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JUGEMテーマ:ものがたり 砂の大地から十三の塔が生え出ていた。それらの塔は半ば砂に埋まっているのだが、それでも高く聳え立っている。半径約一キロの範囲に十三の塔は群れるようにあり、その周り、あるいは塔と塔の狭間が集まった人々のステージというわけだった。 「低いレベルで、ずっと眠気が体内に積もっている。そういう人々がここに集まっています。あなたもそういう感覚が分かりますか?」 メンターが、柔らかな表情で僕に問いかける。生まれてから一度も、負の感情を抱いたことがない。そんな人...
pale asymmetry | 2020.09.12 Sat 22:15
JUGEMテーマ:ものがたり 扇は屋敷の一番奥の座敷にあった。そこには窓はなく、外部の光は一切入ってこない。電気も通じていないので、蝋燭かトーチが必要だった。その座敷に繋がる部屋までは電気が通じていたので、その部屋の明かりを灯し座敷に通じる引き戸を開放しておけば、座敷の内部に光を導くことは出来た。しかし、その状態で扇に触れることは禁じられていた。座敷の中央辺りに鎮座する扇に触れるためには、引き戸を固く閉じなければいけない。だから僕はトーチを手にその座敷へと足を踏み入れ、引き戸をし...
pale asymmetry | 2020.09.04 Fri 20:07
JUGEMテーマ:ものがたり 「たぶんたくさんの訪問者が現れます」 その人は、少し困った表情でそう言った。 「どういう方たちですか?」 私の質問に、その人はしばらく考えてから細かく首を振る。 「端的に言えば、不要な者たちです。私はそう思っています。しかし、彼らは誰一人そうは思っていない。そこが難しいところです」 開放された窓から散歩の所にある大きなプールの水面を見つめて、その人は薄く笑った。ように見えた。 「でも、ここの邸宅のセキュリティーは厳重だと思えますけど。...
pale asymmetry | 2020.09.03 Thu 22:05
JUGEMテーマ:ものがたり 起伏はあったけれど、風景に変化はない。どこまで行っても砂だ。砂と太陽。顔の下半分をフェイスガードで隠していたけれど、それでも口の中がジャリジャリする。ゴーグルがなければ、目の中にも砂が溜まっていたんじゃないかと思えるくらい。それでも僕らは高速でバギーを走らせている。 太陽は黄金色だ。でも空はそうじゃない。こんなにも激しい陽光なのに、どうして空が黄金色に染まらないのだろう。アクセルを踏み込み続けながら、僕は考える。きっと太陽よりも空の方が賢いんだろ...
pale asymmetry | 2020.08.29 Sat 21:31
JUGEMテーマ:ものがたり クシャナクシャレルが繁殖を始めたと、大陸中にアラートが鳴り響いた。盛大なファンファーレのようなそのアラートは、最高レベルの非常事態宣言だったけれど、このサウンドを作った誰かはきっと確信犯だ。確信犯的に終末を愉しもうと呼びかけている人物に違いない。アラートはそんな響きで、大陸中の空気をビンビンに震わせたんだ。 だから僕らは走り出す。マルチパーパスのバギーに乗って、大陸の中心に向かって、はやる気持ちを持て余しながら。乾いた大地が広がる大陸の中心部は、...
pale asymmetry | 2020.08.17 Mon 22:37
JUGEMテーマ:ものがたり ・わけあって没にしている話の断片を勿体ないので載せます。 ・流血注意。 ・おとぎ話の再解釈を小説にしてみようというシリーズ案の1つ。 ・かなり大胆にリメイクしていますので、原作好きな方はご注意を。 ・今回載せるのは「アラビアンナイト(千夜一夜物語)」の“枠物語”の再解釈モノなのですが…書き始めてから「あれ?これ、主人公の王様が大量殺人鬼ってよろしくないのでは…?」と疑問を抱き、保留することに。むしろ今まで何の疑問もなくアラビ...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2020.08.15 Sat 10:03
JUGEMテーマ:ものがたり 鋭利な陽光が空気を切り裂いて、野原を照らしていた。野原を埋め尽くすあの花は彼岸花だろうか。野原の真ん中を通り抜ける細道を、列を成して進んでいく人たちがいる。皆黒い服装だった。あれは振り袖だ。でも真っ黒だから喪服なのだろうか。頭は皆朱色だ。朱色の角隠しを被っている。ずいぶんと大きな角隠しを目深に被っているので、その人たちの相貌はよく見えない。覗き見える唇、角隠しと同じ艶やかな朱色の唇から、その人たちは女の人なのだろうと思えた。若く、でももうおぼこではな...
pale asymmetry | 2020.08.13 Thu 21:35
JUGEMテーマ:ものがたり 竜巻は、海上を南から北へと移動していた。その移動はとてもスローに見えたけれど、多分実際はそうではないだろう。比較する対象がないためにそう見えているだけだろう。例えば私が並走しようとしても、すぐに置いてきぼりにされるはずだ。そう推測させるアグレッシブさをその竜巻は放っていた。私に対しても、誰に対しても。 竜巻に巻き込まれ、少女たちが宙を舞う。もちろんそんなはずはない。私が少女たちだと思った物体は、全て花だった。色とりどりの花が、花弁を撒き散らしなが...
pale asymmetry | 2020.08.09 Sun 21:47
JUGEMテーマ:ものがたり 純鉄製のサイが、十三両の客車を引いて夜空を走っていた。線路は見えない。もちろんトンネルも。星々はそれぞれが知性を競うように瞬いていた。その判定を下すのは誰だろう。僕ではない。僕はただ、その星々に少しでも近しいと思える知性を有していることを願っているだけだ。それを証明するためには語らなければいけないだろうけど、誰に向けて語ればいいのか解らず、ただ先頭の客車の窓から顔を出して夜を感じていた。 何か、そういうことがあったような気がする。知性を証明するた...
pale asymmetry | 2020.08.06 Thu 21:27
JUGEMテーマ:ものがたり それは世界樹だったかもしれない。あるいは宇宙樹だったかもしれない。この二つの大樹を同じものだと、私は思ってはいない。どちらの方がよりスケールが大きいのか、より知性に溢れているのか、より煉獄に根を伸ばしているのか、それは知らない。そういうことの比較によって二つを分けているわけでは、私はないのだ。ではどうやって二つの大樹のそれぞれを定義しているのかと問われれば、それはもう困ってしまいます、と答えるしかない。言語は今はまだ、過去の躍動の説明しか出来ない。け...
pale asymmetry | 2020.08.03 Mon 20:22
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