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それ以来、試験期間に入ってもなんだかんだと理由をつけて村野に接近する安藤を、剛毅はただ見ているだけの日々。試験中は午前中だけなので、ランチタイムもなし。校内ではいつも安藤に先を越されて、剛毅はなんとなく声をかけにくかった。 そうこうしているうちにテストも終了。もう今日は終業式だった。 朝のHR前、隣の安藤が唸るように言った。 「悔しいー。大した進展もないまま、もう夏休みじゃん」 「安藤って、けっこう打たれ強いよな…」 呟くように言った剛毅の言葉を、安藤が聞き咎め...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.08.01 Thu 19:30
皆様!今年もこのblogで「開設6周年、ありがとうございます!!」と言うことができました!! もう本当にこんなにもお休みだらけなのに、「何が6周年か〜〜!」とそろそろ怒られてしまいそうですが💦💦 お休みをいただいている間に、子供2人が中高にそれぞれ進学しまして。 このblogが始まったときには下の子小学校入ったか入ってないかだわ!それがもう中学かよ!と、自分でも時間の流れるスピードに驚いております💦 そう。7年前の第一稿は、実は富...
真昼の月 | 2019.08.01 Thu 08:02
車は海沿いの道を走っていた。 東京を出て4時間。高速を降りて、もうそろそろ30分経つ。時々道は海を離れ、山間の道を進んでは、また海の見える道に戻る。 キラキラと日の光を反射する海が見えるたび、小野田衛は小さく歓声を上げた。 「疲れませんか?もう少し走ると小さいですけど町があるんで、そこで休憩を入れましょうか?」 運転席からヒロが声をかけると、衛は小さく「大丈夫」と笑った。 かつて、組みを出し抜いて北海道の大学に行ったとき、紆余曲折を経て、衛と栄次は年に2回だけ逢瀬を重ねる約...
真昼の月 | 2019.08.01 Thu 08:01
中三の夏、あの日は、その夏一番の暑さを記録していた。剛毅が学習塾の夏期講習を終えて帰ってくると、ちょうど姉の実乃里が家を出ようとしているところだった。 「ちょうど良かった、剛毅」 「出かけるの?」 赤いギンガムチェックのサマードレスがかわいい。デートかな、と剛毅は思う。子供の時からずっとショートカットで、運動部で、女顔の剛毅よりずっと少年っぽい姉だったが、高校生になって私立のお嬢様学校に通うようになってから、髪も伸びて、最近急に女らしく、きれいになった。 「ちょっとね、四時頃広尾...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.31 Wed 15:28
皆様、コメントありがとうございます。 お返事はコメントをいただいた順に書いております。 先に書いていただいた方のリコメが下になっておりますので、もし自分へのレスがないな、と思われたら、下の方をググッとスクロールしていただけると嬉しいです。 イヌ吉拝 コメントの御礼が遅くれがちです💦大変申し訳ありません!! 08:01:そら様 コメントありがとうございます! 本当にすっかりご無沙汰してしまって申し訳ありません💦㈐...
真昼の月 | 2019.07.31 Wed 15:00
昼休みの校庭、クラスの男子達がキックベースボール中。剛毅はため息をついて教室の窓からその光景を見下ろしている。高校生にもなって無邪気なことだが、今2Cの男子の間では、キックベースボールがブームなのだ。今日は村野も参加していた。 剛毅と村野はあれから毎日弁当一緒に食って、昼寝したり、キックにまざったり、先週は一緒に映画も見に行った。なんか最近普通の高校生しているような気がする。こころなしか、クラスにも馴染んできたような気もするし。 剛毅は村野といると、不思議な居心地...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.30 Tue 22:25
放課後、剛毅は図書館に向かって走っていた。図書委員は昼休みと放課後5時まで交代で、カウンター業務と図書の整理を行う。昼休みは一人勤務だが、放課後は二人一組だった。日直と重なったせいで、時間に遅れてしまっていた。 白いペンキがひび割れて、ところどころ浮いていたり、かなりのボロではあるが造りはしっかりした木造の重厚な扉を開けて中に入ると、カウンターの中から隣のクラスの図書委員、迫田辰巳が身を乗り出して大声を出す。 「おっせーよ。熊崎!」 人影まばらとはいえ、図書館中...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.26 Fri 16:36
月曜日。今日は図書当番の日だ。 熊崎剛毅は、4時限の終業のチャイムとともに教室を飛び出した。剛毅の昼食はいつもパンで、毎日購買部へ買いに行く。早くいかないと、混み合って遅くなってしまうから、悠長には構えていられない。図書当番のときはお昼の開室時間までに食べ終わらないといけないから。 剛毅は急いで購買に駆け込むと、玉子サンドとカレーパン、あんドーナッツという三大人気商品とコーヒー牛乳を素早く選び取る。おばちゃんにお金を払って振り向くともう長蛇の列だった。 欲しかったパンを全部買えて、...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.25 Thu 16:16
君の名前の形に、唇が動く。 君の顔も、しぐさも、肌のぬくもりも、もう思い出すことをやめた。 それなのに、ふとしたなんでもない瞬間に、無意識に唇が形づくる、君の、名前――。 「航平?」 瑞穂が不思議そうに、航平の顔を覗き込む。 何度も呼ばれていたのだろうか。ぼんやりしていた航平が、我に帰る。 「あ…、ごめん。何」 「疲れた? 運転代わろうか」 瑞穂を車で東京に送っていく途中の、山間の小さなパーキングエリア。高速道路と反対側のフェンスに、持...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.24 Wed 17:58
次の日の朝、美果と別れ、瑞穂は一人でホテルを出た。 タクシーで海沿いの道を走る。変わらない、あのとき二人で見た風景。窓の外、どこまでも続く海を、瑞穂はひとり、ただぼんやりと眺めていた。 妹は、彼に会えという。会って気持ちを伝えろと。――でも、瑞穂には彼に伝えるべき言葉が見つからなかった。今、彼に会って、何を言えばいいのだろう。会いたいという気持ちよりも、怖いと思う気持ちの方が強かった。 彼と過ごしたのは、ほんの3、4ヶ月のことで、会わずに過ごした日々は、もう10年以上になる。彼...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.23 Tue 10:26
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