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◇◇◇ ◇◇◇ とにかく一度新居を見に来てくれと、寧音と大成に強引に連れ出されたのは、次の日曜だった。優吾からは同居するつもりがないならバシッと断れとは言われているが、大事な娘夫婦の新居を見ておきたい気持ちもあるし、まぁ、見に行くくらいなら、と、奏も軽い気持ちで出かけていった。 自分がLOKIのファンだという事は内緒にしておこう。日本にいる間位、仕事を忘れてのんびりしたいだろうし、彼の所属するブランドの品物を買える訳でもない、こんなしょぼいおっさんにファン...
真昼の月 | 2022.01.18 Tue 23:14
「なぁ、奏。お前だって少しは考えてるんだろう?彼女とか、婚活とかさ。大学辞めてから子育て一筋で、今までそんな余裕なかったのかもしれないけど、これからは一人になるんだしさ」 「それが、あんまりそういう気持ちもないんだよね」 メンチカツを箸でつつく奏に、優吾は太い溜息をついた。 「……お前さ、彼女いない歴イコール年齢だよな?」 「う……」 そのストレートな物言いに、思わずむせそうになってしまった。そんな恥ずかしいことを、いくら何でも直接言う...
真昼の月 | 2022.01.18 Tue 23:14
「……その見本市には、奏さんは一人で行くの?」 「いや、社長も含めて三、四人で。俺は児童書担当で、他にもジャンルによって担当が違うから、手分けして回るんだ」 「その優吾さんって人も行くのか?」 「優吾は国内の営業だから、居残りだよ。俺はドイツ語が喋れるから、便利に使われてるんだ」 「じゃあ日本にいるときは一緒の職場?」 何故だか大雅は優吾にこだわってやたらと訊いてくる。何がそんなにツボにはまっているのだろうか。よく分からないけれど、とにかく訊かれたことには素直に答...
真昼の月 | 2022.01.18 Tue 22:55
「お兄さんは、年の半分くらい海外なんですよね?」 奏の焦りにまるで気づいていないかのように、寧音が笑顔で大雅に話を向ける。 ……この美貌を前にしても、寧音の笑顔には緊張感がない。きっと寧音は、もう大雅のことを『大成の兄』として受け入れているのだろう。いや、この美貌を前にして、他の男に目が行かない娘は、正直偉いと思う。 「そう。仕事は色々あるからね。春夏コレクションと、秋冬コレクションのファッションウィークだけじゃなくて、その間にプレタのショーもあるし...
真昼の月 | 2022.01.17 Mon 22:38
◇◇◇ ◇◇◇ とにかく一度新居を見に来てくれと、寧音と大成に強引に連れ出されたのは、次の日曜だった。優吾からは同居するつもりがないならバシッと断れとは言われているが、大事な娘夫婦の新居を見ておきたい気持ちもあるし、まぁ、見に行くくらいなら、と、奏も軽い気持ちで出かけていった。 自分がLOKIのファンだという事は内緒にしておこう。日本にいる間位、仕事を忘れてのんびりしたいだろうし、彼の所属するブランドの品物を買える訳でもない、こんなしょぼいおっさんにファン...
真昼の月 | 2022.01.16 Sun 22:03
◇◇◇ ◇◇◇ 昼休み。食事を取りに外に出ようとしたら、ちょうど外回りから帰ってきた優吾に呼び止められ、一緒に食事を取ることになった。 出版社が立ち並ぶ神保町の大通りに面した社屋から、ほんの少し歩いたところにある定食屋に向かう。昼の時間からは少し遅い為に、店内は空いていて、すぐに席に案内された。 寧音が小さい頃は在宅で翻訳の仕事をしていた奏だが、寧音が中学に上がった頃からはオンサイト勤務となり、本社で翻訳以外の仕事も任されるようになった。社長は奏の翻訳の腕を買...
真昼の月 | 2022.01.16 Sun 10:50
「なぁ、奏。お前だって少しは考えてるんだろう?彼女とか、婚活とかさ。大学辞めてから子育て一筋で、今までそんな余裕なかったのかもしれないけど、これからは一人になるんだしさ」 「それが、あんまりそういう気持ちもないんだよね」 メンチカツを箸でつつく奏に、優吾は太い溜息をついた。 「……お前さ、彼女いない歴イコール年齢だよな?」 「う……」 そのストレートな物言いに、思わずむせそうになってしまった。そんな恥ずかしいことを、いくら何でも直接言う...
真昼の月 | 2022.01.15 Sat 22:06
話してみたらどうだ。寧音だけではなく、大成のことまで自分の子供のように包み込むあの包容力。大成が屈託無く『お父さん』と呼び、心の底から彼を父として慕っている様子に、驚きを隠せなかった。 日本では全く活動していないLOKIを知っていたのも驚きだったが、聞けば海外の書籍を翻訳・出版する会社に勤めているのだそうだ。年に数度はヨーロッパに出張に行くと言うから、ヨーロッパのファッションシーンに詳しいのも頷ける。 それなのに、変に馴れ馴れしかったり、すり寄ってこようとはしないあの距離...
真昼の月 | 2022.01.15 Sat 08:59
◇◇◇ ◇◇◇ 顔合わせからの帰り道。大雅は久しぶりに運転する愛車の感触を楽しんでいた。 「兄さん、なんか機嫌良いね。お父さんのこと、気に入った?」 「お父さんって、お前……。あの人いくつだ?俺とそう変わらないだろ?」 「残念。お父さんは今年三十八だから、兄さんより六つも年上だよ」 「へぇ?ま、六つ位なら、大した差でもないな」 大雅は先ほど会ったばかりの奏を思い出し、ニヤリと口角を上げた。 だいたい、大成から初めて話を...
真昼の月 | 2022.01.15 Sat 08:59
◇◇◇ ◇◇◇ 昼休み。食事を取りに外に出ようとしたら、ちょうど外回りから帰ってきた優吾に呼び止められ、一緒に食事を取ることになった。 出版社が立ち並ぶ神保町の大通りに面した社屋から、ほんの少し歩いたところにある定食屋に向かう。昼の時間からは少し遅い為に、店内は空いていて、すぐに席に案内された。 寧音が小さい頃は在宅で翻訳の仕事をしていた奏だが、寧音が中学に上がった頃からはオンサイト勤務となり、本社で翻訳以外の仕事も任されるようになった。社長は奏の翻訳の腕を買...
真昼の月 | 2022.01.14 Fri 22:02
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