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桐生がかつてこんな声を出したのを、ヒロは聞いたことがない。いつも飄々としている桐生が、大切な衛さんを相手に……。自分の為に、桐生が衛さんの不興を買ってしまう。だが、ヒロにはそれを止めることもできなかった。 「すいません、衛さん。今だけはコイツと2人にさせて下さい」 「いえ、俺が浅はかでした。ごめんなさい、ヒロさん、桐生さん。俺、席を外しますから、何かあったら呼んで下さい」 「ありがとうございます」 そうして人が外に出る気配がした。ドアがパタンと閉まる音。部屋の中はまた静寂...
真昼の月 | 2018.09.20 Thu 08:03
「……ひでぇ顔だな」 「兄貴……」 その声が桐生の物であることにホッとした。それから、ヒロは慌てて起きあがろうとしたが、やっぱりどうやっても体を動かすことが出来ない。 「良い、寝てろ」 「でも……すいませんでした。俺、衛さんの下校時間に間に合わなくて……」 そこまで口にして、ヒロの体がビクリと強張った。 そうだ。俺は、間に合わなくて……だって、だって俺はあの時…… 「あ……」 「ヒロ?」 「...
真昼の月 | 2018.09.19 Wed 08:01
◇◇◇ ◇◇◇ ぼんやりと、鳥の囀る声が聞こえた。高く、低く、可愛らしい声。あれは何の声だったろうか。 『さくら、あれはメジロだよ。春に鳴くんだ』 駈が指さす方を見ると、鶯色の丸々とした可愛らしい鳥が、ぴちゅぴちゅと愛らしい声を上げている。 「え?駈、あれ、ウグイスじゃねぇの?」 ヒロの声を、分かってないなと駈が笑う。 『確かにメジロとウグイスは似たような色してるけど、メジロは目の周りが白いからメジロって言うんだ。すぐに見分けがつくだろう?それにウグイスの鳴き声は日本で1番有名な...
真昼の月 | 2018.09.18 Tue 08:02
皆様!いつも「真昼の月」に遊びに来て下さり、ありがとうございます! 明日、9月18日は「日本ブログ村」のメンテが入っております! 0時から20時頃まで村の一部機能が止まるそうです!! 村ポチボタンなどは押せますし、押していただいた村ポチはストックされるのですが、新着情報などが更新されない可能性が高いです! ですが、新着情報に新着が載ってなかったとしても、明日もいつも通り「光のさす方へ」はアップいたしますので!! 明日、ブログ村からお越しの方...
真昼の月 | 2018.09.17 Mon 23:15
翌朝、結は朝食時間に起きて来なかった。 選手たちの手前、私だけはダイニングルームに降りて来た。お手伝いのジップが、既に朝食を作ってスタンバっていた。 ドイツのらしい朝食が並ぶ。 黒いパンに、コーヒーと卵、ハム、野菜、フルーツ、ヨーグルト、チーズ。 「ユウは?」両親が東ドイツ出身のアベルが言った。 「まだ寝ている。」 「監督、先に、チームに戻ります。ありがとうございます、滞在楽しかったです。」 「ではまた明後日。」明後日は試合がある。今日明日は、トレーニングとミーティングだ。 ジ...
大人のためのBL物語 | 2018.09.17 Mon 17:14
滅多に自分の事務所には戻らない栄次だが、桐生による微に入り細に入った報告のおかげで、組内の事はどんなに小さな事でも把握している。その桐生の報告によれば、金町の下には、組の決まりも仕組みも分からないバカが出入りしているのだ。 車が地下駐車場に入ると、衛が車から飛び出した。 「衛さんは俺の部屋で待っていて下さい!すぐにヒロを探させます!」 「それはダメだ!栄次さん、ヒロさんの身に何が起こってるかは分からないけど……この事は人に知られない方が良い。そうでしょう?」 衛の強い目...
真昼の月 | 2018.09.17 Mon 08:06
◇◇◇ ◇◇◇ 「衛さん、いきなりどうしたんですか?」 学校帰り、いつもの場所に停められた車に乗り、運転席を見るなり衛は組事務所に連れて行ってくれるようにと栄次に頼んだ。衛の顔はずいぶんと強張っている。 「運転手が違いますね。ヒロさんは?」 「ああ…、あいつ、きっちりカタを付けておけと言ったのに……」 栄次が口の中でぼやく。 ヒロが最近組員からの妨害を受けていることは知っている。組に来てまだ半年と日が浅いヒロが、いきなり四代目の声掛かりで自分の盃を受けること...
真昼の月 | 2018.09.16 Sun 08:58
◇◇◇ ◇◇◇ 「衛さん、いきなりどうしたんですか?」 学校帰り、いつもの場所に停められた車に乗り、運転席を見るなり衛は組事務所に連れて行ってくれるようにと栄次に頼んだ。衛の顔はずいぶんと強張っている。 「運転手が違いますね。ヒロさんは?」 「ああ…、あいつ、きっちりカタを付けておけと言ったのに……」 栄次が口の中でぼやく。 ヒロが最近組員からの妨害を受けていることは知っている。組に来てまだ半年と日が浅いヒロが、いきなり四代目の声掛かりで自分の盃を受けること...
真昼の月 | 2018.09.16 Sun 08:02
(※)この話には、暴力的なシーンが含まれております。苦手な方はブラウザを閉じ、読まないようにお願いします。 ------------------------------ 「……よう、お目覚めか?」 まだ視界に靄がかかったようだったが、この声には聞き覚えがある。 「……溝口……」 ヒロの腕は背中で1つに縛られていた。それから、両足を曲げられ、膝裏に竹刀を噛ませて、太ももと脛を竹刀ごと縛り付けている。これでは、全く身動き...
真昼の月 | 2018.09.15 Sat 08:01
◇◇◇ ◇◇◇ 組事務所の中には人が少なかった。 取り敢えず、地下の射撃場で銃の訓練をし、そのまま格技室に向かう。誰もいないだろうけど、空手の型を浚って、それから体を動かそう。頭の中を冷静に保つために、少し汗をかきたかった。 格技室のドアを開けようとすると、「ヒロさん」と声をかけられた。溝口とよくつるんでいる男だ。名前は確か、岩井と言ったか。溝口にいつも顎で使われていて、オドオドとした顔をしている、どこかネズミを思わせる男だ。 「あの…、ヒロさんって、組長の盃を貰うって、本当...
真昼の月 | 2018.09.14 Fri 08:05
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