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そのヒロが、やっとこちらの世界に足をつけて行こうとしている。この世の中に、居場所を見つけようとしている。 でもそれならば、その場所はここじゃなくても良いのではないのか……。 モータースポーツの世界に戻してやりたい気もする。他の仕事につかせてやっても良い。 そう思う傍らで、自分の目の届くところでもっと大切にしてやりたいとも思う。 「……参ったな……」 こんな気持ちになるなんて、全く思っていなかったのに……。 「カシラ?どうしました...
真昼の月 | 2018.10.19 Fri 08:08
ヒロは持ち前の性格なのだろうか、店の周りにいるよその組関係者にも笑顔で『ご近所づきあい』をしているようだ。 手塚と聡子のことは何となく周りも知っているようで、それなら自分もと、女の子達から相談を持ち掛けられることもある。『ご近所づきあい』の一環なのか、誘われるままによその店に顔を出すこともあって、何故かそこでもお姉ちゃん達や若いスタッフに、身の振り方やら男女関係のことなどを相談されることもあるようだった。 変わった男だと思う。あの人の良さそうな顔に、みんな何となく、他人に...
真昼の月 | 2018.10.18 Thu 08:01
当の聡子は同室の女の子達と一緒に控え室から出てきた。ヒロを見つけると控えめに会釈をする。 その場の女達の視線が集まっているのは分かっているが、敢えてヒロはみんなの前で聡子に声をかけた。 「どう?落ち着いた?」 「はい。ありがとうございました。おかげで目が醒めました。これからはこちらでお世話になります。よろしくお願いします」 聡子はこういう店の女性とは思えないほど、カチッとしたお辞儀をした。 「弟さんは大人しく実家に帰ったみたいだな」 「はい。弟のことまでお気遣いいただいてありがと...
真昼の月 | 2018.10.17 Wed 08:05
登場人物プロフィールはこちら 対談を終えたその日の夕方、私は結を自宅に半ば強引に連れ帰ることにした。 「道ノ瀬さんと、もう少しお時間をいただいてもよろしいですか。」 私は、結のマネージャー楠本さんに言った。 楠本氏は、30後半くらいの男性だ。パリバレエ団から派遣されていると言う。 「でも、明日の夜、道ノ瀬はパリで公演があります。支度があるので5時間前、午後1時には楽屋に入らねばなりません。」 ここフライブルクから、パリまで、国際高速列車で4時間、車で飛ば...
大人のためのBL物語 | 2018.10.16 Tue 20:28
「え……そ、そんだけ……?」 もっとがっつり叱責を受ける覚悟だったのだが、少し拍子抜けしてしまった。 いや、四代目がああ言った以上、栄次にはそれ以上何も言うことはできない、ということだろうか。 『怒って欲しいのか?とんだ甘ったれだなぁ!』 先程の吉居の台詞を思い出す。甘ったれ……そうだ。怒られるということは、その庇護下にいるということだ。自分はもう独り立ちしなければならない。誰かに教えられ、導かれる立場ではないのだ。 こんな中途半端な自分に...
真昼の月 | 2018.10.16 Tue 08:01
「この業界、バカばっかりだからな。皆バカやって殴られてでかくなってきたんだ。あんまり気にすんなよ」 「はい」 だが、そうは言われても、牧村の手を煩わせ、佐世保に借りを作らせ、桐生を呆れさせたのは事実なのだ。 時村に言われた「偽善者ぶりやがって」という言葉が重く心にのしかかる。 「まぁ、上がケツ拭いてくれんのは一度だけだ。二度目はねえぞ。それは覚えておけよ」 最後にそう言うと、金町はヒロの背中を叩いてから格技室を出て行った。何をしに来たのか。ひょっとしたら、心配して探しに来てくれた...
真昼の月 | 2018.10.15 Mon 08:02
「おう、時村。珍しいな、お前がここに来んのもよ」 「あ…、金町さん……」 金町の姿を見ると、時村は慌ててヒロから手を離した。今やヒロが金町のお気に入りであるということは組中の人間にも知られており、それがまた互いの派閥の小さな棘となっている。 もちろん、金町は時村よりも遙かにポジションは上だし、腕っ節も大人と子供ほどの違いがある。時村が金町に敵うことなど、何一つ無いのだ。 「おう、時村。せっかく格技室に来たんだ。少し体動かしていくか?」 「いえ!俺は、これで…&...
真昼の月 | 2018.10.14 Sun 08:01
「いや、彼女と弟の3人で話し合ったんですが、彼女はうちの店で働くことを希望しています。手塚につきまとわれることも警戒して、寮に入れて欲しいと」 その返事に、佐世保は少しだけ小首を傾げた。 「寮……そんなのあったか」 「いや、女の子3人で住まわしてるアパートがあるんで、そこに彼女を突っ込みます」 「ああ、狭くなってもそんなら御の字だろう。……しかし、姉ちゃんの方はそのつもりなんじゃねーの?」 「そのつもり?」 今度はヒロがきょとんとする番だ。その顔を見て、佐世...
真昼の月 | 2018.10.13 Sat 07:39
「……ど、どうなったんだ……?あんた、姉ちゃんに何かさせる気なのか……?姉ちゃんをどっかに売るつもりなのかよ!」 「落ち着けって。俺の店がここの上に入ってるから、とりあえずそこでゆっくり話そうぜ?」 そう言って弟に肩を貸して立たせると、姉ちゃんはボロボロ泣きながら「ごめんね、ごめんねタカシ」と、弟……タカシに抱きついた。 「痛かったでしょ?バカだよ、タカシ!あたしなんかの為に……!」 「姉ちゃん、目ぇ醒めただろ?あの男はダメだ...
真昼の月 | 2018.10.12 Fri 08:01
「やめて!やめてよ!タカシ!あたしのことは良いから、おとなしくこの人の言うことを聞いて!この人はあんたを殺すわ!そういう人なのよ!」 「ほら見ろ!おめぇの姉ちゃんはこう言ってるぜ!」 手塚がもう一度腕を振り上げた時、ヒロは思わずその腕を掴んだ。 「!?」 男がヒロの腕を振り払おうとする。だが、ヒロの腕はびくともしなかった。 「何だテメェ!」 「……大川の兄さん、それはまずいっすよ」 「ぁあ!?」 ヒロの落ち着いた声に、手塚がすごんでくる。だが、ヒロ...
真昼の月 | 2018.10.11 Thu 08:02
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