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『なぁ馨、星を、見に行こうか』 中等部二年の冬、十二月も半ばを過ぎた頃だったか、消灯時間をとうに過ぎた真夜中。いつものように眠れないでいた僕を、廉がそう誘った。 その頃の僕は持病とも言える不眠症がひどかった時期で、眠りも浅く、寝つきも悪かった。あの夢も定期的に見ていたし。 中等部の寄宿舎の、四人部屋。一年生の二人はぐっすり眠っていた。 僕らは部屋をそっと抜け出して、裏山を上った。学院は山の中腹にあって、夜中に頂上まで登る...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.22 Tue 00:03
僕らはいつもの定位置、役員時代から使っているソファ席で久々に集まった。なんとなく暗黙の了解で、僕ら専用みたいになっていたカフェスペースの一画だ。 任期を終えてからは使っていなかったんだけど、未だにここを僕ら以外の生徒が使っているのを見たことがない。(教職員や来賓なんかが、偶に使ってるのは見かけるけど) 卒業まではって気を遣われてるのかな。新庄たちもここ使ってないし。 ――空けとくのも勿体ないしね。うん、ありがたく卒業までは使わせてもらおう。 それに、今...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.21 Mon 00:25
「馨〜! そろそろ行こうぜ」 廉と河野と紡と、食堂で昼食をとっていた僕らのところへ、創と類がやってきた。 役員じゃなくなってから、このメンバー全員で集まる機会は少なくなってたけど、今日は久しぶりに一緒に行こうと約束していたのだ。 今日は、十二月二十四日。降誕祭の日だ。 朝からチャペルでクリスマスのミサを終えてから、終業式。一応これで二学期は終了で、他の高校ならこのまま冬休みに入るのだろうが、ステファノではその後にメインのクリスマス行事が待っている。 ...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.20 Sun 00:00
「おはよう、馨。そろそろ、起きないと遅刻するぞ」 「ん…」 目を開けると、廉がいた。 「おかえり。帰ってきてたんだ」 ぼんやりとかすむ廉の顏。何度か瞬きをして、確認する。廉だ。 嬉しくて、思わず手を伸ばしていた僕を、廉が抱きしめて起こす。 「ああ、昨夜遅くにな」 抱きしめられたまま頭を撫でられ、心地よくて目を閉じてしまった僕に、くすりと廉が笑う。 「寝るなよ、馨。もう、8時だ」 「...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.19 Sat 11:46
僕らが生徒会室に行くと、中には紡と類、長谷川が待っていて、奥には新庄の姿もあった。 「馨! 水無瀬! 良かった〜!!」 紡が飛んできて抱きついてくる。 「ごめんね、心配かけて」 「何言ってんだよ。無事なら、それで良いんだよ」 横から類が、ちょっと怒った顏で言う。 「大丈夫? 怪我してない?」 紡がお母さんのように、僕の身体を点検する。僕はさりげなくセーターの袖口を伸ばす。もう痕は薄くなってると思うけど&...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.18 Fri 08:37
「ごめんね。僕のせいで慎一まで閉じ込められちゃって」 「は? 何いってんの。悪いのは新庄だから。ぜーんぶあいつのせいだから」 はは、怒ってるな慎一。絶対敵に回しちゃいけない相手だ。 僕にとっては優しい友だちだから怖くないけど。怒らせた新庄はご愁傷様だ。 「多分、長谷川辺りが気が付いてくれそうな気がする。すぐ戻るつもりだったから、部室に裁縫道具とか出しっぱなしだし、荷物もそのままで来たから」 長谷川は同じ茶道部で、僕らと同じ代の風紀委員長。地...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.17 Thu 08:55
「好きです、馨先輩。俺のものになって下さい」 まっすぐに見つめてくる新庄の目を逸らすこともできなくて、僕は黙って彼を見上げていた。 去年の体育祭で僕を追いかけてきた一年坊主。そのときは確か同じ目線で。あの頃はきりっとした眉毛の美少年で、必死な感じも、慌てておろおろする感じも可愛くて。 それがいつの間にか、背も伸びて、紅顔の美少年がイケメン生徒会長になり、近隣女子高生のアイドルで。 なんか感慨深い。 「馨先輩! …聞いてます?」 ...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2020.12.16 Wed 12:00
痛いくらいの力。 苦しくて、上がっていく息が苦しくて堪らないのに、その息苦しさの分だけ、現実のこいつの存在を感じられる気がして。 どうしても突き放す事ができなかった。 「もしかして……妬いてくれた?」 「バ……ッ!そんなんじゃ…っ!」 「大丈夫、あいつはそんなんじゃないよ。サッカー部のマネージャー。それだけだよ?三島さんが心配してるような関係じゃ、絶対にないから」 「心配なんかしてね……っ…ぅ」 抱きしめられた腕の中、ぷいと逸らした顔に射した翳り。 え?と思う暇もなく、そっとそっと塞がれた唇から...
駄文倉庫 | 2020.11.22 Sun 00:45
出て行けと言った俺の言葉に、戸惑うように瞳を揺らした仁志が、それでも動こうとはしなくて。 それどころか、ゆっくりと近づいてくるその動作に、不覚にも俺の方が後ずさってしまう。 「どうしたんだよ?俺、ちゃんと思い出したよ?だから帰って来たんだ」 「思い出した…って事は、綺麗さっぱり忘れてたって事だろ?俺の事、わかってなかったもんな」 「それは……」 「それ以上近寄んな!」 あと一歩。そして手を伸ばせばすぐにでも届く場所まで距離を縮めてきた仁志へと、まるで追い詰められるかのようにして、壁に背をつけ...
駄文倉庫 | 2020.11.22 Sun 00:27
「こんにちは」 一瞬、時間が戻ったのかと思った。 「何……してんの…?」 とぼとぼとアパートに帰りついた俺は、階段を昇り始めてすぐに気づいた気配に立ち竦む。 目の前にあるはずの現実が信じられなくて、震える声であの日と同じ質問を投げかける。 「雨やどり」 そして返ってきた答えは、向けられた笑顔は、あの日と同じものだった。 違うのは、あの時は学生服姿だったこいつが私服だという事と、あの日は何も持っていなかったはずの手に、さっき俺が渡した紙袋を持っていたという事。 「寒いから、三島さんの部...
駄文倉庫 | 2020.11.22 Sun 00:24
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