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廉の帰省期間が、なぜか今年は長かった。 ステファノ祭の翌日には寮を出て、帰ってくるのは始業式の一日前。だって。家の都合でそうなったって、云ってたけど――。 別にそれはおかしなことじゃない。冬休みは短いし、年末年始挟んでるから帰省率は高いし、そんな生徒がほとんどだ。 だけど、あまり長く家に帰りたくない僕は、いつも三十一日に家に帰省して、三日には寮に戻ってくる。という最小限の帰省で、今までは廉もそれに合わせてくれていた。 卒業までもう三か月もない。少しでも多く二人で過ごした...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.22 Tue 23:45
「車、嫌いかな?」 アパートの扉を開けると、そこに陸が立っていた。何の前触れもなく。 「車って?」 聞き返した僕の息が白く拡散してゆく。お昼の2時過ぎ。明るい日差しの下にいても、肌を刺す冷たい空気に頬がちくちくする。 思わず肩を竦めて身震いした僕を見て、ぼろぼろのジーンズにスニーカー、コーデュロイのジャケットに長いウールのマフラーをぐるぐる巻きにした陸が笑った。 「今日は、この冬一番の冷え込みだって。夜には雪がちらつくかもって言ってたよ」 ふうん。と...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.22 Tue 18:47
『なぁ馨、星を、見に行こうか』 中等部二年の冬、十二月も半ばを過ぎた頃だったか、消灯時間をとうに過ぎた真夜中。いつものように眠れないでいた僕を、廉がそう誘った。 その頃の僕は持病とも言える不眠症がひどかった時期で、眠りも浅く、寝つきも悪かった。あの夢も定期的に見ていたし。 中等部の寄宿舎の、四人部屋。一年生の二人はぐっすり眠っていた。 僕らは部屋をそっと抜け出して、裏山を上った。学院は山の中腹にあって、夜中に頂上まで登る...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.22 Tue 00:03
僕らはいつもの定位置、役員時代から使っているソファ席で久々に集まった。なんとなく暗黙の了解で、僕ら専用みたいになっていたカフェスペースの一画だ。 任期を終えてからは使っていなかったんだけど、未だにここを僕ら以外の生徒が使っているのを見たことがない。(教職員や来賓なんかが、偶に使ってるのは見かけるけど) 卒業まではって気を遣われてるのかな。新庄たちもここ使ってないし。 ――空けとくのも勿体ないしね。うん、ありがたく卒業までは使わせてもらおう。 それに、今...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.21 Mon 00:25
「馨〜! そろそろ行こうぜ」 廉と河野と紡と、食堂で昼食をとっていた僕らのところへ、創と類がやってきた。 役員じゃなくなってから、このメンバー全員で集まる機会は少なくなってたけど、今日は久しぶりに一緒に行こうと約束していたのだ。 今日は、十二月二十四日。降誕祭の日だ。 朝からチャペルでクリスマスのミサを終えてから、終業式。一応これで二学期は終了で、他の高校ならこのまま冬休みに入るのだろうが、ステファノではその後にメインのクリスマス行事が待っている。 ...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.20 Sun 00:00
「おはよう、馨。そろそろ、起きないと遅刻するぞ」 「ん…」 目を開けると、廉がいた。 「おかえり。帰ってきてたんだ」 ぼんやりとかすむ廉の顏。何度か瞬きをして、確認する。廉だ。 嬉しくて、思わず手を伸ばしていた僕を、廉が抱きしめて起こす。 「ああ、昨夜遅くにな」 抱きしめられたまま頭を撫でられ、心地よくて目を閉じてしまった僕に、くすりと廉が笑う。 「寝るなよ、馨。もう、8時だ」 「...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.19 Sat 11:46
僕らが生徒会室に行くと、中には紡と類、長谷川が待っていて、奥には新庄の姿もあった。 「馨! 水無瀬! 良かった〜!!」 紡が飛んできて抱きついてくる。 「ごめんね、心配かけて」 「何言ってんだよ。無事なら、それで良いんだよ」 横から類が、ちょっと怒った顏で言う。 「大丈夫? 怪我してない?」 紡がお母さんのように、僕の身体を点検する。僕はさりげなくセーターの袖口を伸ばす。もう痕は薄くなってると思うけど&...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.18 Fri 08:37
「ごめんね。僕のせいで慎一まで閉じ込められちゃって」 「は? 何いってんの。悪いのは新庄だから。ぜーんぶあいつのせいだから」 はは、怒ってるな慎一。絶対敵に回しちゃいけない相手だ。 僕にとっては優しい友だちだから怖くないけど。怒らせた新庄はご愁傷様だ。 「多分、長谷川辺りが気が付いてくれそうな気がする。すぐ戻るつもりだったから、部室に裁縫道具とか出しっぱなしだし、荷物もそのままで来たから」 長谷川は同じ茶道部で、僕らと同じ代の風紀委員長。地...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.17 Thu 08:55
「好きです、馨先輩。俺のものになって下さい」 まっすぐに見つめてくる新庄の目を逸らすこともできなくて、僕は黙って彼を見上げていた。 去年の体育祭で僕を追いかけてきた一年坊主。そのときは確か同じ目線で。あの頃はきりっとした眉毛の美少年で、必死な感じも、慌てておろおろする感じも可愛くて。 それがいつの間にか、背も伸びて、紅顔の美少年がイケメン生徒会長になり、近隣女子高生のアイドルで。 なんか感慨深い。 「馨先輩! …聞いてます?」 ...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.16 Wed 12:00
痛いくらいの力。 苦しくて、上がっていく息が苦しくて堪らないのに、その息苦しさの分だけ、現実のこいつの存在を感じられる気がして。 どうしても突き放す事ができなかった。 「もしかして……妬いてくれた?」 「バ……ッ!そんなんじゃ…っ!」 「大丈夫、あいつはそんなんじゃないよ。サッカー部のマネージャー。それだけだよ?三島さんが心配してるような関係じゃ、絶対にないから」 「心配なんかしてね……っ…ぅ」 抱きしめられた腕の中、ぷいと逸らした顔に射した翳り。 え?と思う暇もなく、そっとそっと塞がれた唇から...
駄文倉庫 | 2020.11.22 Sun 00:45
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