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JUGEMテーマ:ものがたり 歩行のための脚を、非属の巨人は有していなかった。そして歩行以外のための脚も、非属の巨人は有してはいなかった。結局のところ、非属の巨人は脚というものを有していなかったというわけだ。では非属の巨人は歩かなかったのかと言えばそうではない。非属の巨人には長い二本の腕があったから、それを使って前進していた。両腕を地面につき、肩関節を軸に身体をでんぐり返りさせ、その後に腕を回して前方につく。それを繰り返すことによって、回転の分だけ前進していった。 「我々と同じ...
pale asymmetry | 2022.10.14 Fri 21:26
JUGEMテーマ:ものがたり ひどい頭痛を抱えていた。加速飲料を六百濃縮にして脳に流し込まなければやってられない気分だった。けれどその直前で上司からのコールがはいり台無しにされる。 「すまないね」 全くすまなそうには思っていないだろう口調で、モニタのなかの上司は薄笑いをしている。右足の踵で蹴り飛ばし、モニタを粉々にしたかったけれど、仕事を失うわけには行かなかったので私も薄ら笑いを返す。こういうのが社会性というものならば、私はクソだなと心の中で考えながら。 「君でないと何と...
pale asymmetry | 2022.10.12 Wed 21:31
JUGEMテーマ:ものがたり 「おい、おい」 野太い超えに眠りから覚まされた。暗い部屋を見回すが誰もいない。 「違う、外だ」 ベッドから出て窓のカーテンを開く。ベランダの柵にミミズクが一羽とまっていた。半月の月光がミミズクを斜めに照らし、そのグレーの身体を煌めかせていた。 「伝えたいことがある。窓を開けてくれ」 声は確かにミミズクから聞こえてきた。僕は窓を開けてベランダに出る。何故だかそのミミズクに触れたくなったのだった。 「待て」 ミミズクが翼を大きく広げた...
pale asymmetry | 2022.10.07 Fri 20:40
JUGEMテーマ:ものがたり チェックインして部屋に入ると、僕は西に面した大きな窓を全開にした。相棒は背後で何かごそごそしている。たぶん竿を組み立てているのだろう。窓から顔を出すとかなり下に川面。幅の広い川は流れが速そうだった。 「水面までどのくらいありそう?」 相棒が訊いてくる。 「目測約20メートルってところかな」 「オーケー、サンキュー」 金属質な機械音、そして甲高い電子音。相棒はどでかいエンジンリールをロッドに装着し、それを窓から突き出した。 「ワイヤーライ...
pale asymmetry | 2022.10.01 Sat 21:24
JUGEMテーマ:ものがたり 僕らは寝そべっていた。岬の先端のパーキング。風はそよ吹く東風。涼風のような、そうでないような微妙な感じ。日差しが鋭すぎてよく解らない。午後も遅い時間なのに、陽光は猛っている。パーキングには僕らしかいなくて、だからその陽光は僕らに対して怒っているようだ。でも、僕らの方も陽光に対して怒っていた。傍らに立てたソーダが、すぐ温くなる。車に戻ればクーラーボックスに冷えたのがまだたっぷりとあるけれど、面倒なのでどちらも寝そべったままだ。 「誰もいないね」 ...
pale asymmetry | 2022.09.29 Thu 21:13
JUGEMテーマ:ものがたり 雨が上がると風は北に廻った。その成分に冷気が含まれ、季節を惑わす空気を攪拌する。急に踊りたくなって、私は砂浜に素足で下りる。雨を十分に吸収したはずなのに、砂はまだ温かかった。この熱はどこからもたらされたのだろう。どの宇宙からここにやって来たのだろう。意味もなく考え、その思考が浮かび上がらせるエネルギーを手足に込める。 私は跳ねる。私は飛ぶ。私はくねる。私は旋回する。 「まだまだ足りないわよ」 いつの間にか波打ち際に少女が立っている。口の端に...
pale asymmetry | 2022.09.26 Mon 20:39
JUGEMテーマ:ものがたり それは宝石のような人だった。色が、輝きが、形が、質感が、というわけではない。雰囲気がそんな感じだったのだ。 祖母が引き出しを開けると、その小人が私と祖母を見上げていた。引き出しの中の椅子に腰掛けたまま。 「誰にも内緒だよ」 祖母が唇に人差し指を立てる。とても真剣な表情だったので、私は強く頷いた。 「うん、誰にも言わない」 私の返事を聞いて、祖母は微笑む。そして私の頭を撫でてくれた。その手はとても重く、けれどとてもやわらかかった。ぽかぽ...
pale asymmetry | 2022.09.21 Wed 21:25
JUGEMテーマ:ものがたり 都市の電飾はまばらだったけれど、それでも星は見当たらなかった。誰かが奪ったのかもしれないと半ば本気で考えながら、私は都市を彷徨っていた。肌色の真珠を抱いて。 この肌色とは私の皮膚の色ではない。この色彩は、少女の皮膚の色だ。今はただ純白のゴーストとなり、この都市の夜を彷徨い続ける少女の。私はその少女を追いかけている。いや、追いかけていたはずだ。今はよく解らない。少なくとも私の視覚は純白のゴーストを捉えてはいない。だから私もまたただ彷徨っているだけな...
pale asymmetry | 2022.09.13 Tue 21:50
JUGEMテーマ:ものがたり まだ月は昇っていない。けれど私は月に追いかけられている。その月は今はまだ失われている月だ。九重が九重に重なる月なのだろう。菊の花びら落ちては来ない。だから私は追われていることに気づいたのだ。そして道を駆ける。知らぬ間に見知らぬ風景の奥深くにいて、もうどこへ向かったら良いのか解らなくなる。解らないから進むしかない。立ち止まれば、追いつかれてしまうから。追いつかれたらどうなるのか、恐ろしすぎて考えられない。 唐突に、朱色の建物が現れた。地中から湧いて...
pale asymmetry | 2022.09.09 Fri 21:14
JUGEMテーマ:ものがたり 星はまだ見えるけれど、空の色はすでに夜の淫らさを失っている。涼風が、北から駆けてくる。少し湿っているけれど、十分に私の皮膚から熱を払ってくれる。浮かれてはいけない。私は自分にそう言い聞かす。意味もなく強く言い聞かす。際限なく湧き上がる熱を、風だけに頼らず私自身でも沈めるために。 海と森の境界を歩く。道は舗装されているけれど、それは人一人がやっと通れる幅で、何のために舗装したのか私にはよく解らない。まるで獣たちのために舗装したかのようだ。本当にそう...
pale asymmetry | 2022.09.08 Thu 20:40
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