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JUNE/BL/ML

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JUNE/BL/MLなど言われる、男×男などの同性愛要素を含む創作小説テーマです。
※ R-18作品には必ず分かるように明記しましょう。
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トロイメライ[2]

   小春日和の穏やかな午後。鴨川沿いの河川敷からは五山の深い緑がよく見渡せる。時折川面を渡ってくる風は、冷たいが頬に心地いい。  陽深は、茶色く乾燥した芝生に腰を下ろし、クロッキー帳に水彩画を描いていた。  ふと、すぐ横に暖かい気配を感じて振り向くと、小さな女の子が斜め後ろから覗き込むようにじっと絵を見ていた。  自分の方を振りかえった陽深に、女の子は屈託のない笑顔で笑い、絵を指さして聞いてくる。  「これなあに?」  小首を傾げて聞いてくる可愛らしい仕草に、陽深は思わず微笑んで答...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.27 Fri 14:55

トロイメライ[1]

   (あー、いい月だな…)  広瀬隆尚は、ため息をついて空を仰いだ。  もう真夜中といっていい時間帯。閑静な住宅街にあるこの大通りでは、時折何台かのタクシーが行き過ぎるくらいで、歩道を歩く人影は彼だけだった。  趣味のよいスーツに身を包み、ステンカラ―のコートにブリーフケースを抱えたビジネスマン。背の高い、職場のOLたちにも人気のありそうな容姿だが、今歩いている彼の姿は、いかにも疲れ切ったサラリーマンそのものだった。  中堅どころの建材関係の商社に勤める彼は、34歳の若さで課長。同期...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.26 Thu 14:50

愛撫。(温度。番外編)

   「村野、ほい、お前の番」  練習が終わって、がやがやとうるさい&汗臭い部室。着替えている村野の前に、何枚かのDVDが差し出される。  「兄ちゃんの秘蔵版。無修正だぞ。けっこうバッチリ写ってる」  そう云ってニヤけるサッカー部のエロ担当。前に、俺が先だ、いや俺だとみんな必死になって順番決めてたあれか。と村野は思う。もう一巡したらしい。  「いや、俺はいい。――部屋にプレーヤーないし、パソコンも持ってないから」  「あー、それはキビシイな。…よっしゃ、そんな不遇な...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.25 Wed 12:15

温度。[6]

   「おはよ、熊崎」  月曜日、登校した剛毅を待ち構えていたように、安藤がやってきた。  「…おはよ」  小さな声で答える剛毅に、安藤が笑う。  「なーに? 元気ないじゃん。せっかく楽しい週末だったのに」  「ごめん。…勝手に帰っちゃって」  「ああ、そのこと。いいよ、別に。迫田いたし。それより、――はい」  水族館のマークとロゴの入った小さな紙袋が二つ。ぽんと机に置かれた。  「お土産。あんたたち、あのまま帰ったんでしょ? 私たちショップ寄ったから、迫田...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.19 Thu 15:16

温度。[5]

   多いかと思われたお弁当もデザートもきれいに平らげ、剛毅たちはいっぱいになったお腹をさすりながら水族館に戻る。  「もう全部回ったよね? もう一回好きなやつ見に行こうかな。熊崎なにが良かった? 私、クラゲと、ウミウシ」  館内に戻ると、安藤が訊いてきた。  「あ、俺も一緒。クラゲとウミウシと、あとチンアナゴ」  「そうそう、あれも可愛かったよね〜」  意見の一致した二人に、迫田が云う。  「んじゃ一緒に行こうぜ。その辺全部近い場所に固まってたから」  4人でつかず離...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.18 Wed 14:04

瞳。(きれい。番外編)

   「熊崎」  不意に後ろから声を掛けられて、振り返った彼はバランスを崩した。  しまった、と咄嗟に手を伸ばす。声を掛けたタイミングが悪かった。階段を降りようとした足が滑って、彼の身体が傾いたところで手が届く。  ほっとした村野の視界に、剛毅の手から離れたパンが下に転がり落ちていく様子が目に入った。  「なに?」  訝しげにこっちを見ている彼と、目が合う。  (…猫みてー)  彼の顏が綺麗なのは有名な事実で、入学式の日にすでに話題になっていた。女子に限らず、わざ...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.17 Tue 22:06

温度。[4]

   今日は久しぶりに、美術棟で村野とお弁当タイム。雨だから中庭には出られないし、前に教室で食べてたら、弁当の中身を見られて、同じおかずだとバレそうになったし。やっぱりここが落ち着くなぁと剛毅は思う。――村野は、いやいやっぽかったけど。  迫田に洗いざらい話して、ぐちゃぐちゃ絡んで、泣いて。だからって、それだけでは何も解決してないないけど、なんだか心が軽くなったのは、確かだった。ネットの情報もあながち間違っていなかったなと思う。   「美味しいね、これ。きのこの酢の物?なんか凝ってる」 ...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.17 Tue 13:54

温度。[3]

 次の日は、村野と話すことも目を合わすことも出来なかった。  お昼休みになっても動けないでいる剛毅の机に、弁当包みと水筒がぽんと置かれた。思わず目をあげた剛毅と一瞬目があった村野は、その目を逸らして黙って踵を返す。置かれたのは1人分のお弁当。自分の分を持って教室を出る村野。  (一人で食べろってこと?…もう終わりってこと?)  剛毅は動けずに、村野の背中を目で追う。廊下に出る手前で一瞬振り向いた村野と目があった。  「待って!」  慌てて立ち上がり、お弁当包みを持って、追いかけた。 ...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.16 Mon 17:29

温度。[2]

 「昨日はどうしたのよー、うさぎちゃん」  朝、登校してきた剛毅が鞄の中から教科書を出していると、安藤がやってきた。  「いいかげんやめろってば、その呼び方」  剛毅は思いっきり嫌な顔をして、手を止めずに応えた。安藤に泣き顔を見られてしまったのは、まさに一生に不覚だと思う。  「いいじゃん、可愛いっしょ。それよりマジで具合悪かったの? それともサボり?」  「安藤に関係ないだろ」  昨日のことは突っ込まれたくなくて、そっけない言い方の剛毅に、  「なによー、可愛くないなぁ。人がせっかく心...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.15 Sun 17:57

温度。[1]

   机の上には、一枚の紙切れ。  頬杖をついてそれを見つめながら、熊崎剛毅は何度目かの溜め息をついた。  放課後の教室、残っている生徒はもうほんの数人。冬の日の太陽はもう沈みかけているが、薄暗くなってきた教室からは、サッカー部の練習の様子が良く見える。  三学期の中間テストも終わった2月の初め、今週中にはこの紙切れ――進路希望調査書――を提出しなくてはならない。三年になれば、クラスは希望進路別に分かれる。国公立、私立理系、私立文系、就職・専門学校。  剛毅は取り合えずつぶしのきく国公立クラス...

サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.09.14 Sat 15:39

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