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JUGEMテーマ:ものがたり 銀曜日のマイナス二時。天使雨が降り続いている。眠りのない世界が懐かしい。そこでは君だけが眠っていたから。この世界では誰もが眠っていて。その脳回路は開けっぴろげすぎる。僕だけが覚醒しているから、スクリュードライバーを手放せない。ドクターみたいにね。でも僕はちっぽけな疑似人間だから、颯爽と世界を救うことなんてできない。暗躍することだって出来ない。ただ寄り添うのが精一杯。そして寄り添っては弾かれ、痛みに重くのしかかられて、その痛みを愛するしかなくなるんだ。...
pale asymmetry | 2024.02.07 Wed 18:56
JUGEMテーマ:ものがたり 早朝の街だ。早朝だと思える街だ。太陽は見当たらないけど空は明るい。青と言うには緑味が強い色の空には、雲は欠片もない。メタリックブルーのビルディングが林立していて、都市だということが解る。都市を切り裂くように幅の広い道路が延びている。片側六車線のアスファルト道路は、早朝の光に僅かに煌めいている。その中央に私は立っている。中央分離帯の低いフェンスの上に、綱渡りするように立っている。そして私は南を向いている。直感的にそう思った。これは夢だ。それも確信でき...
pale asymmetry | 2024.01.31 Wed 18:52
JUGEMテーマ:ものがたり 真冬のプールに忍び込んだ。といっても厳重なセキュリティーを突破したわけではない。小学校の屋外プールで、低いフェンスを乗り越えただけだ。冬の間は使用されていないから、プールは冷たく沈んでいた。水は張られていない。けれど数日続いた冷たい雨が、プールの底に薄く敷き詰められていた。 「寒いね」 友達がはにかむ。真夜中の月明かりに浮かぶその横顔は綺麗だった。夜が、彼を高貴にしているように思えた。僕の横顔もそうであったら良いのにと思った。 「うん、寒い」...
pale asymmetry | 2024.01.26 Fri 18:42
JUGEMテーマ:ものがたり 予言屋がまだ世界を流離っていた頃、私はその足取りを追いかけていた。いずれその背中を捕らえられると信じていたからだ。彼が残した予言の記号は、世界樹として次元を跨いで配置されていたから、その後を追うことは難しくないだろうと考えていたのだ。結果としてそれは、間違っていたと言わざるを得ない。私の見通しの甘さがこの世界の複雑系をスイートピーの内部に閉じ込めてしまうという事態を招いてしまったのだから。きっとそれを知って予言屋は大笑いをしたことだろう。世界樹がその...
pale asymmetry | 2024.01.21 Sun 18:40
JUGEMテーマ:ものがたり 僕の心臓は宝石だ。ある日の朝そのことに気づいた。あれは終わらない夏の真ん中辺り。失われた冬が呻いているような、ひんやりとした朝だった。あの花は何だっただろう。裏路地の道端に咲いていた花。真っ赤な花だった。青い花だった。黄色の花だった。白い花だった。それは瞬きのたびに色を変える花だった。花弁の表面にいくつもの雫を纏っていた。それが未明に降った雨の雫なのか、それとも花の涙なのか、僕には解らなかった。僕の灰色の脳細胞がまともならば雨の雫だと確信できただろう...
pale asymmetry | 2024.01.13 Sat 20:58
JUGEMテーマ:ものがたり 真夜中の窓を開け放つ。流れ込む風が部屋を荒野に染める。でもありふれた荒野じゃない。それはここではない遙かな異境。愛が沈み、虚が徘徊する異境だ。眠っている私から私は浮き上がる。翼がないから飛ぶことは出来ないけれど、異境の部屋を漂うことなら容易い。この部屋はもう無限で有限。矛盾なんて意味がない。何もかもを取り込めるから異境なのだ。その風に私も染まっているのだから、私だって異境なのだ。 「小生のことを呼んだかな?」 骸骨の騎士がベッドのまわりを駆けて...
pale asymmetry | 2024.01.12 Fri 19:05
JUGEMテーマ:ものがたり 私はその子に目隠しを施した。ガラスの椅子に、その子は腰掛けている。周囲は光に満ちていて、ハレーションで溢れかえっていた。椅子のある小さなスペースの左右と前に階段が伸びている。左右の階段は上っていて、前の階段は下っている。背後は輝く壁。光の壁だ。それぞれの階段の先も輝きで何も見えない。私はその子の左手を取り、ゆっくりと立たせる。スローなシャンソンが流れ始め、私はその子の耳元に口を寄せる。 「右か、左か、それとも前か、どれにする?」 その子は首を傾...
pale asymmetry | 2023.12.29 Fri 17:57
JUGEMテーマ:ものがたり 忘れ去られた回転木馬は、その回転を失ってから時間を凍り付かせている。けれど明らかに失敗している。回転木馬は確実に朽ちていて、やがてその形を空に還すことになるだろう。それは避けられないことで、誰もそれに抗ってはいない。私一人だけでも抗ってみようか。そんな欲求に駆られるけれど、それはおそらく禁忌のはずだ。ここは移動遊園地で、そしてもうここからは何処へも旅立たない。この場所を終の寝床に決めたのは誰か。もちろんそれは私ではない。その誰かはもうこの世界にはいな...
pale asymmetry | 2023.12.23 Sat 21:29
JUGEMテーマ:ものがたり 私の畑に花が咲いた。見知らぬ花が咲いた。小春日和の正午にその花を見つけて、私は何故か切なくなった。どうしようもなく気持ちが揺り動かされたような気がした。黄金色に近い黄色の花は、真っ直ぐに天を仰ぐように咲き、真上からの陽光を受けとめている。今降り注いでいる陽光は、この花のためにだけあるのだと思えた。その光が持つエネルギーの全てが、この花に入力されるためにあるのだと。私はいつの間にか涙を流していた。哀しいわけではなかったのに、止めどなく涙が頬を伝う。私は...
pale asymmetry | 2023.12.13 Wed 19:06
JUGEMテーマ:ものがたり 仕事に出かけるために玄関の扉を開けると、そこに五分ほど前に仕事に出かけたはずの兄が立っていた。自信は持てなかったけれど、たぶん兄だと思った。どうして自信が持てなかったかというと、幼かったからだ。兄の姿は小学生くらいだった。私の記憶している幼い兄と重なる姿だと思えた。 「とても急いでいるので、詳しく説明している暇がないんだ」 幼い兄はそう言いながら右手を私に差し出した。その手のひらに折り紙の鶴がのっていた。不思議な色をしている。青にも緑にも見える...
pale asymmetry | 2023.12.05 Tue 20:40
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