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JUGEMテーマ:ものがたり 目が覚めたら、左手の掌からギンネムが生えていた。ちょうど窓の外が明るくなる頃だったので、ギンネムの葉がゆっくりと開いた。ギンネムも目覚めたのだなと思った。私と一緒に眠っていたのだろう。昨日、庭いじりをしてギンネムの子供をたくさん抜いた。今年は何故か庭の一角にギンネムが大量に生え始めたのだ。このまま放っておくと、庭がギンネムに占領されてしまうと思い、片端から抜きまくった。たぶんそのせいかもしれない。そのとき何かの拍子に、ギンネムが私の手に宿ってしまった...
pale asymmetry | 2024.11.03 Sun 21:05
JUGEMテーマ:ものがたり 「冷蔵庫のには卵と飲み物が入っています」 案内人は部屋の一角を指差す。広い部屋の隅に遠慮がちに小さな冷蔵庫。その隣に小さな棚があり棚には炊飯器と食器類が収められている。さらにその脇には小さなシンク。おそらく使い終わった食器類はを洗うためのものだろう。どれも小さく肩身が狭そうに配置されていた。それは部屋の中央に、というか部屋の面積の大部分を大きな制御盤が埋めていたからだ。 「炊飯器には常にご飯が炊かれています。棚の一番下の扉を開ければ各種の調味料や...
pale asymmetry | 2024.10.30 Wed 20:50
JUGEMテーマ:ものがたり 長い廊下は真っ直ぐに伸びている。行き止まりは遙か先で見えない。あるはずのない世界の果てまで続いているのではないかと思わせる廊下だ。廊下には毛の長い絨毯が敷かれていて、それは黒と白の市松模様。四角い黒と四角い白は、何故が蝶に見える。眠っていて、楽園の夢を見ている蝶に見える。その楽園は地獄から構築されているのだけれど、蝶たちは眠っているのでそのことに気づいていない。廊下の両側にはずらりと扉が並んでいる。それはメタリックシルバーで、廊下を照らす淡い照明を鋭...
pale asymmetry | 2024.10.26 Sat 18:54
JUGEMテーマ:ものがたり 少女たちは、列を成して歩いていた。風と戯れるように歩いていた。漆黒の羽織袴を身に纏い、胸に百合の花を抱いて歩いていた。夕暮れ時にはまだ早い午後の遅く。少女たちは岬に向かって歩いて行く。風に弄ばれる長い黒髪は、真っ直ぐに踊っている。陽光を翠に弾くその黒髪は、風がなければ生真面目なほど真っ直ぐに背中に落ちる髪なのだった。前髪だけが、眉毛の上で短く切りそろえられている。その前髪も風と戯れるように揺れていた。同じ髪型、同じ衣装、同じ花を抱えた少女たちが、岬へ...
pale asymmetry | 2024.10.22 Tue 18:36
JUGEMテーマ:ものがたり それでもまだ灼熱だ。その理由はロングストーリーだ。だからもう山賊たちに委ねるしかない。彼らは宴が大好きだ。連日連夜のどんちゃん騒ぎ。そして気がつけば超望月。けれどまだ黄昏時で、杯を満たすには少し早い。しかも狩猟の月なのに、昼寝ばかりで獲物を全く得ていない。酒だけを頼りに夜を迎えるわけには行かず、山賊たちは鉈を手に、暮れる前に狩らねばならないと動き出す。こんな時刻から狙うとしたらそれは棺しかない。きっと日暮れ時だから大蜥蜴の棺が通るはずだと、山賊たちが...
pale asymmetry | 2024.10.18 Fri 19:52
JUGEMテーマ:ものがたり 「私、胃の中に砂糖蛙を飼っているんです」 カウンター席で、先輩の向こうに座る蛙女が言う。彼女自身が蛙女と呼んで下さいと自己紹介したのだ。たまたまバーのカウンター席で僕と先輩が飲んでいるところにやって来た蛙女と、何となく親しくなりそんな自己紹介をされたのだった。 「勝負しませんか」 そう言ったのは蛙女からだっただろうか。それとも先輩からだっただろうか。あるいはどちらも明確に言葉にしたわけではなかったけれど、いつの間にかそういう雰囲気になったのか...
pale asymmetry | 2024.09.30 Mon 21:15
JUGEMテーマ:ものがたり 肺呼吸する機械が湖に沈んでから、四半世紀が経っている。その瞬間を僕は見ていない。僕が生まれる前の出来事だからだ。肺呼吸する機械は溺死の夢に取り憑かれて、湖に足を踏み入れたのだという。もっとも、肺呼吸する機械は脚を有してはいなかったからこの表現は正確さに欠けるかもしれない。肺呼吸する機械の下半身にはキャタピラが装備されていて、スラスターによってごく短時間なら飛翔することも出来たのだという。翼を持っていなかったので、その飛翔はとてもよちよちした感じだった...
pale asymmetry | 2024.09.13 Fri 19:10
JUGEMテーマ:ものがたり ・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第93回です。 他のページはコチラ→双子の聖女は運命を入れ替える1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/34/35/36/37/38/39/40/41/42/43/44/45/46/47/48/49/50/51/52/53/54/55/56/57/58/59/60/61/62/63/64/65/66/67/68/69/70/71/72/73/74/75/76/77/78/79/80/81/82/83/84/85/86/87/...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2024.09.09 Mon 21:26
JUGEMテーマ:ものがたり 曾祖母は昔生け贄だったのだそうだ。どういう類いの生け贄だったのか、生け贄であったのにどうして九十五歳まで長生きすることになったのか、その辺りの事情は誰も知らない。もちろん知っている人はかつてはいたのだろうけど、そういう人たちは皆もうこの世にはいないのだった。そして曾祖母はその辺りのいきさつを語ることはなかった。祖母や母や私も何度か尋ねたことがあったけれど、決して語ることはなかった。語りたくないほどに辛い物語なのか、それとも単に忘れてしまったのか解らな...
pale asymmetry | 2024.09.08 Sun 19:10
JUGEMテーマ:ものがたり 「花が開くように、両手を翳すのが重要なのですよ」 先生はそう言いながら両手を天に向かって伸ばしました。両手の指がささやかな風と戯れるようにやわらかく曲がっていて、それは楽園に咲き開く花のようでした。陽光を浴びて七色に輝く花のようでした。そういう花が楽園には咲いているのだと、以前先生が言っていたのでその花が見えたのかもしれません。 「こうして回せば、綺麗な円が描けるのですよ」 先生はその花を、いいえその両手を、陽光を絡め取るように踊らせました。...
pale asymmetry | 2024.08.28 Wed 20:44
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