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◇◇◇ ◇◇◇ 謳子からは、久義が東京に帰る事を、ちゃんとフィッツガード伯爵家にも知らせておけ、と言われていた。真理恵夫人が久義のお菓子を当てにしていると悪いから、その期間はイギリスにはいないちゃんと伝えておけと言うのだ。それは当然そうするべきだと分かってはいるが、久義はウィリアムの顔を思い出すと、どうしても連絡する手が遅くなった。 ……あんな別れ方をしたのだ。お互いに気まずいに決まっている。だが、何も言わずに日本に帰るような真似もできないだろう。 『テオドア...
真昼の月 | 2023.08.26 Sat 22:12
『ん〜、そうだけどさぁ。私いる?いらなくない?別にデザイナーの挨拶、いらなくない?クリスマスプレートは何ヶ月も前にデザイン搬入してるし、イベントの指示は十一月には終わってるじゃない?私いる?いなくても良くない?』 『当日チェックがあるだろ』 『そんなの私でなくても良くない?』 久義が日本に帰ってしまうせいか、この時期の母はいつもモチベが下がる。イギリスの……いや、キリスト教国にっとてのクリスマスは、当然ながら宗教祭事だ。イギリスではみんなクリスマスに合わせて帰省して、家族揃...
真昼の月 | 2023.08.20 Sun 02:24
皆様、いつも「真昼の月」に遊びに来て下さりありがとうございました! 8月1日に、当blogはありがたいことに開設10周年を迎えました! 御礼ページをアップしておりますので、まだ見ていないよ、という方はぜひ覗いてみて下さい! 開設10周年記念ぺーじはこちら!! >>>開設10周年ありがとうございます!! 今年の御礼小説は、大竹先生と設楽君です!久しぶりの二人に会いにきて下さると嬉しいです! それでは、『金魚の恋53』始まり始まりです!! ...
真昼の月 | 2023.08.05 Sat 23:36
皆様、コメントありがとうございます。 お返事はコメントをいただいた順に書いております。 先に書いていただいた方のリコメが下になっておりますので、もし自分へのレスがないな、と思われたら、下の方をググッとスクロールしていただけると嬉しいです。 イヌ吉拝 03:31:はるりん様 ご心配いただいてありがとうございます! すっかり元気になりました! はるりんさんもどうぞご自愛くださいませ! また今週から頑張りますので、また遊びに来てくださいませ! &nb...
真昼の月 | 2023.08.05 Sat 19:41
気がつくと、そこは辺り一面真っ白い空間だった。ふわふわして、なんだか天国みたいだ……と思ったとき、設楽は今自分が夢を見ているのだと気づいた。 そっか。夢か。 真っ白くて、ふわふわで、暖かくて、何だか幸せな場所だ。 「……って、あれ?え?ちょっと待って?……やべ。俺、もしかして死んだ!?ひょっとして、ここ、天国とか言う!?」 焦って辺りを見回したが、天国の扉のような物も、天使とか神様とか他の死んだ人とかも見当たらない。全く一人だ。 「嘘だろ&...
真昼の月 | 2023.08.01 Tue 22:01
皆様、いつも「真昼の月」に遊びに来てくださってありがとうございます! 10周年です!とうとう開設10周年を迎えました!! こんなに長い間、「真昼の月」を応援してくださりありがとうございます!! 昨年は時間が無くて開設ページにお礼イラストとか小説とか書けなかったので、本当に申し訳ありませんでした!! 今年は!今年はお話ありますのでよろしければぜひご覧下さいませ!! ということで、10周年お礼小説はこちらになります! >>>Happy 10'th Anniversary〜...
真昼の月 | 2023.08.01 Tue 22:01
目の前が赤くなるほど血が煮え滾っている。目の前のこの男は、友人の名誉と父の名誉を秤にかけて、父の名誉を踏みにじったのだ。 久義がテオドアを睨みつけると、テオドアは「何だその目は!!」と怒鳴りつけた。 「だいたいウィリアムもウィリアムだ!父親が東洋人などを後添いにしたことをあれほど憤慨していたのに、自分までお前なんかにうつつを抜かして!これだから────」 その後の言葉はさすがに飲み込んだようだ。それがいかに侮蔑的な言葉であったのか、推して計るべきだろう。テオドアはハッと正気に戻った...
真昼の月 | 2023.07.30 Sun 00:00
「お言葉ですが、金魚のティーセットは父の形見であり、完全に私の私物です」 久義が反論することは分かっていただろうに、テオドアは不愉快そうに目だけを上に向け、久義を睨みつけた。 「だからどうした。私が売れと言っているのだ」 「っ!」 その鋭い瞳に、いつもの久義なら一も二もなく「諾」と答えただろう。テオドアはバーマストン伯爵家の跡取りであり、正当な血を引く貴族である。幼い頃からこの城の中で育ってきた久義には、バーマストン伯爵家の人間の言葉に逆らうという概念がなかった。 だが。 ...
真昼の月 | 2023.07.22 Sat 22:23
◇◇◇ ◇◇◇ そこからどうやって帰ってきたのかよく覚えていない。まぁ無事に帰ってきたのだから、おかしな運転はしなかったのだろう。 車を駐車場に停め、久義は報告の為に本館に顔を出した。玄関ホールを入ってすぐに執事のトーマスが現れる。久義を待っていたようだ。 「トーマスさん、遅くまですいません。ラッセル子爵を無事フィッツガード城にお送りしてきました」 「ご苦労様です、ヒース。ちゃんと残業としてつけておきますからね」 昔は奉公人は二十四時間勤務だったが、今は時代が違うの...
真昼の月 | 2023.07.15 Sat 18:58
◇◇◇ ◇◇◇ ウィリアムを降ろし、彼の姿が見えなくなるまで走ると、久義はノロノロと車を路肩に停めて、ハンドルに覆い被さるようにして溜息をついた。 どうして、こんなに息が苦しいんだろう。 ウィルが自分を思いやってくれる気持ちが痛くて、辛くて、どうしてこんなに泣きたくなるんだろう。 ウィルが言うように、ローズウッド城を出て……そんな事を考えた事もあった。だが、それはすぐに心の奥深い所に沈んでいった。 ローズウッド城を出て、どうする?ウィルのそばに行く?ロン...
真昼の月 | 2023.07.08 Sat 22:10
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