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私は16歳で名前はリョウ。そう、決して変わった名前ではない。ただ、私の住む世界は、あなたがたの知る地球とはかなり異なる場所なのだ。 太陽の光が血のように濃い朱色をしているのがまず特徴的だ。そしてこの世界の大気組成は、あなたがたの世界とはまるで違う。ひょっとしたら、最初に目にした時は恐ろしく感じるかもしれない。 だが私はもうこの空気に慣れっこだ。口から皮膜が出て呼吸をするシステムが当たり前になっているのだから。 「リョウ、今日の研究室はどうするんだ?」 隣りの友人タクミが、パイプから出た...
ひっそりコッソリやるブログ | 2024.06.15 Sat 18:11
僕は16歳の普通の高校生だった。名前は慎也。日常はいつも通りの学校生活、友達との雑談、テストの緊張感に包まれている。しかし、ある日の放課後を境に、僕の日常は突如として変わり始めた。 「慎也、これ見てよ。古い時計だけど、なんか変だよね」 一週間前に転校してきて友達になったばかりの春人が、校舎裏で拾ったという時計を差し出した。それは古びた懐中時計で、針が反対向きに動いていた。 「おかしいな、壊れてるのかな?」 僕は首を傾げながら時計を覗き込んだ。 「時計の針を進めてみようよ」 春人は意味...
ひっそりコッソリやるブログ | 2024.06.15 Sat 18:07
教室の窓際に座ると柔らかい日差しが差し込み、机に広げたノートの上に影を作った。僕は16歳の普通の高校生だが、アニメ好きの、いわゆるオタクと呼ばれる人間だ。ノートに描いたアニメのキャラクターたちは、僕の心の中で生き生きと動き回っている。 今日も授業が終わると、すぐにアニメの話題で盛り上がる、僕たちだけの時間が始まる。 「なあ、昨日の『エターナルファンタジー』見たか?」 隣の席の田中が興奮気味に話しかけてくる。彼は眼鏡をかけた細身の男子で、僕と同じくアニメ好きだ。 「もちろん! あの戦闘シー...
ひっそりコッソリやるブログ | 2024.06.15 Sat 17:52
JUGEMテーマ:ものがたり 電話のベルが鳴る。真夜中に電話のベルが鳴る。時刻を確認したわけではないけれど、確かに真夜中だと解った。のろのろと枕元の受話器に手を伸ばし持ち上げる。 「俺だよ、解るかな?」 聞き覚えのない声だったけれど、誰の声かはすぐに解った。庭の古木の声だ。我が家の小さな庭で一番古い木。私が生まれるずっと前から我が家の庭にいた大樹だ。 「解るよ。どうしたのこんな時間に」 私が尋ねると、古木は少しの間沈黙して、薄く笑った。 「時間か。こんな時間、あんな...
pale asymmetry | 2024.06.04 Tue 18:01
夕暮れ時、オフィスビルの一室から見える景色は、どこか憂鬱を帯びていた。画面に映る数字と文字が目に焼き付き、頭痛がする。そんな日々が続いていた。私はふとした瞬間に、心の奥底で何かが欠けているような感覚に襲われることがある。それは、明確な形を持たない、漠然とした渇望だった。 「また残業かよ、亮介」 隣の席の高橋が、心配そうな目で私を見る。彼はいつも定時に帰るタイプで、私の働き方を理解できないらしい。 「ああ、ちょっとな」 私は無理に笑顔を作り、高橋に応えた。しかし、心の中では、...
ひっそりコッソリやるブログ | 2024.06.01 Sat 20:26
【エピソード1】:思いがけない出会い それはいつも通りの何気ない一日だった。少なくとも、その時の私はそう思っていた。太陽が雲間から控えめに顔を出し、秋の冷たい空気を暖めようと奮闘している。 私はお気に入りのカフェへと向かっていた。そこは私の避難所であり、慰めとインスピレーションを見つける場所だった。風に髪を弄(もてあそ)ばれながら、私は次の執筆プロジェクトに思いを馳せていた。 カフェの扉を押し開けると、暖かさと会話のざわめきが私を迎えた。私はいつものように窓際の席に向かった。そこは窓...
ひっそりコッソリやるブログ | 2024.05.31 Fri 14:14
JUGEMテーマ:ものがたり 歩道の街路樹が涙に暮れているように見えたので立ち止まる。この木の根元を掘り返せば骸骨が埋まっているかもしれないなと考える。それはたぶん私の骸骨で、だから今街路樹に手を伸ばしている私はもうこの世の事象ではないのだ。それならばこのまま車道に飛び出しても、行き交う車は私には何の手出しも出来ないだろう。もちろんそんなことはしない。私ははっきりと生きていて、街路樹の根元には骸骨は埋まっていない。この街路樹は桜ではないということがその証拠だ。車が吐き出す穢れを浴...
pale asymmetry | 2024.05.19 Sun 18:37
JUGEMテーマ:ものがたり 重く錆びた眠気と戦いながら、幻獣に化粧を施した。全身を紫紺の長い毛で覆われた幻獣。額には尖った円錐の角が生えている。その角は瑠璃色に煌めいていて、呼吸をするように全体が明滅を繰り返していた。その光はそんなに強くはなかったけれど薄暗い室内ではかえって眠気を増幅するような絶妙な光量だった。 「どうだ。良い感じかな?」 紫紺の幻獣が訊いてくる。この部屋には鏡がないので、化粧の出来は私に委ねられている。幻獣はもちろん私のことを信頼しているけれど、私自身...
pale asymmetry | 2024.05.17 Fri 20:40
夜の帳(とばり)がゆっくりと街に降りる中、街灯の光が湿った歩道に映り込んでいた。私は目的もなく歩いていた。心は重く、思考は乱れていた。 仕事を終え、またしても遅くなって帰路に就くと、人生が軌道を外れているような気がしてならなかった。何か気持ちを立て直すものが必要だった。全てが失われたわけではないと思わせてくれる何かが。 そんな時、小さな暗い路地に佇むそれを見つけた。木彫りの看板と赤いビロードのカーテンが特徴的なワインバーだった。何が私をその場所へと引き寄せたのかはわからなかったが、そ...
ひっそりコッソリやるブログ | 2024.05.17 Fri 16:11
JUGEMテーマ:ものがたり アビゲイルはある朝自分が体温計であることに気づいた。それは鏡の前に立って、そこに映し出された姿がどう見ても体温計だったからというわけではない。ベッドを出て洗面台の鏡を見つめたとき、そこに映し出された姿は昨日と同じ顔をした少し尖った少女だった。ただそれが自分だと、彼女はすぐには気づけなかったのだ。そこには僅かな変化が秘されていたのかもしれない。鏡の奥にその変化が織り込まれていて、それは見えないけれど感じ取れたのかもしれない。その可能性を、彼女は鏡を睨ん...
pale asymmetry | 2024.05.14 Tue 21:08
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