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(R15)です。当blogは18才未満の方は読んでいないはずですが、苦手な方、生理的に無理な方が読んでしまわないように、一応たたみます。大丈夫おっけーどんとこい!という方だけ「続きを読む」を押すか、もしくは下にスクロールしてお読み下さい。 -----------------------------
真昼の月 | 2024.04.20 Sat 22:34
テオドアも、そうしてもちろんウィリアムも人知れぬ努力を積み上げてきた。日本人の久義からすると横柄で威圧的に見えるテオドアの態度だって、あれは貴族であろうとする彼の努力で作られた物なのだ。 それをこの人は、まるで何でも無い事のように弟に譲ろうと言う。そうあるべきと育てられてきた全ての努力をなかった物のようにして。 「……それだけ、君が大切なんだよ」 ウィリアムの唇が、久義の髪の間に埋められる。優しい抱擁。そのまま何度も何度も啄むように、ウィリアムは久義の顔や髪にキスを降...
真昼の月 | 2024.04.14 Sun 02:35
貴族としての体面を常に気にしていた、古いタイプの貴族に育てられた母は、自分が育てられたようにしか自分の子供を育てる方法を知らなかった。子供が生まれたら乳母に預け、長ずればパブリックスクールに入れて高等教育を受けさせる。たまの休暇に帰ってきても、慈善活動や懇親会、パーティーなどの社交に精を出し……それが、貴族夫人の仕事なのだからと微笑んでいた。 それでも、ウィリアムが家に帰ってくる時には、できるだけ一緒にいてくれたと思う。父の鯉に負けないようにと、2人で金魚を育てて。母と...
真昼の月 | 2024.04.07 Sun 03:13
「さぁ、もう分かっただろう?ヒースが気にしなければならないようなことは何もないんだ。父だって、愛しい新妻との息子を手元に置いて跡を継がせる事に歓びを見いだす可能性は高いと思うぞ?」 「そんな筈……!」 「そう?でも、自分の気持ちに従って家を出て行った息子と、目の前で可愛らしく育っていく息子なら、目の前の息子が可愛いと思わないか?彼には安心させたい母親だって目の前にいる訳だしね」 そう言ってウィリアムは、ヒースをそっと抱きしめた。 「だから、ヒースが気に病む必要はないんだ...
真昼の月 | 2024.03.23 Sat 22:26
◇◇◇ ◇◇◇ 窓の外で、木の枝からだろうか、雪が滑り落ちる音がした。そんな音が耳に入るほど、この村の夜は静かだ。 村の中に小さな呑み屋が無い訳では無いのだが、辺りの静寂を破るような大声を出す人はいない。 外は暗くて、分厚い雲がかかっているのだろう、月灯りも星灯りも見えない。そんな静かな夜のなか、久義はウィリアムと向かい合って座っていた。 祖父の家の二階の自室。一階の祖父母は朝も夜も早いから、もうねむっているだろう。先程まで大勢いた従兄弟や弟子達も、今は自分の家や離れ...
真昼の月 | 2024.03.17 Sun 03:33
『待ってくれ!少なくともウィルはその計画から外してくれ!ウィルは由緒ある貴族の跡取りなんだよ!将来は伯爵家を継いで領地を運営しないといけないんだ!日本でそんな事をしている暇なんてないんだよ!』 必死な久義の声を、しかしその場の一同は何でも無いことのように笑い飛ばした。 『貴族だって自分のしたいことをしたって良いんだろう?』 『そうだよ。ちゃーちゃんは何でも真面目に考えすぎ!今何世紀だって思ってるの?うちのじい様達がよそもんに窯使わせてやる時代だよ?』 それはどんな時代だ、...
真昼の月 | 2024.03.09 Sat 22:06
◇◇◇ ◇◇◇ こたつの中で、一緒にテレビを見ながらミカンを食べる。ここでは皆が当たり前にしていることが、久義やウィリアムにとっては奇跡の瞬間だ。 こたつという人類史上に輝く発明(いや中東や中央アジアにもあるけど)、ミカンというナイフのいらない夢のように甘いオレンジ。目の前には好きな人。素晴らしい。もうこれだけで一生ここに住みたくなる。 おばあちゃんと一緒にテレビを見ているウィリアムに、親戚の子達が英語を教えてもらっている。ウィリアムは何だかすっかりこの村に馴染んでいた...
真昼の月 | 2024.02.25 Sun 03:23
◇◇◇ ◇◇◇ 深い雪の中を、久義とウィリアムはゆっくりと歩いていた。この村はとても居心地が良いが、二人でいる時間が少し少ない。どちらからそう言った訳ではないが、今日は何となく、二人だけでいたかった。 「寒くない?」 「いいや。だが、日本の雪深いのには驚いたな」 「そうだね。日本って、世界でも有数の豪雪地帯を持っているけど、まぁ、ここはまだそれほどでもないかな。真理江夫人の実家の新潟とか、北陸はもっとすごいだろ?」 「ああ、前にうっかり新潟に冬に行ってしまってすご...
真昼の月 | 2024.02.18 Sun 02:50
◇◇◇ ◇◇◇ 祖父に「話し合う時間が必要だ」と言われたのには、きっと、何か理由があるのだろう。ほんの少しウィルに会っただけの祖父にすら見えて、自分には見えない物があるのかもしれない。そう思うと、久義ももうウィリアムに「帰れ」とは言えなくなった。 本当は、自分だって例年ならとっくにイギリスに帰っている時期だ。それなのに久義は、ウィリアムと共にいられるこの時間を慈しむように、いつまでもここから動けずにいる。 伊嶋での時間はとても優しく、ゆっくりと動いていた。 ウィリアム...
真昼の月 | 2024.02.11 Sun 03:14
『初めまして。突然の訪問、は、失礼しました。ウィリアム・オーガスタ=オブライエンです。父は伯爵ですけれども、私は違います。私は会社で働いているなのでさら……サラリーマン?です。私はイギリスでヒースと友達になりました。どぞよろしくお願いします』 そう言ってウィリアムが頭を下げると、隣の部屋からどよめきが起きた。 『おい、子爵って貴族だろ?貴族が正座してるぞ!』 『っていうか、日本語喋れるのか!』 『やば、私の英語より彼氏さんの日本語の方が絶対レベル高いよ!...
真昼の月 | 2024.02.04 Sun 00:19
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