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JUGEMテーマ:ものがたり 「それは犬の場合もあるし、猫の場合もあるし、猿だったこともあると聞いている。とにかくどのような動物であったとしてもその体色は黒で、時折ニンマリと笑うのだ」 祖父は扉の前でそう説明した。僕らは廊下に戻っていた。何の変哲もない日本家屋の内部に。その光景を見つめていると、扉の向こうで見た風景は幻にしか思えなかった。 「そういう存在を視界の隅に感じるようになることが、扉を開けられる者になったという証なのだ」 廊下に戻るときも僕が扉の開け閉めをした。僕...
pale asymmetry | 2025.08.13 Wed 18:29
JUGEMテーマ:ものがたり 視界の隅に黒猫がうろちょろするようになった。その猫は時々僕を見つめて立ち止まりニンマリと笑う。もちろんそれは実際に存在する猫ではなかった。猫の幻影だ。目の機能に何か問題が発生しているのかもしれないと思って、母にそのことを打ち明けた。もちろん心の問題という可能性もあるだろうけど、そういう感じは全くしなかったのだ。母は僕の話を聞くと、すぐに祖父に電話した。そして「お祖父ちゃんが会いたがっているから、行ってきなさい」と言う。祖父はもちろん眼科医ではない。心...
pale asymmetry | 2025.08.12 Tue 20:05
JUGEMテーマ:ものがたり 箱は固く閉じられているが、中には龍が閉じ込められているのだという。ただしそれは本物の龍ではないらしい。もとより龍は架空の生命体なので、そんなものは実在しないことは自明のことだけれど、仮に実在していたとしても、それそのものが閉じ込められているというわけではないということらしい。私にとってはどちらでも良いことだ。龍の実在について信じたことも疑ったこともない。それが実在していようといまいと、私の日常には影響がない。それは私にとっては何らエフェクトになり得な...
pale asymmetry | 2025.08.05 Tue 18:05
JUGEMテーマ:ものがたり 庭の端っこで、箸が踊っていた。はしゃぐように踊っていた。大粒の夕立が降り落ちていて、その雨滴と戯れるように踊っていた。いや、実際に戯れていたのかもしれない。だって箸は自分の意志で動き回ったりはしないから、当然その箸は普通の箸ではないはずだ。箸に見えるだけで妖怪のような不可思議な存在なのかもしれない。ただ見た目は普通の箸だった。それは祖父の箸だった。私の祖父は自分の箸を自分自身で作る人だった。何処かから手に入れてきた黒檀から、いつも自分用の箸を削り出し...
pale asymmetry | 2025.08.04 Mon 19:51
JUGEMテーマ:ものがたり 物の本によると、一角獣は麒麟の異名なのだという。私のなかでは麒麟と一角獣の姿形は似ても似つかないイメージなので、これには大いに違和感を感じている。ただ古い麒麟は一本角だったそうで、一本角を有する獣を総じて一角獣と呼ぶのならば、異名と言うよりは一角獣の中に麒麟も含まれるということになるだろう。これならばさほど違和感も涌かない。しかし進化の過程で麒麟の角は二本になってしまっているではないか。それなら、一角獣のカテゴリーに含めることはもう困難なのではないだ...
pale asymmetry | 2025.08.01 Fri 18:19
JUGEMテーマ:ものがたり つまり僕は秘密を展開するためにこの場所に居るのだろう。そのことに気づいた途端に、風景が一変する。極舎の周囲はパーキングが取り囲んでいて、無数の篝火と多脚ドローンが群れていたはずだった。けれどもうそれらはなく、局舎の周りは荒野と砂漠が入り混じったような風景になっていた。遠くには低い岩山の稜線が横たわる獣のように感じられた。その獣は微睡みながら、舟の月に乗り込む術を考えているように感じた。あるいはそれを食して、自分自身が舟に変化しようとしているのかもしれ...
pale asymmetry | 2025.07.31 Thu 18:03
JUGEMテーマ:ものがたり 橙色の篝火は冷徹にささくれ立っているように見えた。その炎は熱くも思えたし、冷たくも思えた。手を差し入れて確認したい気持ちを僕は抑えた。炎なのだから、熱くても冷たくても僕の手は傷つくだろうと思えたから。それにその熱の有無を確かめることは禁忌だと思えた。極舎から繋がる世界に留まりたければ、犯してはいけない規則の一つだろうと思えたのだった。篝火の狭間には幾つもも多脚ドローンが群がっていた。その前端には三角錐の長い角が飾り付けられている。あるいはそれは某かの...
pale asymmetry | 2025.07.29 Tue 18:26
JUGEMテーマ:ものがたり レジカウンターの向こうには、一つ目のロボットがひっそりと佇み、こちらを見つめている。腕はなく一本脚で、丸い目はルビーのような色彩で、そのすぐ下にスピーカーらしきものが見える。そこから声が響いた。 「ここは寒いです。けれど世界とはそういうものだと私は思うのです」 僕はロボットをじっと見つめ、その言葉の意味を探る。そしてすぐにこれは探ってはいけない言葉なのだと気づいて、遊戯を強化するために言葉を選ぶ。 「それにしても寒すぎるよ」 ロボットは少...
pale asymmetry | 2025.07.28 Mon 18:17
JUGEMテーマ:ものがたり その私は都市の最も高い場所に立って、両腕を天に向かって精一杯伸ばしている。時刻は未明。月はもう沈んでいて、星々の瞬きは弱まり、しかし朝はまだ全くの黎明で、つまりその薄暗い天空は誰にも統治されていないのだった。それならばその私にも統治できる可能性が与えられているように思えたりもするけれど、それは誤った認識で、なぜならばその私は統治する者から拝受するためにその場所に立っているのだった。それならば統治者は何処にいるのか。その存在は飛来するのだ。本来はあるは...
pale asymmetry | 2025.07.25 Fri 18:07
JUGEMテーマ:ものがたり 花がすっかり腐敗してしまったので、私は火を熾さなければいけない。その火は最初橙に燃え上がり、すぐに碧く澄んで、やがては翡翠色に煌めくだろう。私はその炎に手を翳し、しっかりと皮膚が冷まされることを感じ取らなければいけない。つまりその炎はこの世のものではなく、あの人を送り出すための導なのだ。あの人はその炎に導かれ、私との一時をしっかりと封印して去って行く。燃え上がる色彩の変化を見つめながら、私は封印される想いの記憶を心に刻むのだ。それは、腐敗した花が今な...
pale asymmetry | 2025.07.16 Wed 18:06
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