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◇◇◇ ◇◇◇ 「あの時、私は正気を無くして……、自分で自分のことを刺そうとしたみたいなんです。もちろん、ヒロちゃんが止めてくれたんですけど……。ヒロちゃんはそんな私を見て、分かったって。分かった、俺達は運命共同体だって。お前の運命を俺が引き受けるから。俺も駈が好きだから、駈を必ず繋ぎ止めるからって」 風子の目にはみるみる涙が浮かんできた。 駈とヒロは、本当に仲の良い親友だった。子供の頃、いつも風子はそんな二人を夫婦のようだとからかった。駈とヒロがお父さんとお...
真昼の月 | 2018.12.19 Wed 08:02
「やめろ、風子。大丈夫だ!大丈夫だから……!」 「ダメだよ!だって、このままだと駈ちゃんをあの女に取られちゃうんだよ!どうして!?どうして私じゃダメなの!?私の方が駈ちゃんを好きだわ!!私の方が駈ちゃんを愛してるのに!それなのに、どうして!?兄妹だから?だったらこんな血、いらないのに……!!」 ナイフを握る風子の腕を、ヒロは握って離さなかった。 「落ち着け!落ち着いてくれ、風子!」 「あんな女……!あんな女なんか……!そうよ、あんな、あ...
真昼の月 | 2018.12.18 Tue 08:03
兄は、本当に愛する人の替わりにあの女を抱く。 誰でも良いのだ。ただ、女であるなら。 ヒロの目につく場所で、ヒロに分かりやすいように、ヒロへの気持ちを吐き出させてくれる、都合の良い女。それでも、決してそれに気づかない、バカな女。 何故、その女なのだ。何故、私ではないのだ。私が妹だからか。私があなたと同じ血を持って生まれてきたからか。 あなたは自分の気持ちを隠すことに必死で、決して私の気持ちには気づかない。 どうして? どうして? あなたが生まれた時から、あなたは私の...
真昼の月 | 2018.12.17 Mon 08:01
◇◇◇ ◇◇◇ 子供の頃から、風子の世界は兄で占められていた。 旧態依然とした両親や親戚。会社の社長やその周囲の大人達。 時が止まったような世界の中で、兄だけが明るい光だった。 兄と、サーキットで会う兄の親友。この二人と一緒にいる時だけが、幸せだと感じられる時間だった。 家に戻れば、母や祖母は風子に旧家の女としての役割を押しつけてくる。学校に行っても、小さな田舎のことだ、周りにいる連中は父の勤める会社関係の子弟が多く、小さな社会の人間関係に、風子は押し潰されそうだった。 そ...
真昼の月 | 2018.12.16 Sun 08:02
ヒロは未だにお前の兄貴を想い続け、そのせいで妹のお前と結婚までしようとしてるんだぞ。 そう喉元から出かかった台詞は、寸での所で飲み込んだ。まさか本人に向かって、そんな当てつけを言うわけにはいかない。 桐生が歯を食いしばるように口を閉じ、ギリギリと眉をしかめると、風子はその様子に息を飲み、それから「あっ」と目を見開いた。 「ひょっとして、あなたは駈ちゃんとヒロちゃんのことを知ってるんですか?」 「……ああ」 「ヒロちゃんが、駈ちゃんを好きだったことも……?」 ...
真昼の月 | 2018.12.15 Sat 08:02
「はい。もう、癖で」 「癖?」 癖でこんな物を持ち歩いている?なんだ、この女……。どんな女だ……? 奇妙な顔をする桐生に気づいて、風子は「あ」と声を上げると、慌てたように説明した。 「ヒロちゃんや駈ちゃん、ジュニアカート時代には結構怪我が多かったんです。私は二人と一緒にいたくて……、二人と一緒にいる為に、私にできることはないかって考えて、色んな救命講習に通って勉強しました」 本当は医者や看護師になりたかったんだけど、それは親が許してくれなかった...
真昼の月 | 2018.12.14 Fri 08:02
そうだ。兄貴は違う。 兄貴が俺を抱くのは、誰かの替わりだろう?俺が最初、駈の替わりにしたように、きっと兄貴だって、誰かの替わりに俺を抱いていただけだろう? だって、兄貴は俺を抱く時に、決して俺の名前を呼ばない。決して俺に自分の名前を呼ばせない。それが答えだ。 期待しちゃいけない。俺は男で、兄貴の弟なんだから。 ふと、目の下に桐生の指を感じた。その指がそっと目の縁を辿っていく。桐生はヒロの目から離した親指を自分の唇に持っていって、掬い取った何かをペロリと舐めた。 優しい顔。 ...
真昼の月 | 2018.12.13 Thu 08:10
「最初にそう言ったな。死に場所を与えてくれるんだろう、って。俺は……俺はな、本当は、あのときお前をちょっと脅かしたら、さっさとシッポを巻いて逃げ出すだろうと思ってたんだよ。ヤクザなんてまっぴらごめんだって、逃げ出すだろうってな。……だが、お前は死に場所を欲しがっていた。だから俺はお前を手元に置いたんだ。本当は、お前はこんな世界に来るような奴じゃなかったんだろうが、俺はお前をこのまま死なせちゃいけねぇと思ったんだよ」 「兄貴……」 そうだ。俺は、死に場...
真昼の月 | 2018.12.12 Wed 08:05
登場人物プロフィールはこちら 主人公東郷の邸宅 私はカフェで結の両親と別れ、結のアパルトマンを訪ねた。 「東郷監督!」 出て来たのは楠本氏だ。 「結のご両親の了解を得て参りました。代わっていただけますか。明日まで私が結を見ています。」 ”明日まで”と言った時、楠本氏のこめかみが一瞬ひきつったように見えた。 「道ノ瀬の主治医は、安静にして”刺激しない”ように言っています。東郷監督、あなたに守れますか?」と楠本氏は私...
大人のためのBL物語 | 2018.12.11 Tue 16:20
「時村は、器じゃねぇんだよ。あんな奴に組を任せて、人がついてくると思うか?」 だからこそ、佐世保は時村の目の前でヒロを可愛がったのだ。上に可愛がられる人間というのがどういう物か、ヒロを見て学んで欲しかったのだろう。 腕っ節や銃の扱いは、端(はな)から時村に期待などしていなかっただろう。だが、例えば自分の店の周りの奴らとの付き合い方くらいは、マネできるんじゃないのか。 よその店に足を運び、自分の店の人間に何かあったらよろしく頼むと頭を下げる。自分の組の関係者じゃなくても、相談がある...
真昼の月 | 2018.12.11 Tue 08:05
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