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JUGEMテーマ:自作小説 見渡す限り氷の景色を歩く。 流氷と吹雪と寒空に覆われて、全てがホワイトグレーに染まっている。 私は白い息で手を暖めた。 「寒い・・・・。」 尻尾だけタヌキに化けてモフモフに膨らませる。 それをグルっと身体に巻きつけると楽になった。 毛先はすぐに白く染まっていくけど、中まで凍るわけじゃない。 これで寒さは防げる。だけど見渡す限り氷の景色が変わるわけじゃない。 私は一人立ち尽くし、じっと辺りを見渡した。 「いない。でも必ずどこかに・・・・。」 しばらく歩く。 流氷を避...
SANNI YAKAOO | 2021.07.29 Thu 11:26
JUGEMテーマ:自作小説 私は空に浮かんでいた。 桜の花びらで出来たベッドに寝転んで、美しい景色の上で寛いでいる。 隣には雲が流れていて、空は真っ白に輝いていた。 それに暖かい春の風がとっても気持ちよくて、このまま目を閉じてずっと寝ていたい。 《ここは楽園だ・・・・どんな不安も心配も消えて・・・・すべてが楽になっていく・・・・。》 もうなんでもいい・・・なにがどうなっても私には関係ない・・・・。 だってここは何一つ心配事のない世界で、こうしてずっとずっと永遠に気持ちよく昼寝をしていられ・・...
SANNI YAKAOO | 2021.07.28 Wed 10:50
JUGEMテーマ:自作小説 どんなに急いでも間に合わないことだってある。 「なにあれ・・・気味が悪い・・・・。」 かつて桜が立っていた場所に、真っ黒に染まった大木がそびえていた。 空に届くほど巨大で、山よりずっと高い。 それに太い根っこをあちこち伸ばして、川の水を吸い上げていた。 そのせいで川はほとんど干上がってしまって、大地は砂漠みたいに草一本生えていなかった。 空は分厚い雲に覆われて、バリバリと雷が響いている。 「遅かった・・・せっかくパワーアップして飛んで来たのに・・・・。」 この大木...
SANNI YAKAOO | 2021.07.27 Tue 11:15
JUGEMテーマ:自作小説 山の神様は気難しい。 「お願いがあるんです!山の神様の霊力を分けて下さい!」ってお願いしたら、最初はなんの返事もなかった。 でも諦めずにお願いし続けていると、『騒がしいタヌキめ』と声がした。 『儂は神だぞ。いちいち霊獣の頼みを聞いていたらどうなる?次から次へと頼みごとをされて、おちおち寝てもいられない。』 「だ、だけど霊獣界が危ないんです!そうなったら神様だって困るでしょ?」 『舐めてもらっては困るな。たかだか霊獣の禍神が暴れても、儂にはどうってことはない。 それ...
SANNI YAKAOO | 2021.07.25 Sun 11:09
JUGEMテーマ:自作小説 「もう諦めろ。」 岩みたいに大きな亀が眠そうな目で呟く。 ここはいつも修行しているあの山。 相変わらず緑が綺麗で、滝の音は心地いいし、ゆるい風が気持ちいい。 でもそんな美しい景色とは正反対に、サクラ君の心はささくれ立っていた。 「なぜだ!なぜ協力してくれない!?」 人間に化けたサクラ君が必死の形相で詰め寄る。 さっきから何度もお願いしているけど、万年亀さんは「ダメだ」と首を振るばかりだった。 「お前の気持ちは分かるが無理はものは無理だ。もう桜の龍のことは諦めろ。」...
SANNI YAKAOO | 2021.07.24 Sat 10:59
JUGEMテーマ:自作小説 どんなに長く続くモノでも、いつか終わりを迎える。 永遠って言葉にするのは簡単だけど、実際はとても難しい。 だってどんなに完璧にやろうとしたって、いつ予想もしない出来事が起きるか分からない。 最初は小さなほころびから始まって、気づけば大木を倒してしまうほどのトラブルに発展するかもしれないから。 私は藁のベッドに寝たまま、沼の龍から聞いた話をした。 サクラ君は表情を変えずにずっと空を見上げたままだった。 私はまだまだ疲れが回復しないから、喋るのが辛くなって口を閉じた。...
SANNI YAKAOO | 2021.07.23 Fri 12:19
JUGEMテーマ:自作小説 霊獣にとって霊力はなにより大事なものだ。 とくに私みたいに身体の弱い霊獣だと、霊力の消耗は体力の消耗よりずっと疲れる。 いくら内に宿る霊力が大きいからって、ジュースでも飲むみたいにゴクゴク吸われたらたまったものじゃない。 立つどころか意識さえ保てなくなる。 私はしばらく気絶していて、目を覚ましたあともまだ気を失いそうなほどフラフラだった。 そっと胸に手を当てると、地返しの玉の鼓動が伝わってくる。 どうやらまだ私の中にあるみたいだ。けどもう霊力を吸われている感じはし...
SANNI YAKAOO | 2021.07.22 Thu 11:28
JUGEMテーマ:自作小説 疲れてる時っていうのは布団に入った瞬間に夢に落ちてしまう。 昨日はずっと緊張と不安に包まれていたから、布団に横になるなり眠ってしまった。 身体はすごくダルいし、心も重いし。 昨日は本当に大変だった。よく無事に帰ってこられたなって思う。 お母さんの言う通り、私とサクラ君だけじゃこうはいなかったかもしれない。 沼の龍が手を貸してくれたから、どうにかこうにか無事でいられたんだ。 ・・・・疲れと安堵のせいで、私は泥みたいに眠っていた。 そして夢を見た。夢とは思えないほど鮮...
SANNI YAKAOO | 2021.07.21 Wed 11:25
JUGEMテーマ:自作小説 家に戻って来たのは夜が明ける少し前のことだった。 遠い空がじょじょに青く染まっていく。 とても気持ちの良い朝けだけど、私の家の前では修羅場が起きていた。 「もうやめて!」 人間に化けたお父さんの背中にしがみつき、グイっと引っ張った。 なぜならお父さんは怒り狂っているからだ。 石みたいな拳には血管が浮いていて、しがみついた身体は岩みたいなゴッツイ筋肉で硬くなっている。 そんなお父さんの目の前にはサクラ君がいて、顔にたくさんの痣を作っていた。 鼻血は出てるし口も切れて...
SANNI YAKAOO | 2021.07.20 Tue 11:41
JUGEMテーマ:自作小説 目の前に木屑が散らばっている。 盛り土みたいに小さな山になっていて、風が吹くとパラパラと流れていく。 サクラ君は木屑を掬い、懐かしむように匂いを嗅いでいる。 私は空を見上げ、さっきまでここに立っていた桜の木を思い浮かべた。 《外へ出た瞬間、ジェンガみたいにボロボロ崩れちゃった。もうほんとに限界だったんだ・・・・。》 どうして桜の龍が自分から死を選んだのか? その理由を沼の龍から聞いていたから、土に還ることが出来てほんとによかったと思ってる。 寿命のない龍だからこそ...
SANNI YAKAOO | 2021.07.18 Sun 13:45
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