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JUGEMテーマ:ものがたり ホテルの窓から、何気なく外を見る。午後の日差しは柔らかく、冬特有の澄んだ風景。ぼんやりとそんな風景を眺めていると、通りの向こうに立つホテルの窓で、激しく手を振る人物に気づく。長い黒髪、真紅のドレス、年齢は若い、少女のようだった。少女は手に新聞を持っていて、手を振る合間にそれを忙しなく指差す。彼女は僕に手を振っているのだろうか。それとも他の窓の誰かにだろうか。僕は思わず自分を指差す。すると彼女は大きく頷く。偶然かもしれないと思ってしばらく立ち尽くす。そ...
pale asymmetry | 2023.01.15 Sun 21:41
JUGEMテーマ:ものがたり 小さな箱庭に小さなフィギュアをくわえる。それは森の奥に私が立ったことを意味する。大樹の狭間から、私は夜空を見上げる。そこには明星が見える。小さなフィギュアはその明星を頼りに森のさらに奥へと進む。私はそのフィギュアが感じている怖じ気を同じように抱えている。それが本当はどちらの怖じ気なのか、私にはもう解らなくっているのだ。 やがて小さなフィギュアは森の核に到達する。そこにはなんの目印もない。けれどそこが核であることは間違いないとフィギュアは感じている...
pale asymmetry | 2023.01.06 Fri 21:27
JUGEMテーマ:ものがたり シラツキさんと出会ったのは、去年の暮れ。12月3日の夕刻だった。僕はそのとき自販機の傍らに腰を下ろして、缶コーヒーを飲んでいた。その行為には何のドラマもない。大学からの帰り道に何の気なしにコーヒーが飲みたくなったというだけだ。だからコーヒーを買い、すぐに飲みたかったからその場で飲んでいた。そこにシラツキさんが通りかかったのだ。 「それはブラックコーヒーかしら?」 シラツキさんは立ち止まり、僕の前でしゃがんで目線を合わせた。僕が少しびっくりしながら...
pale asymmetry | 2023.01.04 Wed 21:21
JUGEMテーマ:ものがたり 僕と相棒は大陸の東端にいた。そこからさらに東に突き出た岬の先端にいた。昨日ここについてから、先端の公園でただだらだらと海を眺めてウイスキーを飲んで過ごしていた。僕らは大陸の西の端から旅を始めた。ここが到着点のはずだった。でも僕も相棒も、何だか旅を終えた気分ではなかった。そうは言っても、この先のあてもない。 「旅って、終わらせなければいけないものかな?」 ベンチにだらしなく腰掛け、相棒が独り言のように言う。 「というか、目的地に到着すれば自然に...
pale asymmetry | 2023.01.02 Mon 18:57
JUGEMテーマ:ものがたり 年末の大掃除をしていたら、見覚えのないダンボール箱が部屋の隅から現れた。宅配便で送られてきたもののようで、送り状が貼り付けられている。確かに私に送られてきたものだ。今年の2月3日に必着と記載されている。でもその日に受け取った記憶はない。別の日に受け取った記憶もない。送り主は叔父だった。これは問題だ。叔父は八年前に他界している。だから今年宅配便を送ることは出来ない。箱は未開封だった。 さてどうしたものか。と悩んでみても答えはどこからも出てきそうにない...
pale asymmetry | 2022.12.28 Wed 20:59
JUGEMテーマ:ものがたり 廃墟となった宮殿に、青年は足を踏み入れる。今夜は山羊座新月。夜空にはさんざめく星々がそれぞれの方向から青年に語りかけている。その無数の語りの中の無限の物語が、青年の歩みに勇気をくれる。忘れられた宮殿の奥へと進み、青年は階段を地下へと降りる。そこには闇しかない。星々の光はそこまでは届かず、他の光源ももちろん存在しない。青年は小さなランプに明かりを灯す。そのランプが照らす範囲はとてもちっぽけで、世界の広大さが青年を押しつぶそうとする。それに抗うことはせず...
pale asymmetry | 2022.12.23 Fri 20:58
JUGEMテーマ:ものがたり 灰色の空の色を写し取り、川は灰色の水面で流れていた。ゆるやかな流れだけど濁りはなく、凜と澄んだ液体が世界の清廉さを訴えているように感じた。そんな川を眺めながら、彼女は持ってきたトランクを開く。中にはびっしりと扇が詰まっている。全ての扇はすでに開いていて、何だか今にも飛びたちそうな鮮やかな色をしている。無数の色はどれ一つ同じものはなく、それが世界の斑を垣間見せているように思えた。 「お前たち、大洗濯だよ」 彼女は川縁に進み、トランクの扇を川に放っ...
pale asymmetry | 2022.12.17 Sat 21:32
JUGEMテーマ:ものがたり はぐれ山羊が都市を通過するので、その間都市はロックダウンされる。でも僕たちは家を抜け出し、ビルディングの屋上に集合していた。上手く家から逃げ出せたのは僕を含めて六人。見知った顔は一人もいない。だから僕らは名乗り合わなかった。お互いのことは知らない方が良い。どうせ何人かは命を失うだろうから。 「あれかな?」 東の方角を指差し、誰かが叫んだ。皆がそちらに駆け出す。でも僕は追随しなかった。はぐれ山羊は東からは来ない。南からやって来るのだ。どうやらはぐ...
pale asymmetry | 2022.12.04 Sun 21:28
JUGEMテーマ:ものがたり ・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第17回です。 他のページはコチラ→双子の聖女は運命を入れ替える1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/34/35/36/37/38/39/40/41/42/43/44/ 45/46/47/48/49/50/51/52/53/54/55/56/57/58/59/60/61/62/63/64/65/66/67/68/69/70/71/ 時は遡(さかのぼ)って、リーリエのお...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2022.12.04 Sun 19:16
JUGEMテーマ:ものがたり 朝、顔を洗って鏡を覗いたら、私の額にカードが張り付いていた。剥ぎ取ろうとするとひらりと飛翔し、目まぐるしく回転しながら私の手に降りる。ちょうど私の掌ぐらいのサイズ。カードには目が描かれている。黄金色の紋様的な目。そこから長い四肢が生え出ていて、とくに長い腕の片方を空に、もう片方を地面に伸ばして指差している。天と地を指し示す存在。〈ザ・アイズマン〉のカードだ。 これはメンターのカードだ。今は遠い地にいるはずのメンターが私に何かのメッセージを送っ...
pale asymmetry | 2022.12.03 Sat 19:50
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