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それ以来僕は、毎夜、朝まで眠り続けた。 夜半に目覚めることもなく、泥のように、深く沈み込むように。 そうして、劣化した8?フィルムのような映像を見せられ続ける。音のないその映像を、ただ延々と途切れることなく。 音はないのに、その映像の中の人物が何をしゃべっているのかも、どんな音がしてるのかも、匂いも、味も、何もかもわかった。 そうやって、意識の中に流れ込んでくる、カヲルの記憶。 頭の中の奥にある記憶の引出しから、勝手に溢れ出して、僕の記憶を押しやってしまいそう...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.10.29 Tue 12:45
「おはよう」 次の日の朝。僕は初めて2年3組の教室に入った。 「おはよう、茨木。もう大丈夫なのか?」 新しいクラスメイト達が、集まってきた。 「うん。心配かけてごめんね。ただの寝不足だよ。いっぱい寝たから大丈夫」 笑って答える僕に、それでも、無理するなよ。とみんな心配してくれる。 「おはよう、馨」 奥にいた、慎一が声を掛けてくる。 「おはよう、慎一。昨日はごめんね」 「謝らなくていいよ。それより、こっち」 慎一は僕の手を引いた。 「馨...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.10.28 Mon 08:40
遠い――。遠くに、月が見える。 ああ、月は遠いところにあるものだ。それは分かってる。 円い夜空に、円い月が浮かんでる。 淡い光は、青く、冷たくて、吐く息が白く揺らめくその向こう。 遠い、月が見える。 ――…る、…。 昏い奥底に沈み込んだ意識に、かすかに届く、声。 この声は――、…さん――? 「馨、…馨」 目を開けると、見慣れた、顏。 「廉…?」 「おはよう、馨。&he...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.10.27 Sun 11:49
お久しぶりです! Rinkです、みなさま元気におすごしでしょうか? 事後報告になってしまいましたが 2019年10月6日(日)秋のJ・GARDEN参加してきました。 当日のお品書きはこんな感じでした。 相変らずのデッド入稿でとうとう前日の土曜日に入稿して、日曜日会場納品でした(汗) ですのでお知らせも無く、終わったよ報告大変失礼いたします。 隣接はいつもの相方 BL風味のさくらんぼ 柚子季さん! 彼女といっしょだと一人スペースも安心していられ...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2019.10.08 Tue 08:46
反対側の袖には創がいて、お疲れ〜!と抱きしめられて、頭をぐりぐりされた。 「なんだ、心配して損した。すげー良かった。練習した?」 「してる訳ないじゃん! なんなの、この騙し討ち! おまえら知ってたの?」 真っ赤になって怒る僕に、しぃーと指を口の前に持ってくる。 「聞こえるぞ、まだこれからアンコールやるんだから、静かに見てようね」 創が宥めるように、笑って云う。舞台の上では、中央に戻ってきた新庄がなんかしゃべってて、わぁっと歓声が上がったかと思うと、演奏が始ま...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.10.07 Mon 11:22
学祭当日は、好天に恵まれて、9月にしては涼しい秋晴れの日。 麓の街から上がってきたバスが停まり、校門前で次々と人が溢れだす。公式サイトと自治体へのお知らせだけで、ほとんど広報してないんだけど、みんなよく知ってるなと思う。 今日の生徒会役員のお仕事は、もう特にない。 一応僕たちは、夏服だけどネクタイ着用、執行部の腕章をつけて校内を見まわり、なんかトラブルや困ったことがあったら駆けつける。って感じなので、何もなければ、特にすることはない。 取りあえず呼び出しがかかっ...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.10.07 Mon 11:22
日曜日の午後――。 うたた寝から目が覚めた僕は、食べそびれた昼食を買いにコンビニへ行こうと、部屋を出た。 広くて明るい寄宿舎の廊下。階段へ向かいかけて、小さく流れてくる音色に気付く。 反対側の一番奥の部屋。少し開いた扉の向こうから聞こえるギターの音。僕は方向転換をして、その部屋に向かう。 「廉?」 一応軽くノックをしてから、そっと扉を押す。音が流れてきたのは、廉の部屋からだった。 「馨、起きたのか」 部屋の奥、壁際のベッドをソファ替わりに、...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.10.07 Mon 11:21
「なにしてるんだ?」 「掃除」 その夜遅く広瀬が戻ると、陽深はごしごしと台所の流し台を擦っていた。 「こんなに夜遅くしなくても、昼間やればいいのに」 「ええ、でも――暇だったし、きれいにしていきたかったから」 陽深は水を流しながらそう言うと、広瀬の隣に腰を下ろす。 「お風呂に行くでしょう?」 「え?」 「銭湯。早く行かないとしまっちゃいますよ。そこに、着替え置いてますから」 部屋の隅に新しい下着と、Yシャツが置いてあった。靴下も。そういえば今朝は、前日のままの格好...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.10.05 Sat 11:14
「隆尚さん!いったいなにが ――」 戻ってきた夫を問い詰めようとする涼子。だが、広瀬はどんな言葉も耳に入らない様子で、無言でリビングのソファに腰を下ろす。 いつもと違う張り詰めた空気に怯える優里を宥めながら、涼子が子供部屋に連れてゆく。 広瀬は、混乱していた。この状況にも、陽深からの突然の別れの言葉にも。 「隆尚さん、ねえ」 戻ってきた涼子が不安そうに広瀬の膝を揺する。 「陽深、いや、彼とはどういう知り合いなんだ」 難しい顔のまま、呟くように広瀬が言った。 「優里の...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.10.04 Fri 09:23
『はい、森井商事でございます』 営業用の柔らかい女性の声。 「お忙しいところ恐れ入ります。あの、広瀬と申しますが――」 涼子は努めて冷静な声を作る。 『涼子? 久しぶりじゃない、どうしたの』 「理香?」 『そうよ。あ、番号間違えたの? 経理課よ、これ。二課に回そうか?』 「ううん、いい。彼、来てるの?」 『ダンナ? 来てるわよ。いつもどおり』 「そう、――ならいいの」 『――なんかあったの?』 理香が、心配そうに声を潜めて言った。彼女は涼子とは同期で仲がよく、涼子...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.10.03 Thu 15:35
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