[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]

JUGEMテーマ:ものがたり 「一角獣なら燃え尽きなかったのかしら?」 確か深夜の儀式の直後に、魔女はそう呟いていたはずだ。 「でも一角獣は不燃性だから、そもそも燃え上がることがなかったはず」 そしてこんな風にも呟いていたはず。だからそのとき魔女は一角獣の不燃性については知っていたけれど、その燃性のことは知らなかったことになる。けれど魔女はこの儀式よりもずっと前に一角獣の少年と出会っていて、彼との会話のなかで燃性と不燃性について語っていた。少年はそのときまだ一角獣を認識し...
pale asymmetry | 2026.03.05 Thu 20:19
JUGEMテーマ:ものがたり 阿呆のみが自己救済を得ることが出来る。そういう儀式がすでに始まっている。それは世界の僻地で、ひっそりと、決して中央に向かって広がることなく始まっている。参加者にはもれなく札が配られ、その札を阿呆札に変換できた者だけが、自己救済を手に入れることが出来るのだ。鎬を削るわけではなく、競い合うわけでもなく、もちろん血で血を洗うような争いもない。むしろ参加者は皆で寄り添い、痛みを分け合い、この世界にはない未知の法則を共有するために協調することになる。でもその中...
pale asymmetry | 2026.03.04 Wed 17:54
JUGEMテーマ:ものがたり 薄曇りの空は、それでも碧い衣を纏っていた。それは懐かしい色に見えた。懐かしくて少し吐き気を催す色に思えた。受け入れがたく、けれど拒絶も出来ない。そんな空の色だった。 「わたしが生まれて育った集落には、少し変わった行事ごとがあったの」 庭に面した縁側で、わたしは少年と並んで腰掛けていた。風は温い南風で、だから私も少年も薄着だった。躰が触れ合うくらいに寄り添っていたから、少年の熱を感じることが出来た。どこか獣のような熱だと思えた。だからわたしは語り...
pale asymmetry | 2026.03.02 Mon 21:20
JUGEMテーマ:ものがたり 薄明るい部屋で目が覚める。和室だ。畳に敷かれた布団に横たわっている。障子の向こうから柔らかい光が滲んでいる。朝だろうか。それとも昼に近い時刻だろうか。上半身を起こし、考える。私は何者かと。何故目覚めたのかと。あるいは、何故目覚めたと感じているのだろうかと。枕元にメモがある。『躰を暖めろ。自分が師匠だということを描け』とメモには書かれている。布団の脇には金属製のポットがある。きっとその中に温かい飲み物があるのではないだろうか。そう考えてポットに口を付け...
pale asymmetry | 2026.02.27 Fri 18:11
JUGEMテーマ:ものがたり 都市の照明は、点描画のように風景を彩色していて、それは魔術的な偽物感に満ちていた。たぶんこの人工彩色が途絶える日は来ないのだろうと思えた。この文明が沈没でもしてしまわないかぎり。歩道はとても広く、乳白色の表層に点描画の影が、色を纏った影が仄かに写し取られていた。それは偽物の偽物、擬態の擬態。人々はその堕落した偽造宝石には目もくれず、上着の襟を立てて足早に歩いていた。歩道が過剰に広い分、車道はとても幅が狭く、車は一方向にしか流れていなかった。そこには何...
pale asymmetry | 2026.02.20 Fri 17:37
JUGEMテーマ:ものがたり 小さな庭だった。正確にはそうではないかもしれない。正確には、小さく感じる庭だった。小さな、見逃してしまうような小さな木戸を抜けて、彼はその庭に足を踏み入れた。誰かに招かれたわけではない。もちろん知り合いの庭でもない。そこは見知らぬ庭で、彼はだからその庭にとって、あるいはその庭を内包する邸宅の住人にとって、完全な稀人だった。中央付近に盥ほどの大きさの楕円の浅い池があった。その傍らに烏帽子のような岩が寄り添っている。地面はほとんど苔に覆われていて、それは...
pale asymmetry | 2026.02.15 Sun 18:29
JUGEMテーマ:ものがたり 例えばメガという名の男がいて、彼は管理会社の社員で、少しややこしい部署にいて、だからややこしい仕事をこなす日々を過ごしている。でも彼自身はとても凡庸な人物で、平均的な感性からかけ離れているわけでもなく、だから鋭利な思想を抱いているわけでもなく、かと言ってやわらかすぎる想いや冷静すぎる思考を駆使しているわけでもない。それに彼は何かの問題が目の前に生じたとき、それを自身のスキルによってクリアしようという欲求のようなものも有していない。だから業務マニュアル...
pale asymmetry | 2026.02.09 Mon 20:30
JUGEMテーマ:ものがたり 箱は六つ並んでいて、すでに三つの箱が開いている。すべての箱は絡繰り仕掛けで、だからその絡繰りを解かなければ開くことは出来ない。つまり僕は三つの箱の三つの絡繰りを解いたのだった。一つ目の箱には脊椎の儀式が収められていた。余剰の脊椎を含んだ儀式だった。その余剰の脊椎から人形が起き上がり、炎を蹴散らす絡繰りだった。だから僕は背中を開いて、大樹を伸び上がらせることでその絡繰りを解きほぐしたのだった。深い夜に沈みながら、遙かな月を、それはとても遠い場所に鎮座し...
pale asymmetry | 2026.02.07 Sat 18:21
JUGEMテーマ:ものがたり 純潔の乙女を理解することは出来ない。そう審議官が言うので、私は一角獣につて解説しなければいけなかった。本当は、前衛的なキャッシュレジスターや、怪物の臓腑のようなシリンダームーブメントについて解説したかったのに。そのキャッシュレジスターは濁りを生み出すことが出来て、その濁りのなかから生命を抽出することが出来る。しかも濁りすぎて世界から弾かれないように、慎重にコントロールすることが出来る。私はそのレジスターの起源について語りたかったのだ。怪物との交わりに...
pale asymmetry | 2026.02.02 Mon 17:27
JUGEMテーマ:ものがたり 青々とした青い空、北風が唸り流れるその空に、幼い私は飛行船を見つける。私は指さし意味もなくはしゃぐ。 「あれは、オロチを追う飛行船なんだよ」 膝を折り私の身元で姉がそう囁く。 「オロチって?」 私が尋ねると、姉は伸び上がって軽く跳ねた。宙で優雅に回転する。姉はバレリーナだった。 「オロチというのはね、人間が行きすぎないように見張っている大きな者のことだよ」 姉は足を交差させてやわらかく着地すると、丁寧にお辞儀をした。私は少しドキドキ...
pale asymmetry | 2026.01.22 Thu 18:15
全1000件中 1 - 10 件表示 (1/100 ページ)