JUGEMテーマ:ものがたり 斜めに花を見上げる。枝先に二つの花。向かい合うように咲いている。花の数え方はつで良かったかな。この場合は輪と数えるのが正しいのだろうか。まあ、どちらでも良いか。とにかく花が咲いている。白とピンクのバイカラー。清楚な形の花だ。あいにく植物には詳しくないので、それが何という花かは解らない。とにかく見上げた枝に向かい合って花が咲いている。 私は空を見上げて歩いていたわけではない。けれどその二つの花に気づいた。それは声を聞いたからだ。ややうつむき加減で歩...
pale asymmetry | 2020.11.15 Sun 21:04
JUGEMテーマ:ものがたり 発売から半年たって、始めてカリソチュナを見つけた。近所のコンビニの棚に一箱だけぽつんと並んでいたのだ。「君のことを待っていたよ」と語りかけているように見えた。発売当初からあちらこちらの店やネットで探し続けてもうすっかり諦めていたから、まさかこんな近所で見つかるとは本当に驚きだった。しかも定価で手に入るなんて。発売当初はネットで20倍の価格までなり、今もネットでは倍くらいの価格が相場になっている。幸運を噛みしめながら箱を手に取りレジへと急いだ。 家に...
pale asymmetry | 2020.11.13 Fri 21:15
JUGEMテーマ:ものがたり 「その騎士は、荒野を越え、大陸を横断し、ついには種を手にすることが出来ました。でも、騎士は荒野を旅する内に食料を食べ尽くし、飲み物も飲み尽くし、とても空腹でとても乾いていました。騎士の目の前にはテーブルがあり、そこには豪華な料理と酒が溢れそうに注がれた杯がありました。騎士は知っていました。これが審判の料理と審判の酒なのかと、騎士は考えました。ここにやって来た全ての騎士が種を手に入れた後に、帰路の不安から料理を食べ酒を飲み、そして自分が何故旅をしているの...
pale asymmetry | 2020.11.12 Thu 21:50
JUGEMテーマ:ものがたり 空はロリポップ。つまり笑っている感じ。雲は流れていて、その影は道を横切る。弾丸のように道は続く。銀河にまで繋がっているかもしれない。もちろんそんなことはないけれど、起こりえないことが起こりえるかもと思えるくらいに晴天な午後だ。で、僕らは惰性で走っている。正確には僕らを乗せたでっかいオープンカーが、慣性の法則にしたって直線運動をしている。ドライバーズシートでは相棒がアクセルを目一杯踏み込んでいたけれど、全く加速しない。燃料がもうないのだ。それで僕らは、...
pale asymmetry | 2020.11.08 Sun 20:50
JUGEMテーマ:ものがたり その都はある日突然にこの世界に現れ、それから千年の間栄華を極めたという。その都はまさにユートピアで、そこに暮らす人々は享楽の限りを貪ったのだという。その都が現れたとき、そこには人は一人もいなかった。しかし炎に吸い寄せられる蛾のように、僅か数日の間にどこからともなく人々が集まり、宴が始まり、千年の間続いたのだという。 そして千年後、唐突にその都はこの世界から消えたのだという。集まった人々、宴にすっかり溺れていた人々全てと共に。その都は完全に塵となっ...
pale asymmetry | 2020.11.04 Wed 15:20
JUGEMテーマ:ものがたり 「これが雲鉢だよ」 友人が木箱から取り出したのは、小さな茶器のような鉢だった。 「雲文ではないのだね」 雲鉢と言うから、雲形文様の施された鉢なのだと勝手に考えていたのだった。しかしその鉢の表面にはそんな文様は見当たらず。独特な深い藍色を纏った鉢だった。 「違うね。そういう意味での雲鉢ではないのだよ」 友人が差し出したその鉢を受け取り、じっくりと見つめる。内側も同じ藍色だ。光に翳すと、その藍色がキラキラと細かく煌めいた。 「光るね。金か...
pale asymmetry | 2020.11.03 Tue 22:11
JUGEMテーマ:ものがたり 一日中雑巾がけをしている。部屋中が汚れているから。薄い泥を被ったような汚れ。それが部屋の床も壁も家具にも、部屋中のあらゆるものに纏わり付いている。それを取り除くために、ずっと部屋中に雑巾がけをしている。これはおかしい。何かがおかしい。それは解っている。でも部屋中が汚れていると思えるのは確かな感覚で、だから雑巾がけをするしかないという気分になってしまう。このままではいけないと思い、何とか祖母に連絡する。事情を説明するのは困難だったので、とにかく来て欲し...
pale asymmetry | 2020.10.30 Fri 20:50
JUGEMテーマ:ものがたり 「じゃあ次は星の測定をしますね」 定期健康診断の途中で突然そう言われた。 「え? 腰の測定ですか?」 聞き間違えたのかと思って聞き返す。 「いえ、星の測定です。あなたの星の測定ですよ」 看護師さんは真面目な顔で答える。 「じゃあ、この健診書類を持って、23番の部屋まで行って下さい。この廊下を真っ直ぐ進んだ部屋です」 「はあ」 よく解らないまま、僕は廊下を進む。23番のプレートの部屋を見つけ、扉を開く。中には全身をカバーする防護服を着...
pale asymmetry | 2020.10.27 Tue 21:42
JUGEMテーマ:ものがたり ビショップという名の少年は、草原を歩いていた。信号を受信し、それに導かれて歩いていた。風は西からやわらかく吹いていて、心地良い風なのだろうと彼は思った。それはしかし推測だ。彼は心地良い風というものがどういう性質の風なのかを知らない。大抵彼は草原を歩いていて、大抵風に吹かれているけれど、その風が彼に某かのインフォメーションをもたらしてくれることはなかった。 ビショップという名の少年は北西の方角を向き、斜め上方を見つめる。信号はそちらの方向から彼に発...
pale asymmetry | 2020.10.26 Mon 21:28
JUGEMテーマ:ものがたり 宵に大雨が降った。南風に操られ、斜めに強く降った。縁側は家の北側にあるから、それに面した縁側は雨に濡れない。背後から降り、家の軒が雨を遮ってくれるから。雨が強く降れば降るほど、縁側にその雫が巻き込まれてくることはない。だから私はスコッチウイスキーに熱々のお湯を注ぎ、縁側に寝そべりながら飲んだ。雨にうたれる庭を眺めながら。 庭は少し草が目立つ。ちょっと最近手入れをサボっていたな。そんなことを考えながら温かいスコッチを飲む。時々、カーブチーを囓ったり...
pale asymmetry | 2020.10.23 Fri 21:23
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