう。何処までも。 | 2008.01.20 Sun 22:05

第二十三幕 「怒れる女」

今夜は代表の常連客の一人キツネ女ことリカの話をしよう リカはもう一人のおなじみ狸女アケミとは性格もスタイルの正反対 モデルのようなスラッとした足と長い髪 目は細く鋭い、時々かけるメガネがよく似合う しかし性格が問題アリ、つねにイライラしていて かなりのヘビースモーカーで、その煙は頭からのぼる湯気のようにたちこめる 相手をするのもベテランのツネさんとシンさん いつも同じ話題で盛り上がり、ビールを軽く10本飲み干す 人を寄せ付けないオーラが漂う20代前半にも30代後半に見える女だ 今夜はツネ...

映画青年銀二ノ二丁目劇場 | 2008.01.18 Fri 15:29

睡蓮 41

睡蓮が家を出た頃、本宅で起きていたのはやはり彼女の読みどおりルカだった。 ルカは1枚のチケットを見ていた。仕事関係でもらったそれは、ちょうどその日が開催初日だ。 仕事の合間に見に行けるか・・・ 財布にチケットをなおすと、もう一杯コーヒーを飲むべく立ち上がった。 しかし、あいつらはまだ起きてこないのか? キースが起きてきたのはルカがフィルターを替え、粉を量り直し、新たにポット一杯にコーヒーを作ったときだった。 「おはよう。」 「あぁ、おはよう。」 あれ、ラモンは? いつもなら...

さくらのもり | 2008.01.16 Wed 22:05

クリスマス短編小説「10年越しのプレゼント」 あとがき

 昨年クリスマスにPCサイトに公開した短編小説「10年越しのプレゼント」のあとがきです。年末年始のゴタゴタで、こんなに引きずってしまいました。  読まれたい方は、下をクリックして、どうぞ。(結構、長いです。)

ポエムズ 雑記 | 2008.01.14 Mon 01:08

睡蓮 39

「そういえばさ、今日の昼に変な男が大学の前にいたんだ。」 「変な男?変質者か何か?」 そういった類の変な男ではない、とカークは首を振った。 「子供みたいな学生はいないか?って聞いてきたんだ。おかしいと思わないか?だってその男から見たら俺たち学生はみんな子供じゃないか。学生全員が対象になりそうなもんだろ。選択肢広すぎなんだよな。」 子供みたいな学生を大学前で捜すって、そりゃまたすごい人捜しの仕方だわね。 睡蓮は口には出さず、カークが話を続けるのを聴いていた。 「俺から見たら子供って...

さくらのもり | 2008.01.13 Sun 16:27

睡蓮 38

カークが車を発進させようとした瞬間、睡蓮は忘れ物に気づいた。 「カーク、ちょっと待って!私、忘れ物してきた・・・降りなきゃ・・・」 待っておこうか?と言うカークにキースも頷く。 「ううん。先に荷物だけ持って行ってくれるかな?だって、忘れ物って自転車だもん。」  カークがキースと一緒に1度大学に戻り、車を取ってキース宅に行くのと同じくらいには家に着くはずだから、と言うと、睡蓮は車を降りた。 「じゃ、また後でね。荷物よろしくね。」 そう言って車を見送った。  自転車で幹線道路をこいで...

さくらのもり | 2008.01.13 Sun 16:24

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