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JUGEMテーマ:ものがたり 隻脚のカラスは洞なのだという。つまりその内部に洞を抱えているということなのか。しかし少年が抱える洞こそが、隻脚のカラスなのだという。それならカラスは洞そのものということになる。あるいは洞というものを成立させるには、枠が必要だと考えることも出来る。その枠の内部に何もなく、空洞になっているというのならば、それは洞だろう。であるならば、隻脚のカラスとは洞を成立させるための枠なのかもしれない。少年は洞を抱えていて、それを自覚するためにカラスが存在している。そ...
pale asymmetry | 2026.06.17 Wed 19:48
JUGEMテーマ:ものがたり これは迷える山羊の寓話。千年後に咲くという花を待つ山羊の寓話。 その山は碧白い炎に包まれていて、だから何者も近づくことは出来ない山でした。断崖を駆け上ることに長けた山羊でさえ、炎に逆らう術はなく、その山に分け入ることは出来ませんでした。迷える山羊は、燃え続ける山の麓でただその碧白い炎を見つめ続けることしか出来ませんでした。山羊はその山の山頂に咲くという花を待ち続けていました。それが咲くのは千年後だと言われていましたが、それでもその花を待ち続けてい...
pale asymmetry | 2026.06.11 Thu 20:32
JUGEMテーマ:ものがたり 「まずは宙で踊らせる」 その人はそう言いながら、茶葉を集めて舞い上がらせた。 「そして地を走らせる」 言いながら、茶葉を撒き散らすように広げる。 「さらに縒り合わせ解く。それを繰り返す」 作業場には空気の流れがなく、熱は何処にも逃げていかない。だから呼吸をすると喉が熱く感じた。その熱のせいで、作業場の時間もよれているような気がした。その人の手は動き続ける。踊らせる、走らせる、縒り合わせる、解く。繰り返されていくその動作によって、茶葉は徐...
pale asymmetry | 2026.06.04 Thu 18:27
JUGEMテーマ:ものがたり 最初のイメージは夜の砂漠だ。風景の端々まで砂の大地が広がっている。それはゆるやかに波打っていたけれど、やわらかい感じはしなかったから、風などのやわい作用によって形作られたものではないと思えた。ではどうやってその波は地面に写されたのか。彼はそれを考えて、少し気持ち悪くなった。それが写された事象であるということを知っている自分のことが気持ち悪く感じたのだ。けれどそんなはずはないと否定することは出来なかった。確かに彼は知っていたのだ。砂漠の空は月光に満ちて...
pale asymmetry | 2026.05.30 Sat 18:27
JUGEMテーマ:ものがたり 寄り添い並ぶ二つの太鼓の一方は太陽を象徴していて、もう一方は月を象徴している。太陽には三つ巴が描かれていて、月には二つ巴が描かれている。何故太陽が三つで、月が二つなのだろうか。テレヴィジョンのモニタでそれらの太鼓を見て私は考える。連なって躍動するのは勾玉に違いないから、それが三つ重なることと二つであることに、どのような差異があるのだろうか。そしてこれはおそらく次元が違うのだろうと思った。あるいはそのまぐあいの深度が違うのかもしれない。いずれにしても、...
pale asymmetry | 2026.05.27 Wed 15:59
JUGEMテーマ:ものがたり エクスサイクルという概念が提唱されたとき、それが構築する世界をはっきりと描けた人はいなかっただろう。これは単に情報あるいは文字列による世界の再定義や再構築ということではなかったのだけれど、再定義や再構築された世界のイメージを提示できる者が誰もいなかったのだ。この概念を提唱した数人の研究者でさえ、この新たな世界の風景を後頭葉のモニタに投影出来ていたかというと、おそらくそうではなかっただろう。では何故それが出来なかったのか。それはつまりこの再定義や再構築...
pale asymmetry | 2026.05.18 Mon 17:54
JUGEMテーマ:ものがたり 例えばそれは遠い遠い惑星での話。けれど出発点はもちろんこの惑星。この惑星の街角。街路に面したカフェのテラス席。梅雨間近の空模様は少し鬱な感じ。けれど風は爽やか。そして少し冷ややか。だから彼は温かいフルーツオレを飲んでいる。八種のフルーツがミックスされたもの。彼女はアイスティー。厚めのコートを着ているくせに、そんなものを飲んでいる。澄まし顔で寒さを感じさせないけれど、本当にそうだろうか。でも彼は深く詮索しない。その澄まし顔がそういう振る舞いを許さないよ...
pale asymmetry | 2026.05.16 Sat 18:16
JUGEMテーマ:ものがたり 小さな庭には、温い曇天が流れ込んでいた。空は晴れ渡っていたのだけれど、その庭に陽光は上手く届いていないようだった。もちろんそのようにその庭は造られていたのだ。常に温い曇天が庭全体に蹲るように。この庭の植物は、皆そういう曇天を好んでいたから。もちろんこの庭の主も。庭の中央、こんもりと盛り上がった地面は豊満な苔を纏っている。温い曇天がその表面に微細な無数の雫を散りばめ、弱すぎる光にもそれは騒々しく煌めいている。宝石の様な煌めきではない。昆虫のような煌めき...
pale asymmetry | 2026.05.14 Thu 18:04
JUGEMテーマ:ものがたり 兎は見知らぬ街を歩いている。見知らぬ街であるはずなのに、自分がこの都市に帰還したのだということを知っている。それはとてもおかしなことなのに、それは確かなことだと思っている。ゆるやかな風は少し湿っていて、温い誘惑を兎に撫でつけようとしている。宵の街は無数の色彩に溢れていたけれど、静かだった。とても静かだった。街路は人で溢れかえっていたのに、誰も会話していない。まるで沈黙の行をしているかのようだ。それどころか息づかいさえも感じることが出来ない。皆流れに乗...
pale asymmetry | 2026.05.01 Fri 20:43
JUGEMテーマ:ものがたり 誰が捉えるかで、世界の見え方は全く違う。それは当然のこと。客観的な世界などないのだろう。全てが誰かの主観的世界なのだ。そうであるのならば、誰の主観を採用するかを考えなければいけない。何を基準として選べば良いのだろうか。いや、それ以前に誰と誰の主観が採用可能なのかを確認しなければいけない。そしてそれは私とわたしと彼の、三つの主観から選ぶことになるだろう。さらには、私とわたしは時系列上で繋がり合う主観だから、私たちと彼の主観のどちらかを選ぶことになる。そ...
pale asymmetry | 2026.04.30 Thu 18:03
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