[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
JUGEMテーマ:ものがたり 二十人の盗賊が、二十個の宝箱を抱えて全力疾走していた。三日月を背に、まだ目覚めていない太陽を目指して。荒野はの夜は冷たく、そこには慈悲の欠片もない。だから盗賊たちはただ走るしかなかった。スピードを少しでも弛めれば、すぐさま餌食になってしまう。二十人の盗賊たちは二十体のドランゴンに追いかけられていたから。二十人の盗賊たちが抱えていた宝箱は、二十体のドランゴンが守っていたものだった。二十樽の酒に酔わせた隙にドラゴンから奪い取ったものだった。宝箱は二十個の...
pale asymmetry | 2024.03.01 Fri 21:23
JUGEMテーマ:ものがたり 森をぬけたら砂浜で、それに繋がる海が広がっていた。水平線からゆるくぬるい風が吹いてくる。そのゆるさ、ぬるさから、これは南風に違いないと思った。すると私は今南に顔を向けている。つまり私は北からやって来たのだ。だから私は冷えた気持ちを抱えているのだろう。南風がその気持ちを揉み解す。それでも気持ちはすぐにやわくはならなかったけれど、このままここでぼんやりとしていれば、何も思考せずに鋭利な陽光を浴びていれば、きっと気持ちだけではなく私を構成する全ての因子がや...
pale asymmetry | 2024.02.27 Tue 18:49
JUGEMテーマ:ものがたり 門番の小僧は午後の十一時に寺の門を閉ざす。そして門の外側の小屋で夜を過ごす。毎夜門を閉ざすそのときには寺の住職が立ち会い、閉じていく門の内側でそれを確認する。つまり夜の間は、寺には住職がただ一人留まることになる。里から離れた山の上の寺には、そもそも住職と門番小僧しかいなかったのだった。 「では朝に。禁を犯すでないぞ」 門の向こうから住職の声が聞こえる。 「はい、また明日の朝に」 答えながら、門番小僧はいつも気なっていた。住職の声が毎夜楽し...
pale asymmetry | 2024.02.16 Fri 21:10
JUGEMテーマ:ものがたり ・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第69回です。 他のページはコチラ→双子の聖女は運命を入れ替える1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/34/35/36/37/38/39/40/41/42/43/44/45/46/47/48/49/50/51/52/53/54/55/56/57/58/59/60/61/62/63/64/65/66/67/68/70/71/ 「……困ったことになりましたな。...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2024.02.12 Mon 21:49
JUGEMテーマ:ものがたり 銀曜日のマイナス二時。天使雨が降り続いている。眠りのない世界が懐かしい。そこでは君だけが眠っていたから。この世界では誰もが眠っていて。その脳回路は開けっぴろげすぎる。僕だけが覚醒しているから、スクリュードライバーを手放せない。ドクターみたいにね。でも僕はちっぽけな疑似人間だから、颯爽と世界を救うことなんてできない。暗躍することだって出来ない。ただ寄り添うのが精一杯。そして寄り添っては弾かれ、痛みに重くのしかかられて、その痛みを愛するしかなくなるんだ。...
pale asymmetry | 2024.02.07 Wed 18:56
JUGEMテーマ:ものがたり 早朝の街だ。早朝だと思える街だ。太陽は見当たらないけど空は明るい。青と言うには緑味が強い色の空には、雲は欠片もない。メタリックブルーのビルディングが林立していて、都市だということが解る。都市を切り裂くように幅の広い道路が延びている。片側六車線のアスファルト道路は、早朝の光に僅かに煌めいている。その中央に私は立っている。中央分離帯の低いフェンスの上に、綱渡りするように立っている。そして私は南を向いている。直感的にそう思った。これは夢だ。それも確信でき...
pale asymmetry | 2024.01.31 Wed 18:52
JUGEMテーマ:ものがたり 真冬のプールに忍び込んだ。といっても厳重なセキュリティーを突破したわけではない。小学校の屋外プールで、低いフェンスを乗り越えただけだ。冬の間は使用されていないから、プールは冷たく沈んでいた。水は張られていない。けれど数日続いた冷たい雨が、プールの底に薄く敷き詰められていた。 「寒いね」 友達がはにかむ。真夜中の月明かりに浮かぶその横顔は綺麗だった。夜が、彼を高貴にしているように思えた。僕の横顔もそうであったら良いのにと思った。 「うん、寒い」...
pale asymmetry | 2024.01.26 Fri 18:42
JUGEMテーマ:ものがたり 予言屋がまだ世界を流離っていた頃、私はその足取りを追いかけていた。いずれその背中を捕らえられると信じていたからだ。彼が残した予言の記号は、世界樹として次元を跨いで配置されていたから、その後を追うことは難しくないだろうと考えていたのだ。結果としてそれは、間違っていたと言わざるを得ない。私の見通しの甘さがこの世界の複雑系をスイートピーの内部に閉じ込めてしまうという事態を招いてしまったのだから。きっとそれを知って予言屋は大笑いをしたことだろう。世界樹がその...
pale asymmetry | 2024.01.21 Sun 18:40
JUGEMテーマ:ものがたり 僕の心臓は宝石だ。ある日の朝そのことに気づいた。あれは終わらない夏の真ん中辺り。失われた冬が呻いているような、ひんやりとした朝だった。あの花は何だっただろう。裏路地の道端に咲いていた花。真っ赤な花だった。青い花だった。黄色の花だった。白い花だった。それは瞬きのたびに色を変える花だった。花弁の表面にいくつもの雫を纏っていた。それが未明に降った雨の雫なのか、それとも花の涙なのか、僕には解らなかった。僕の灰色の脳細胞がまともならば雨の雫だと確信できただろう...
pale asymmetry | 2024.01.13 Sat 20:58
JUGEMテーマ:ものがたり 真夜中の窓を開け放つ。流れ込む風が部屋を荒野に染める。でもありふれた荒野じゃない。それはここではない遙かな異境。愛が沈み、虚が徘徊する異境だ。眠っている私から私は浮き上がる。翼がないから飛ぶことは出来ないけれど、異境の部屋を漂うことなら容易い。この部屋はもう無限で有限。矛盾なんて意味がない。何もかもを取り込めるから異境なのだ。その風に私も染まっているのだから、私だって異境なのだ。 「小生のことを呼んだかな?」 骸骨の騎士がベッドのまわりを駆けて...
pale asymmetry | 2024.01.12 Fri 19:05
全1000件中 111 - 120 件表示 (12/100 ページ)