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「どこか行きたいとこある?」 「え?」 「今日、明日って休みだからさ。鳴海…あっ、佳宏…が行きたいところあれば、余程の遠出じゃなければと思って」 結局一緒に入った浴室で三度もの熱を放ち。 部屋に戻った後はやはり照れ臭くて、まともに名前を呼べない俺を鳴海が可笑しそうに笑いを噛み殺しながら見つめてくる。 「俺は行きたいところなんてないよ。祐輔だって疲れてんだから、無理に出かける事ないじゃん。それにどこかに行くよりも、二人きりでここにいたい」 「え、えっ!?」 「ダメか?」 「ダメじゃない!けど...
駄文倉庫 | 2020.06.04 Thu 22:26
鼻腔をくすぐる香ばしい香り。 昨日の朝と同じ、部屋いっぱいに広がる焼きたてのパンの香りで目が覚めた。 「鳴海くん?」 モソモソと布団の中から声をかけるものの、望んだ返事は返ってこず。 昨夜眠りがけに感じた不安が不意に蘇り、ガバッとベッドの上に身を起こす。 「あ…いるなら返事してよ…」 そしてすぐに目に飛び込んできた、キッチンに立つ鳴海の姿にホッとした俺へと、向けられる視線は何故かひどく不機嫌な様子だった。 その不機嫌を隠そうとしないままに、ツカツカとカウンターキッチンから出てきた鳴海が...
駄文倉庫 | 2020.06.02 Tue 22:12
「佳宏…」 「んぁ…っ!──…っぅ…んん…っ!!」 耳元で何度もその名を呼べば、ぶるっと身を震わせ更にきつく締め付けられる。 「愛してる──…」 そして堪らず唇に乗せた俺の告白に、一瞬驚いたように目を見開き、すぐに愛おし気に細められた眦から一筋の涙が零れ落ちた。 俺の腕に抱かれながら乱れる鳴海が見せる表情、漏れる矯声、その全てが俺を虜にする。 鳴海の身体から流れ出す色香、その全てに酔っていた。 「ずっと俺の傍にいてくれ」 「祐輔…?」 「二度と失いたくないんだ」 零れ落ちた想いは、心からの願い...
駄文倉庫 | 2020.05.30 Sat 22:06
(R-18) 半分信じられない思いで問いかけると、透き通りそうなくらい白い顔がぱあっと朱色に染まった。 そんな鳴海の姿に、必死で保ち続けていた理性が一瞬で飛び散り、堪らず細い身体を引き寄せ抱きしめていた。 「本当に?」 腕の中にすっぽりと収まっている鳴海が、小さいけれどはっきりと頷いてくれて。 「ずっと……俺の事?」 そんな俺の問いかけにももう一度頷き、ゆっくりと顔を上げた鳴海が唇を重ねてくる。 「ずっと会いたかったんだ。忘れた事なんかなかったよ……」 「鳴海──…」 俺の口から漏れた自分の...
駄文倉庫 | 2020.05.28 Thu 22:12
「バスの中にミネラルウォーターとクラッカーがありますから、早く移動して下さーい!」 町田さんの旗を見失わないように、それでも重い足取りで歩く生徒達を、教師3人は人数の確認や荷物のチェックをしながらバスに詰め込んでいく。 「全員乗ったか。班長、報告しろ」 「うぃーっす…」 生徒達は5〜6人ずつの班に分けられている。オーストラリア組は46人だから、9班だ。その9班を勝手に3グループに分け、教師1人ずつが1グループ毎に張り付くことになっている。逃走の恐れのある生徒のいる班が、1グルー...
真昼の月 | 2020.05.27 Wed 17:35
「ダメです。これ以上は、うちに帰ってからですって……、ね?」 そっと頬に手を添えて顔を離させると、是枝は名残惜しそうに、やっと宮嶋から離れてくれた。 「……もう、なんでいきなりこんな真似を……」 「だって仕方ないだろう?君があんまり可愛いことを言うから」 「そ…っ!そんな事言ってません!」 そんな、急に是枝が盛り上がるようなことを言った覚えはないのに、そう言われてしまうと急に顔に血が上って、宮嶋は思わず下を向いてしまった。 「も…1...
真昼の月 | 2020.05.26 Tue 08:03
本当にこれはどういう事なんだ? いや、どういう事も何も、昨日からの鳴海の台詞は、どう考えたって甘い告白にしか聞こえないわけで。 その事自体はめちゃくちゃ嬉しいんだけど、全ての理由が全くわからないままである事に変わりないんだ。 「俺…今日は鳴海くんと話しがしたくて。本当はもっと早く帰りたかったんだけど」 「話し?」 「そう、話し。だってこんな……なし崩し的にあんな事になったけど、本当は凄く戸惑ってるんだ。いや、あんな事しといて俺が言える立場じゃないかもしれないけど。でも聞きたい事がたくさんあって...
駄文倉庫 | 2020.05.25 Mon 23:01
◇◇◇ ◇◇◇ 明日からすぐ仕事があるからと、朝食───というには、かなりブランチに近かったけれど───を食べ終えると、宮嶋と是枝はすぐに東京に戻る事にした。 「ここは居心地が良すぎて、いつまでも長居したくなってしまうからね」 是枝がそう言って笑うと、ジェイクも嬉しそうに微笑んだ。 「いつでもおいで下さいね。宮嶋君は慎也の『息子』なんですから」 そう言われて、是枝も宮嶋も、ふんわりと微笑んだ。 あなたは私達の家族ですよ。 そう言ってくれる存在があることが、素直に嬉しいと思う。 ...
真昼の月 | 2020.05.25 Mon 08:28
「……新婚旅行はともかく、家の方はどうするんだ?まだ今迄のマンション、残してるだろ?」 「え?まだ一緒に暮らしていないの?」 驚いた一同に、なんと答えて良いか分からず、宮嶋は「あ〜、通い婚的な?」と言葉を濁した。 ほとんど是枝の家で過ごしてはいるのだが、愛着のあるマンションも手離し難く、今もまだ仕事場と称して部屋は残してあるのだ。 「手放すのがいやなら、不動産屋にかけて、賃貸に回せば?あの部屋なら相当稼げるだろ?」 「でもそうしたら、仕事場はどうするんだよ」 「塾長室で...
真昼の月 | 2020.05.24 Sun 08:08
「設楽君は昨日どこにいたんだ?」 手持ち無沙汰な宮嶋が、なんのてらいもなく設楽に声をかけると、設楽は一瞬目をぱちくりとさせた。だがすぐに「悠斗さん達のホテルにお邪魔してた」と返事を返し、牛乳とオレンジジュースのボトルをテーブルに運んできた。 「どっちにする?」 「じゃあオレンジジュースで」 設楽とこうして当たり前のように会話をしている自分が、少しだけ不思議だった。だが、今迄感じていた気まずさは、何故だか全く感じなかった。 「一昨日はありがとう」」 小さく礼を言うと、設楽は「何が...
真昼の月 | 2020.05.23 Sat 08:19
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