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「……テオドア。君の重責も苦悩も、私は一緒に背負ってはやれない。君の言うとおり、ブリストンに行くが良い。そうして、君のその重責を共感できる友人と一緒に分かち合えば良い」 「なにを……」 何を言われているのか、もちろんテオドアは分かっているだろう。それでも茫然と自分を見つめるテオドアを、ウィリアムは哀れむように見つめた。 「確かに私は君と同じように、爵位の重さや偉大なる祖先への重責に潰されそうだった事もある。君と二人で互いに励まし合い、切磋琢磨し合ってきたね」 ...
真昼の月 | 2024.10.20 Sun 03:04
皆様〜、先週はお休みをいただきありがとうございました! ちょっとまだバタバタしておりますが、できるだけお休みの内容に頑張ります! イヌ吉拝 =============== 「ウィリアム、君はきっとほんの少し疲れているんだ。これから先、フィッツガード伯爵家を守っていくことにおののいているのかもしれないな。だから、ヒースのような外国人の男の手を取れば、歴史あるフィッツガードという重圧から逃げられると、そう思っているのだろう。...
真昼の月 | 2024.10.13 Sun 05:50
皆様、いつも『真昼の月」に遊びに来て下さり、ありがとうございます。 ちょっと今週は色々とプライベートがたてこんでおりまして、今週の更新はお休みさせて下さい💦💦 また来週ぜひ遊びに来て下さると嬉しいです! よろしくお願いします!!! イヌ吉拝 いつもポチありがとうございます!とても励みになります! ランキングも頑張っておりますので、もし良ければ村の方もポチっていただけると喜びます...
真昼の月 | 2024.10.05 Sat 20:23
「どういうつもりだ! 私は認めないぞ!」 バーマストン伯爵がサロンを出て行くなり、テオドアはそう牙を剥いた。普段感情を表に出さないようにと己を律しているテオドアだが、事この事に関しては、その仮面をかなぐり捨てるらしい。 だがそれに対して、ウィリアムはどこまでも冷静だった。 「父の了解が得られているのに、何故君の了解が必要ある?」 穏やかな声。それがまるでテオドアを相手にしていないように感じられるのか、テオドアは余計に声を大きくした。 「ヒースなんかの為に、君は自分の名誉や誇りを...
真昼の月 | 2024.09.29 Sun 04:45
「父上! 今はそのような焼き物の話などより、ウィリアムの話でしょう!? フィッツガードの正当な後継者であるウィリアムが、日本人の男などと一緒に国を出ようというのですよ! ここで我々が彼を正しき道に導かねば、誰がそれをできるというのですか!」 テオドアには父が信じられなかった。 フィッツガード伯爵が許しているから何だというのだ。伯爵は後妻の日本人を優遇し、貴族令嬢だった亡き夫人の名誉を傷つけているではないか。夫人が愛したイングリッシュガーデンを日本庭園に造り替え、茶室を作り...
真昼の月 | 2024.09.22 Sun 03:56
「その台詞は私にではなく、トーマスにでも言ってやると良い」 「え?」 伯爵の言葉の意味を図りかねている久義に向かって、伯爵はもう一度肩を竦めて見せた。 「もしも君が当家の使用人だったとしても、人事権は執事と家政婦にあり、私が口を挟む物ではない。それ以前に君は当家の使用人ではなく、バーマストン社のティールームに所属する職人だ。辞表は既に受理されている。こちらも私が関与するものではない」 伯爵は感情の見えない顔でそう言うと、もう一度ウィリアムに視線をやっ...
真昼の月 | 2024.09.15 Sun 04:23
サロンルームにはバーマストン伯爵とその息子のテオドアが待ち構えていた。久義は小さくぺこりと頭を下げてソファの端に座ろうとしたが、もちろんそんなことをウィリアムが許すはずもなく、堂々と真ん中を2人で共有する。 ソファに座ると馴染みのメイドがコーヒーと簡単なお菓子をセットしていく。今日は男性のみのせいか、ティールームのスイーツではなく、ベルギー産のチョコが添えられていた。 「それで、どこを回って来たのかね」 伯爵は、ウィリアムが久義を追っていったことを知っているのかいないのか、そんな...
真昼の月 | 2024.09.08 Sun 03:30
◇◇◇ ◇◇◇ その城は、久義には見慣れた城の筈なのに、ずいぶんと大きく聳え立つように見えた。 暗い雲を背負って立つ名城、ローズウッド城。イングランドの歴史に名高い名門バーマストン伯爵家の居城であり、世界に名高い陶磁器メーカーであるバーマストンの庭園美術館である。 久義は2歳という幼さで日本を離れ、この城で育ってきた。毎年日本に帰ってはいたが、久義はここで育ち、ここが彼の故郷(ふるさと)と言っても間違いはあるまい。 その城を、久義は全く違う目で見つめていた。 この城...
真昼の月 | 2024.09.01 Sun 06:16
◇◇◇ ◇◇◇ その日の夜は、真理江から熱心にフィッツガード邸に泊まるようにと勧められ、とうとう真理江は二人を留め置くことに成功した。 「せっかくなんだから、2人は2人で過ごしたいだろう?」 伯爵はそう言ってウィリアム達がよそに宿を取るならそれで良いと言ってくれたが、真理江は一歩も譲らなかった。 「だって、ここはウィリアムが育ったおうちなのよ? そりゃいつでも2人はここに帰ってきても良いけど、もしこれから2人が日本に行っちゃうなら、そんなしょっちゅうここに帰って来れる訳じ...
真昼の月 | 2024.08.25 Sun 01:56
皆様、先週はお休みをいただき、また、ご心配おかけしてすいませんでした。 もうしっかり良くくなりましたので、またよろしくお願いします。 ヌ吉拝 ------------------------- 父の顔を見る。ずいぶんと年を取った父の顔を。 そうして自分も、自分が思っている以上に年を取ったのだ。 ────父の庇護下にいる子供では、いられないほどに────。 「……父上。ありがとうございます……」 フィッツガード...
真昼の月 | 2024.08.18 Sun 04:05
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