[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
JUGEMテーマ:ものがたり 門番の小僧は午後の十一時に寺の門を閉ざす。そして門の外側の小屋で夜を過ごす。毎夜門を閉ざすそのときには寺の住職が立ち会い、閉じていく門の内側でそれを確認する。つまり夜の間は、寺には住職がただ一人留まることになる。里から離れた山の上の寺には、そもそも住職と門番小僧しかいなかったのだった。 「では朝に。禁を犯すでないぞ」 門の向こうから住職の声が聞こえる。 「はい、また明日の朝に」 答えながら、門番小僧はいつも気なっていた。住職の声が毎夜楽し...
pale asymmetry | 2024.02.16 Fri 21:10
JUGEMテーマ:ものがたり ・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第69回です。 他のページはコチラ→双子の聖女は運命を入れ替える1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/34/35/36/37/38/39/40/41/42/43/44/45/46/47/48/49/50/51/52/53/54/55/56/57/58/59/60/61/62/63/64/65/66/67/68/70/71/ 「……困ったことになりましたな。...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2024.02.12 Mon 21:49
JUGEMテーマ:ものがたり 銀曜日のマイナス二時。天使雨が降り続いている。眠りのない世界が懐かしい。そこでは君だけが眠っていたから。この世界では誰もが眠っていて。その脳回路は開けっぴろげすぎる。僕だけが覚醒しているから、スクリュードライバーを手放せない。ドクターみたいにね。でも僕はちっぽけな疑似人間だから、颯爽と世界を救うことなんてできない。暗躍することだって出来ない。ただ寄り添うのが精一杯。そして寄り添っては弾かれ、痛みに重くのしかかられて、その痛みを愛するしかなくなるんだ。...
pale asymmetry | 2024.02.07 Wed 18:56
JUGEMテーマ:ものがたり 早朝の街だ。早朝だと思える街だ。太陽は見当たらないけど空は明るい。青と言うには緑味が強い色の空には、雲は欠片もない。メタリックブルーのビルディングが林立していて、都市だということが解る。都市を切り裂くように幅の広い道路が延びている。片側六車線のアスファルト道路は、早朝の光に僅かに煌めいている。その中央に私は立っている。中央分離帯の低いフェンスの上に、綱渡りするように立っている。そして私は南を向いている。直感的にそう思った。これは夢だ。それも確信でき...
pale asymmetry | 2024.01.31 Wed 18:52
JUGEMテーマ:ものがたり 真冬のプールに忍び込んだ。といっても厳重なセキュリティーを突破したわけではない。小学校の屋外プールで、低いフェンスを乗り越えただけだ。冬の間は使用されていないから、プールは冷たく沈んでいた。水は張られていない。けれど数日続いた冷たい雨が、プールの底に薄く敷き詰められていた。 「寒いね」 友達がはにかむ。真夜中の月明かりに浮かぶその横顔は綺麗だった。夜が、彼を高貴にしているように思えた。僕の横顔もそうであったら良いのにと思った。 「うん、寒い」...
pale asymmetry | 2024.01.26 Fri 18:42
JUGEMテーマ:ものがたり 予言屋がまだ世界を流離っていた頃、私はその足取りを追いかけていた。いずれその背中を捕らえられると信じていたからだ。彼が残した予言の記号は、世界樹として次元を跨いで配置されていたから、その後を追うことは難しくないだろうと考えていたのだ。結果としてそれは、間違っていたと言わざるを得ない。私の見通しの甘さがこの世界の複雑系をスイートピーの内部に閉じ込めてしまうという事態を招いてしまったのだから。きっとそれを知って予言屋は大笑いをしたことだろう。世界樹がその...
pale asymmetry | 2024.01.21 Sun 18:40
JUGEMテーマ:ものがたり 僕の心臓は宝石だ。ある日の朝そのことに気づいた。あれは終わらない夏の真ん中辺り。失われた冬が呻いているような、ひんやりとした朝だった。あの花は何だっただろう。裏路地の道端に咲いていた花。真っ赤な花だった。青い花だった。黄色の花だった。白い花だった。それは瞬きのたびに色を変える花だった。花弁の表面にいくつもの雫を纏っていた。それが未明に降った雨の雫なのか、それとも花の涙なのか、僕には解らなかった。僕の灰色の脳細胞がまともならば雨の雫だと確信できただろう...
pale asymmetry | 2024.01.13 Sat 20:58
JUGEMテーマ:ものがたり 真夜中の窓を開け放つ。流れ込む風が部屋を荒野に染める。でもありふれた荒野じゃない。それはここではない遙かな異境。愛が沈み、虚が徘徊する異境だ。眠っている私から私は浮き上がる。翼がないから飛ぶことは出来ないけれど、異境の部屋を漂うことなら容易い。この部屋はもう無限で有限。矛盾なんて意味がない。何もかもを取り込めるから異境なのだ。その風に私も染まっているのだから、私だって異境なのだ。 「小生のことを呼んだかな?」 骸骨の騎士がベッドのまわりを駆けて...
pale asymmetry | 2024.01.12 Fri 19:05
JUGEMテーマ:ものがたり 私はその子に目隠しを施した。ガラスの椅子に、その子は腰掛けている。周囲は光に満ちていて、ハレーションで溢れかえっていた。椅子のある小さなスペースの左右と前に階段が伸びている。左右の階段は上っていて、前の階段は下っている。背後は輝く壁。光の壁だ。それぞれの階段の先も輝きで何も見えない。私はその子の左手を取り、ゆっくりと立たせる。スローなシャンソンが流れ始め、私はその子の耳元に口を寄せる。 「右か、左か、それとも前か、どれにする?」 その子は首を傾...
pale asymmetry | 2023.12.29 Fri 17:57
JUGEMテーマ:ものがたり 忘れ去られた回転木馬は、その回転を失ってから時間を凍り付かせている。けれど明らかに失敗している。回転木馬は確実に朽ちていて、やがてその形を空に還すことになるだろう。それは避けられないことで、誰もそれに抗ってはいない。私一人だけでも抗ってみようか。そんな欲求に駆られるけれど、それはおそらく禁忌のはずだ。ここは移動遊園地で、そしてもうここからは何処へも旅立たない。この場所を終の寝床に決めたのは誰か。もちろんそれは私ではない。その誰かはもうこの世界にはいな...
pale asymmetry | 2023.12.23 Sat 21:29
全1000件中 71 - 80 件表示 (8/100 ページ)