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JUGEMテーマ:ものがたり 川向こうのお屋敷で当主が亡くなられたのは、未明に激しい雨が通り過ぎた後に下りてきた冷気が、風景全体を戦かせているような朝のことだった。当主は七十八歳の好好爺な人物であったそうだけれど、亡くなった次の瞬間には少女の姿に変容していたのだという。同時にその額に、幾何学的な紋様が現れてもいたのだそうだ。これは怪異に違いないが、遺族も、集落の誰しも心当たりがあって、直ちに山の上の八卦見の先生が呼ばれることになる。やって来た八卦見の先生は、少女となった当主の躰中...
pale asymmetry | 2025.03.03 Mon 20:58
JUGEMテーマ:ものがたり 前輪夜の決まり事を全てこなす頃には私は疲れ果てていた。集まった人々も集まった人ならざる者たちも、まだまだ酒宴を続けていたけれど、私は奥の座敷に引っ込んで寝転がるとすぐに眠りに沈んでしまった。夢を見たような気がする。雨の夢だったような気がする。甘い雨に溺れているような夢で、心地良く苦しい夢だった。苦い恍惚にうなされていたかもしれない。そんな私を覚醒に呼び戻してくれたのは鈴の音だった。雨に濡れ、けれど雨のような濁りのない澄んだ音色だった。これは境界でしか...
pale asymmetry | 2025.02.27 Thu 20:24
JUGEMテーマ:ものがたり ランスクロック銃を扱えるかと問われたので、私は首を振る。それを尋ねてきた黒装束の男は少し困った顔で肩を竦めた。ではすぐにランスクロック銃を扱える者を探さなければならない。それはお前の役目だと言うので、私は曾祖母に相談した。すると先隣の集落の幼子が、確か銃を扱えたはずだと彼女が言うので、そんな幼子が先隣の集落にいただろうかと訝しく思いながらも訪ねてみた。何軒か訪ね歩いてようやく見つけた家にいたのは、幼子ではなくすでに成人した女性だった。まあ曾祖母から見...
pale asymmetry | 2025.02.26 Wed 20:55
JUGEMテーマ:ものがたり サンザメクジラのコールが金星にまで届いていると発見したのは、天文学者ではなく一人の気象予報士だった。彼が行ったのはAIによる解析だった。実に二千体のサンザメクジラが発するコールを記録し、それを今流行のアニマルトランスレーションインターフェースで翻訳してみたのだ。もちろんこのシステムはまだまだ不完全で、ときどき見当外れな文章を打ち出すこともあったけれど、二千体のコールをベースにしているので、かなりの精度を期待したのだった。結果、打ち出されたのは文章ではな...
pale asymmetry | 2025.02.16 Sun 21:22
JUGEMテーマ:ものがたり 冷たい霧雨がふわふわと落ちてくる道を、少女は歩いていた。両手で包み込むようにグラスを抱えて、暗い夜道を歩いていた。そのグラスは蝋燭で満たされていて、小さな炎が灯っている。その炎は霧雨を被っても消えることはない。その炎は普通のそれではなかったから。少女にもそれは一目で解った。炎が煌めく瑠璃色をしていたからだ。それは全く揺らぐことがなく、それなのに渦巻いているように少女には感じられた。きっとこれは銀河なのだと少女は思った。どんな銀河も最初はこんな風な小さ...
pale asymmetry | 2025.02.08 Sat 20:09
JUGEMテーマ:ものがたり 庭の真ん中に突き出るように佇む石は、先端が鋭く尖った歪な角錐形で、青白く濁った色彩だった。私は石には詳しくはないので、それがどういう種類に分類される石なのかは解らない。ただ眺めていると、強い孤独を感じる石だった。この石は千年万年前からこの場所に佇んでいて、ずっと孤独だったのではないかと思えるのだった。表面はざらざらしているように見える。でも実際に触れたわけではないので、本当にそうなのかは解らない。触れることは禁忌だったので、この先も私がその感触を知る...
pale asymmetry | 2025.02.06 Thu 21:09
JUGEMテーマ:ものがたり 「みぞれだけは宿るのですよ」 やわらかなベンチシートの傍らに立つ館長が、外の風景を見つめながら唐突に言う。彼が見つめる先でみぞれが降っていたのかというと、そうではない。どんよりと曇っていて、そのグレーに空気が染められていたし、その空気は重く冷えていたから、みぞれが降り出してもおかしくないような風景だったけれど、今はまだ降ってはいない。彼がこのタイミングでみぞれという言葉を口にした意味を私は考えようとして、すぐにやめる。そういう言葉のいちいちに意味を...
pale asymmetry | 2025.01.26 Sun 20:50
JUGEMテーマ:ものがたり 右の耳に仄かな痛みを感じた。原因に心当たりはない。洗面所にいって鏡を覗く。右耳にリスがぶら下がっていた。私の耳朶をしっかりと噛んでぶら下がっている。でも実在するリスではない。透明だったからだ。いや、それは正確ではない。透明ならばリスの姿は見えないはず。でも半透明と言えるほども鮮明な姿ではない。それよりもずっと希薄なリスだ。コバルト色の斑模様のリスだった。だから森に住むリスではないだろう。その色では迷彩効果はないと思えた。でも希薄だったから、何処にいて...
pale asymmetry | 2025.01.21 Tue 20:34
JUGEMテーマ:ものがたり 半日で仕事が終わったので、正午過ぎに自宅に戻る。玄関の鍵を開けようとして扉に近づくと、扉の前にウグイスが立ちはだかっていた。寒そうな顔をして私を見上げるウグイスは、逃げ出す様子はなく僅かに首を傾げながら私を見つめている。どことなく幼く見えるその姿に私は思わず手を伸ばしてしまう。さすがに逃げ出すかと思われたけれど、ウグイスは飛び立つことなくちょこちょこと跳ねて少しだけ移動すると、そこから私を振り返った。そしてまたちょこちょこと跳ね、振り返る。まるで私を...
pale asymmetry | 2025.01.16 Thu 21:07
JUGEMテーマ:ものがたり その鳥は、六枚の翼を有していた。けれど頭も尾も有してはいなかった。脚もなかったので、着地することも出来ない。胴体から生えでた六つの翼をはためかせ、あるいはいっぱいに広げて風を孕ませ、飛び続けなければいけなかった。いつから自分が飛んでいるのかを、その鳥は知らない。空中で生まれ、生まれた瞬間から飛んでいたのか。あるいは地上で生まれ、某かの手立てによって空中に放たれたのか、どちらの記憶も持っていなかった。いや、記憶というものを全く持っていなかったのだ。だっ...
pale asymmetry | 2025.01.11 Sat 21:06
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