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JUGEMテーマ:ものがたり 月の裏側まで届く大きな円を描きたければ、小さな、とても微細な螺旋を積み重ねていくしかないのです。どうして微細な螺旋なのかというと、なまじ大きな螺旋を積み重ねれば、自重によって沈んでしまい、月の裏側はおろか中天の裾にまでさえ届かないからなのです。大きな円で月と私たちを囲い込んでしまうのは、これ以上月が私たちから離れていくのを抑えるためなのです。このままでは月は奔放に旅立ってしまい、私たちと遊戯する約束の兎までもが、連れられていってしまうからなのです。そ...
pale asymmetry | 2025.10.06 Mon 18:06
JUGEMテーマ:ものがたり 繊細な破片たちの群が、螺旋の軌道を描いて漂流している。破片たちは繊細過ぎるから、激しく翻ることで自身の形を隠している。本当の姿が解らないから、破片たちの本性も解らない。いやそうではなく、翻りそのものが破片たちの形なのかもしれない。この形は識っている。生命の根源的な形だ。流麗な振る舞いが織り込まれた形だ。昏い宙をでんぐり返しし続ける破片たち。その宙の端々は過剰に展開を繰り返していて、だからでんぐり返しは際限なく加速され、その群が描く螺旋軌道も果てしなく...
pale asymmetry | 2025.10.05 Sun 21:39
JUGEMテーマ:ものがたり 同語反復のコードに、一日中埋没していた。一日中埋没した結果として、これは私が欲していたコードではないと結論するしかなかった。一日を無駄にしたという想いはない。埋もれていたコードの、その群のなかには有益だと感じるものもたくさんあったし、好みの様式もたくさんあった。ただ全体として、私が蒐集するコード群ではなかったというだけだ。それに私の一日が、全く無駄にできないほど貴重な時間だけで構築されているのかというと、そんなことはない。むしろ無駄を重ねることで構築...
pale asymmetry | 2025.10.04 Sat 18:08
JUGEMテーマ:ものがたり 庭で木々の剪定をしながら、花と水とそれらに付随する事象について考える。鋭い陽光が邪魔をするし、漆の枝に細心の注意を払わなければいけないから、上手く集中することができないけれど、それでも考えてみる。花と水といっても、この庭の花と水ではない。ここから遙かに離れた大陸の砂漠に咲く花と、その場所に注がれる水のことだ。それは盃のような形の、瑠璃色の都市に咲く花のこと。その盃の内面に螺旋状に形成された街路を有する都市の夜のこと。月は満月か、あるいは十六夜だ。少し...
pale asymmetry | 2025.09.23 Tue 17:30
JUGEMテーマ:ものがたり その瑠璃の色彩は海であり、だからこそそれは宇宙である。つまりそれは夜にも通じるが、夜に溶け込んでしまってはいけない。したがってそれが夜から浮かび上がるためには月光が必要なのだ。夜が知性の象徴ならば、月光は狂気の象徴だろう。しかしながらこの二つを善と悪になぞらえて対比するのは間違っていると考える。例えば夜が清浄で、月光が穢れであったとしても、この二つの事象は善悪を超えた次元の事象なのだと私には思えるのだ。とくにその瑠璃が、金の煌めきを含有していたりすれ...
pale asymmetry | 2025.09.21 Sun 18:17
JUGEMテーマ:ものがたり ある朝目が覚めると、彼は小さな蜘蛛に変化している自身に気づいた。彼は軽く跳ねてみる。予想外に軽やかに高く跳ね飛ぶことができた。ベッドサイドの姿見に映った自分の姿を見る。その姿は指先に乗れるほど小さなハエトリグモだった。彼は少しほっとした。ハエトリグモが巣を張り巡らさない蜘蛛だと知っていたから。つまり彼は美しい蜘蛛の巣を張り巡らす自信がなかったのだ。自分には絵の才能はないし、デザインに精通しているわけでもないし、そういう事に役に立つようなセンスを持ち合...
pale asymmetry | 2025.09.17 Wed 19:40
JUGEMテーマ:ものがたり 小さな女の子が池の水面から顔を出す。濡れた黒髪が十六夜の月光を弾いて黄金に染まる。水面には幾つものまん丸い葉っぱが浮かんでいる。それは月光を上手に受け取れないのか、黄金に染まってはいない。そんな葉っぱの一つに女の子は掴まり、何かを叫んでいるようだ。口が大きく開かれ閉じられまた開かれる。でも声は全く聞こえない。距離のせいかと思って、水面に顔を近づけてみるけれど、やっぱり声は聞こえない。女の子の声はこの夜の空気を震わせることはできないらしい。あるいは、こ...
pale asymmetry | 2025.09.11 Thu 18:12
JUGEMテーマ:ものがたり 「どんな軌道を描いたのかは、厳重に秘匿されなければいけない」 そう呟いて目が覚めた。キーの高い濡れた声。その自身の発した声を聞いて覚醒したのだった。ということはたった今まで眠っていたということになるのだろうか。そんな感じはしない。むしろ微細な無数の破片として漂っていたものが一つに集合したような感じだった。それは惑星が形成されるような感覚に近かった。いや、そんな感覚を識っているわけがないから、これは空想に過ぎない。そんな気がしただけだ。もちろん自分が...
pale asymmetry | 2025.09.07 Sun 18:29
JUGEMテーマ:ものがたり 都市の中央には高い尖塔があって、その天辺に彼は立つ。いや、彼ではなくて彼女かもしれない。あるいは彼でもあって彼女でもあるのかもしれない。そういうわけで、彼や彼女ではなく螺旋のコマと呼ぶしかない。あるいはただ単にコマと呼ぶことにしようか。それは特別な存在だから、無限の回転に対する敬意を込めて。そして無限の展開に対する敬意も込めて。夜は最も深い領域から少しだけ浮かび上がっている。黎明の時間まではまだ道程があるだろうけれど、歩みを続ければ確実に黎明に触れる...
pale asymmetry | 2025.09.06 Sat 17:49
JUGEMテーマ:ものがたり 蝶を踏み潰すあなたを見て、吐き気を催す。その蝶は色鮮やかで、陽光に煌めいていて、叡智が織り込まれていたように思えた。けれど吐き気を催してしまったのは、そのせいではない。その蝶の形態が潰されてしまったせいではない。その蝶を踏み潰したことで、あなたが穢れてしまったように感じたからだ。そして穢れてしまったあなたに魅了されている自身に気づいてしまったからだ。自分が穢れたわけではないのに、他者の穢れに見せられてしまうなんて、私は罪深いと感じてしまった。こんな私...
pale asymmetry | 2025.09.05 Fri 17:55
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