[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
今日は久しぶりに、美術棟で村野とお弁当タイム。雨だから中庭には出られないし、前に教室で食べてたら、弁当の中身を見られて、同じおかずだとバレそうになったし。やっぱりここが落ち着くなぁと剛毅は思う。――村野は、いやいやっぽかったけど。 迫田に洗いざらい話して、ぐちゃぐちゃ絡んで、泣いて。だからって、それだけでは何も解決してないないけど、なんだか心が軽くなったのは、確かだった。ネットの情報もあながち間違っていなかったなと思う。 「美味しいね、これ。きのこの酢の物?なんか凝ってる」 ...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.17 Tue 13:54
次の日は、村野と話すことも目を合わすことも出来なかった。 お昼休みになっても動けないでいる剛毅の机に、弁当包みと水筒がぽんと置かれた。思わず目をあげた剛毅と一瞬目があった村野は、その目を逸らして黙って踵を返す。置かれたのは1人分のお弁当。自分の分を持って教室を出る村野。 (一人で食べろってこと?…もう終わりってこと?) 剛毅は動けずに、村野の背中を目で追う。廊下に出る手前で一瞬振り向いた村野と目があった。 「待って!」 慌てて立ち上がり、お弁当包みを持って、追いかけた。 ...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.16 Mon 17:29
「昨日はどうしたのよー、うさぎちゃん」 朝、登校してきた剛毅が鞄の中から教科書を出していると、安藤がやってきた。 「いいかげんやめろってば、その呼び方」 剛毅は思いっきり嫌な顔をして、手を止めずに応えた。安藤に泣き顔を見られてしまったのは、まさに一生に不覚だと思う。 「いいじゃん、可愛いっしょ。それよりマジで具合悪かったの? それともサボり?」 「安藤に関係ないだろ」 昨日のことは突っ込まれたくなくて、そっけない言い方の剛毅に、 「なによー、可愛くないなぁ。人がせっかく心...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.15 Sun 17:57
机の上には、一枚の紙切れ。 頬杖をついてそれを見つめながら、熊崎剛毅は何度目かの溜め息をついた。 放課後の教室、残っている生徒はもうほんの数人。冬の日の太陽はもう沈みかけているが、薄暗くなってきた教室からは、サッカー部の練習の様子が良く見える。 三学期の中間テストも終わった2月の初め、今週中にはこの紙切れ――進路希望調査書――を提出しなくてはならない。三年になれば、クラスは希望進路別に分かれる。国公立、私立理系、私立文系、就職・専門学校。 剛毅は取り合えずつぶしのきく国公立クラス...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.14 Sat 15:39
「ああ、洗濯機は動きますね。乾燥機もいけるかな……。よし、じゃあ、チェックがてら洗濯しちゃいましょうか。洗濯物出してください」 「……慎也君、せっかく遊びに来たのに、ちゃんと洗濯するのか?」 「え?せっかく洗濯機や乾燥機があるんなら、ここで洗った方が後が楽じゃないですか?」 どうやら是枝もここではあまり洗濯する気はないらしい。宮嶋なら尚更だろう。 大竹と是枝が2人でこちゃこちゃと言い合いながらあちこち覗いているのを、設楽と宮嶋は何となく手持ち無沙汰にしながら、そ...
真昼の月 | 2019.09.13 Fri 14:08
朝、目を覚ますと、目の前に房原の手があった。 (どうりでなんか、重苦しいと思った――) 牧瀬は、後ろから覆い被さっていた房原の腕を持ち上げると、ベッドを滑り降りた。 あれから頻繁にやってくるようになった房原は、いつの間にかちゃっかりこの部屋に居着いていた。べつにそれは構わない。問題は房原のデカイ図体が、一つしかないセミダブルのベッドの半分以上を占拠しているということだ。 寝つきも悪く眠りの浅いデリケートな牧瀬は、別に布団を敷くか、もう一つベッドを買おうとしたが、房原の強硬...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.12 Thu 20:15
頼まれた本を書庫に取りに行き、葵は埃っぽい書棚の間を往復する。必要な本をカートに移していく作業の途中、ふと自分の左手に目を留める。 冷たい輝きの、プラチナリング。 転属した初日からはめたまま出勤していたが、しばらくはそれについてだれも何も言わなかった。けれど何日か経ったある日、同期ではあったが、今まで同じ部署になったことのない岩島に初めて訊かれた。 「鵜川くん、いつの間に結婚したの?」 図書館勤務はもう二年目の岩島に、カウンター業務の説明を受けているときだった。葵の薬指...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.06 Fri 09:10
翌朝、目が覚めた千尋は二階の自分の部屋から出て階段を降りる。 ご飯の炊ける良い匂いがした。 「おはよう」 目をこすりながら、降りてきた千尋に、 「やっと起きてきたわね。いいかげん起こそうと思ってたところよ」 静はご飯をよそっている。壁の時計を見るともう9時過ぎだった。 「母さん、今日も休み?」 「今日は準夜勤だから、3時位までは家に居るわ」 テーブルに並べられた朝ごはん。炊きたてのご飯と昨日の残りの味噌汁に、柔らかい出汁巻卵と、梅干し。胃に優しい...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.04 Wed 15:49
昨夜、今年は早めに休みが取れたから明日帰ると、母には連絡を入れておいた。 大掃除を済ませてから帰省しようと早めに起きたが、並木の部屋以上に最低限のものしかない小さなこの部屋の掃除など、大して時間はかからなかった。 千尋は大学時代からずっと同じアパートに住んでいる。駅からは少し遠いけど、ここは会社と同じ沿線だったし、引っ越すのも面倒だったから。 本当はここは学生アパートなのだが、大家さんがいい人で、こんなボロアパートで良かったら卒業後もそのまま住んでいていいよと言ってく...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.02 Mon 12:36
全1000件中 501 - 510 件表示 (51/100 ページ)