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睡蓮 28

ルカは新年とはいえ、いつもどおりに起床し、コーヒーを淹れ、ここ数日読んでいた仕事関係の雑誌をめくっていた。 「俺の分もある?」 寝癖のついた髪をガシガシとかきながら、あくびまじりで起きてきたのはラモンだ。 「キースは?」 「隣の部屋で物音してたからそのうち降りてくるんじゃないか?」 これじゃないと目が覚めないよな、一日が始まらないよな、とラモンは火傷しそうなくらい熱々のコーヒーを飲んだ。 「おはよう。」 毎朝きちんと「おはよう」と言って降りてくるのはキースだけだ。ルカは大概...

さくらのもり | 2007.12.15 Sat 18:44

第十二幕 「最後の晩餐」

「薔薇は薔薇は〜美し〜く咲く〜♪」 竜馬の18番ベルサイユの薔薇が店内に響く 今宵の薔薇は美しい ローズ真理は今夜の獲物を探しているのだろうか 2丁目のホストは貧乏だ 歌舞伎町とは相場が違う 売り専という店もあるくらいだ 小金さえあれば安く男が買えるのだ 「お上手〜!アンタ、名前は?」 「どうも、竜馬って言います」 「あら、キレイな顔してるじゃなあい?」 「はあ、どうも」 「いらっしゃいませ〜」 店にやってきたのはローズ真理の友人ナオミ がっしりしたガタイに濃い化粧・・・ うーん、オカマだ...

映画青年銀二ノ二丁目劇場 | 2007.12.12 Wed 15:20

第十一幕 「黄金の薔薇」

今夜は何かが起こる そう感じたのは満月のせいなのか 月の引力に引き寄せられ、血が騒ぐのだというが 本当かもしれない。 深夜1時を回っても客は誰も来ない。 緊張感の切れたホストたちはイスをくっつけて横たわり 口が半開きのまま死んだ目をしている。 竜馬軍団は暇をもてあまし、カラオケの練習をはじめていた。 ショウさんがビートルズの「イエスタデイ」を歌い (なんと英語が堪能なのだ!) トミーがソフィアの「街」を歌い (完全になりきっているがちとウザイ) 銀二は尾崎豊の「僕が僕であるために」を歌った ...

映画青年銀二ノ二丁目劇場 | 2007.12.08 Sat 11:16

第十幕 「紫の涙」

震える手で焼酎ロックが溢れかえっている グラスを恐る恐る口元に運ぶ銀二 オカマの視線は銀二に集まる。 ここで逃げたら男が廃る 飲め、飲むんだ銀二! 目の前でオカマになりきっているショウさんや オカマになすがままにされているトミー 酔いつぶれ寸前の竜馬さん 俺は飲みます、グラス一杯の焼酎くらいなんだ! 深く息を吐き、一気にグラスに口をつける銀二 アルコールの匂いが鼻に飛び込む そう、銀二は酒に弱いのだ 「…これを飲んだら俺は…だがこのくらいでオカマに負けてたまるか」 一気に純度100%のア...

映画青年銀二ノ二丁目劇場 | 2007.12.06 Thu 09:23

第九幕 「黒船来襲」

竜馬軍団に入り、水を得た魚のように働く銀二 だが今夜、二丁目の洗礼を受ける。 夜も深まった怪しい満月の夜 彼女、いや、彼らはやってきた。 オカマ軍団だ 「あら〜久しぶり〜元気だったあ?」 ドラキュラに熱い濃厚なキスをぶちかますオカマのルナさん さすがのドラキュラもひきつった笑顔でお迎えする。 ルナさん率いるオカマ軍団は一丁目のショーパブで働いている 全員化粧は濃く、キャラも濃い。 銀二は男性相手に接客するのはこれが始めてだ。 「いらっしゃいませ」 温めのおしぼりを一人一人に手渡す銀二...

映画青年銀二ノ二丁目劇場 | 2007.12.04 Tue 23:35

第八幕 「それいけ銀二」

朝方まで飲み続け、愚痴をこぼすアケミの席に銀二は向かった 明らかに疲れの見える竜馬と、瀕死状態の軍団にとってその姿は神々しく見えた 「一杯いただいてよろしいですか?」 「うん、いいよ〜、うへへへ」 テーブルに肘をつき、股を広げて座っているアケミ ミニスカートからは綿のパンツがはみでている もう女の影もない。 「ちょっと聞いてよ〜、なんでアノ男あたしのとこより狐女の方に長く居るの〜」 「ハハ、それは気のせいですよ」 「・・・嘘」 アケミは小学生が持っているような 可愛らしい赤い腕時計を見せた...

映画青年銀二ノ二丁目劇場 | 2007.12.03 Mon 23:48

出会い?+トモヒロ+

  プルプルと携帯電話が机の上で震えている。 泉朋大は、携帯電話を取り上げ電話に出た。 「もしもし。。」 「個展手伝ってくれるんではなかったの?」 ちょっと怒った声で、小松千咲の声がする。 朋大は部屋の時計を見た。 午後2時過ぎ、約束は2時だった。 「悪い、」 朋大は携帯を切り車のキーを持って部屋の外に出た。    小松千咲の亡き父は、松永秀人という朋大が尊敬する画家の一人だった。  朋大は美大生。 今年4回生だ。 来年は大学院に進むつもりだが、卒業制作を今手がけている。 しかし、コレ...

Primavera | 2007.11.28 Wed 17:48

第七幕 「竜馬がゆく」

ジャニーズ系の顔立ちで身長は190超 モデルのようないでたちの竜馬はこの店では異質だった。 なぜ二丁目にこんなイケメンがいるのか!? 六本木の某有名ホストクラブで竜馬は働いていた。 指名は1、2位を争うほどだ。 初めて来た客は竜馬を必ず彼を指名する ・・・しかし二度目は無い。 「黙っていればお前は日本一のホストになれる。」 六本木の店長に言われた言葉だ。 しかし竜馬が黙っていられるはずがなかった。 この世界に入ったのは人生を楽しむためだ。 彼はつまらない日常にうんざりしていた。 とことん...

映画青年銀二ノ二丁目劇場 | 2007.11.27 Tue 11:31

第六幕 「二人の女」

深夜2時を回り、落ち着きを見せ始めた店内 ゆっくりとドアが開き、入って来たのは スラッとした体型に茶色いロング。狐目の20代後半の女性。 リカさんだ。 「いらっしゃいませ〜」 ツネとシンがさっそうと駆け寄り、黒いコートを受け取り席へ案内する。 「銀二」 目であの女のとこ行け、とアイコンタクトを送るドラキュラ。 酒を一気に飲みほし、キョウコのグラスに軽くグラスで挨拶し席を立つ銀二。 「一杯いただいてもよろしいですか?」 不機嫌そうにタバコに火をつけるリカ。 「はじめまして。銀二です」 「ビ...

映画青年銀二ノ二丁目劇場 | 2007.11.24 Sat 22:46

桜 1

bmg,gmb---scene1  市内でも歴史のあるこの学校には、かなりの樹齢を経ただろう立派な枝振りの桜がたくさん植えられている。校門から校舎の入り口まで続く通路の脇に、またグラウンドをぐるりと取り囲むように桜の木が立ち並ぶ。  北国の長く厳しい冬が開け、うんざりするほど積もった雪がようやく日陰にわずか残るだけになったころ。桜の木は、それまで雪にしだらせていた枝をぴんと張りだし、淡いピンクの花で一斉に着飾る。この学校はそれは地味で無骨な建築物なのだが、この春の一瞬だけはあわく霞をまとって、ぼんやり...

BmG,GmB | 2007.11.24 Sat 00:39

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