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JUGEMテーマ:ものがたり 暗く煌めく森を私は歩いている。あなたは少し目を漂っている。巨木が立ち並ぶ森には、乏しい光しかなく、世界は蹲って微睡んでいるようだ。地面や巨木を覆う苔が所々翡翠色に煌めいている。苔は夢見ているのだろうか。それとも私が夢見ているのだろうか。それなら私は本当は森になどいないのかもしれない。本当はもう呼吸さえもしていないのかもしれない。 あなたの背中は白濁している。その背中が小走りするスピードで前を行く。私を導いているわけではない。私から逃げているわけで...
pale asymmetry | 2023.07.26 Wed 18:45
JUGEMテーマ:ものがたり 森の奥深く、陽光は樹木の放つざらついた湿気に絡め取られ、弱められたそれに力はなかった。かといってその場を闇が支配していたわけではない。陰と陽が平衡していて、その場所は凪いでいた。それが表面的なもので裏側では激しい鬩ぎ合いが渦巻いていたのだとしても、それは一切漏れ響くことはなく、その場所は静寂が降り積もっていた。 「もう、どのような星も僕らを見つけることは出来ないよ」 少年が囁く。彼が手を引いて一緒に歩いていた少女が頷きを返す。少年の表情は硬く、...
pale asymmetry | 2023.07.19 Wed 22:01
JUGEMテーマ:ものがたり ・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第42回です。 他のページはコチラ→双子の聖女は運命を入れ替える1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/34/35/36/37/38/39/40/41/43/44/ 45/46/47/48/49/50/51/52/53/54/55/56/57/58/59/60/61/62/63/64/65/66/67/68/69/70/71/ 入れ替わりの決行は、ローレンツ王子の里帰...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2023.07.16 Sun 13:38
JUGEMテーマ:ものがたり 私はその少年の目に薬を落とした。そして少年は盲いた。もう、彼に視力は必要なかったからだ。身の回りの世話は全て、剃髪された青年たちが行う。着替えも食事も入浴も、歩行さえも彼がする必要はなかった。少年が行うことは、彼を訪ねてくる人の手を取ることだけだった。そして「違う」、あるいは「そうだ」と声を発することだけだった。 朝から夕刻まで少年は黄金の神座に半ば横たわり、その行為を繰り返すだけだ。その意味を知らないままに。日が沈むと宴が始まる。剃髪の青年たち...
pale asymmetry | 2023.07.09 Sun 21:34
JUGEMテーマ:ものがたり ひんやりとした空気が頬を撫でる。その感覚で僕は目を覚ました。いつの間にかカーテンが引き開かれていて、部屋は黄金の光で満ちていた。 「こんな夜に眠っているなんて、あなたは馬鹿なのね」 見知った女の子が僕を覗き込んでいた。その子が口をとがらせ僕に息を吹きかける。ひんやりと尖った小さな風が、僕の頬を撫でた。 「今夜は、空に昇らなければいけない夜なのよ」 女の子はどこか残忍に笑い。ベッドの脇の窓を開ける。流れ込んできた空気はとても澄んでいた。恐ろ...
pale asymmetry | 2023.07.03 Mon 19:15
JUGEMテーマ:ものがたり 黒い夜だった。暗い夜ではない。明かりはそこら中に満ちていたけれど、その曖昧な輪郭の外側は、真っ黒だった。そんな夜だったのだ。私は明かりの下にいたけれど、私の心はその外側にあったかもしれない。そう言う時間を持て余していた。 激しく連打されるチャイムにアパートの扉を開けると、友人が立っていた。その傍らには大きなトランクケース。そして左肩に脚立を担いでいる。真っ直ぐに私を見つめて、友人は微かに笑った。ように見えた。 「狼に追われているの」 そうい...
pale asymmetry | 2023.06.23 Fri 21:04
JUGEMテーマ:ものがたり 強い雨に濡れながら、小さな大樹が佇んでいる。小さいのに大樹とは矛盾しているけれど、確かに私の目の前にそれがあるのだから仕方がない。私の膝下くらいまでしかない背丈。でもそれは大樹なのだ。そういうオーラを発していると言えば良いだろうか。今は小さいけれどこれから大樹に成長しそうだと感じたわけではない。今すでに、それは小さな大樹なのだ。 小さな大樹の根元には小さな洞があった。思わずそこで雨宿りしたくなるような洞。もちろん私が入るには小さすぎるけれど、そう...
pale asymmetry | 2023.06.13 Tue 21:17
JUGEMテーマ:ものがたり 目覚めると、何だか身体が熱っぽかった。午後の遅くのこと。休日にぐうたらして中途半端に眠り続けたせいだろうか。それにエアーコンディショナーの設定温度を下げすぎたせいかもしれない。体温計を探してみたけれど目につくところになかったので、取り敢えず顔を洗おうと浴室の洗面台に行く。そして、角に気づく。 鏡に映った自分のおでこに角が一本生えていたのだ。漆黒の角だった。先端の尖りに向かってゆるやかにカーブする角だった。触ってみると金属質な冷たさを感じた。これが...
pale asymmetry | 2023.06.03 Sat 20:20
JUGEMテーマ:ものがたり 長老から紙切れを渡されたとき、彼は少なからず奇妙な心持ちになった。こんな紙切れがなければ闘うことが出来ないなんて、世界はきっと歪んでしまっているのだと思えたのだった。 「護符だと思えば良い」 長老はそう言って笑ったけれど、その笑顔もどこか歪んでいるように彼には思えた。護符であるはずなどない。むしろ枷ではないか。彼にはそう思えたのだった。その紙切れには許可証と書かれていて、彼の戦いが政府の許可のもとに行われることを保証していたのだけれど、目の前の...
pale asymmetry | 2023.05.22 Mon 18:48
JUGEMテーマ:ものがたり 惑星間隙チケットが手に入らなかったので、僕と相棒はステーションで途方に暮れていた。いや、正確には途方に暮れていたのは僕の方だけだったかもしれない。相棒の方はコントラクションサワーを飲みながら、オルタナティブスタンディングで精神をぐるぐる巻きにしていたから。 「※※※△△」 綺麗なパッションピンクのヒューマノイドが話しかけてきたけれど、見知らぬ言葉で答えようがない。それでもしつこく話しかけてきたので、適当に頷いたり首を振ったりしていると、何故か最新式...
pale asymmetry | 2023.05.07 Sun 20:50
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