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JUGEMテーマ:ものがたり こんなご時世だから、全国の祭事が開催中止となっているケースが実に多い。毎年大規模に開催されるメジャーなものはもちろんのこと、何年かに一度しか開催されないいわゆる奇祭のようなものまで、開催が見送られている。こういう奇祭は一度見送られると、その後祭りそのものが失われてしまうことも少なくない。ただでさえ奇祭の類いは失われていく傾向にあるのに、それが加速されてしまうかもしれない。実に哀しいことだ。長年様々な奇祭について調査研究してきた私にとって、厳しい現実だ...
pale asymmetry | 2020.07.04 Sat 21:43
JUGEMテーマ:ものがたり 門はどこかにあったのだろう。知らぬ間に通過してしまったのだろう。例えばそれは巨大すぎて、認識できなかったのかもしれないし、何かありふれた現象のようなものに擬態していたのかもしれない。それともただ単に透明だったのか。透明な上に質量も持っていなかったのかもしれない。つまりそれは最早実存する門ではなく、かつて門であったものの亡霊であったのかもしれない。そういえば、どこかで冷気を通過したような気がする。あるいはあれがそうだったのだろうか。と、そんなことを考え...
pale asymmetry | 2020.07.03 Fri 21:20
JUGEMテーマ:ものがたり 海と空の境界線の内側に、その森は広がっている。折り畳まれたまま広がっている。それは深い藍色で、深すぎるために抑鬱を纏い、痛みを伴う翠の色彩を溢れさせていたりする。それは痛みで、けれど恍惚でもある。どのような世界でも、痛みと恍惚はいつも表裏一体なものだ。綺麗と汚いが表裏一体であるのと同じように。そういう所に、得てして翼が発生したりするものだ。ただ翼だけが。風を攪拌し、境界線を閉じたまま維持するために。それは残酷な風だ。だから常に攪拌し続けなければ、大量...
pale asymmetry | 2020.07.02 Thu 21:37
JUGEMテーマ:ものがたり その回廊は、閉じられているはずだ。境界路として機能しているはずだ。あるいは、結界として断固とした姿勢を維持しているはずだ。しかし、確かにその回廊は開かれている。回廊の内側と回廊の外側は攪拌され、しっちゃかめっちゃかにない交ぜにされている。嘲笑っているのだ。誰かが。あなたでもなく私でもない誰かが。とても小さな獣で、聖なる獣で、無垢でありながら、いや無垢であるがために残忍な想いを、残忍であるが故に純粋な想いを止めどなく撒き散らす獣だ。そいつが嘲笑う。密や...
pale asymmetry | 2020.06.29 Mon 22:16
JUGEMテーマ:ものがたり 遙かな遠い場所、漆黒と星々の煌めきが混ざり合う狭間から、その塔はやって来たのだという。この惑星に飛来したことに何かの意味があるのかと問えば、おそらく塔は「否」と答えただろう。実際には塔は答えない。塔は言語を有しない。言語のような原始的なコードを必要としないからだ。もっともそんな質問を塔に対して発する者は誰もいない。この惑星には言語を操れる者がもういない。言語のような複雑すぎるコードを操れる者は。 塔は巨大な響きと衝撃を大地に喰らわせ、この惑星に降...
pale asymmetry | 2020.06.28 Sun 22:04
JUGEMテーマ:ものがたり 飛翔する花は、求愛の色彩で風を踊らせている。表現しがたいその色は、便宜上求愛色とだけ呼ばれている。その色合いが微妙だとか、中間色過ぎるとかいうわけではない。とにかく目まぐるしく変化するのだ。だから誰も、本来のその花の色を知らない。本来の色というものをその花が有しているのかも知らない。花が風を踊らせるのは、求愛の恍惚を風に織り込んで伝播させるためだ。それと同時にこの期間は花が空を支配することを宣言するためだ。この期間とは鋭月の最初の銀曜日、その日の出か...
pale asymmetry | 2020.06.27 Sat 21:32
JUGEMテーマ:ものがたり それは小さな時計だろうか。そのサイズを知るためにはスケールが必要だけれど、あいにくと人魚が落としていった虹色に変幻する鱗しか手元にない。しかし私にはそれは小さな時計に思える。私の掌に乗るくらいのサイズに思える。しかしながら私が巨大だったらどうだろう。私が宇宙よりも巨大な身体を持っていたとしたら、それでも時計は小さいと言えるだろうか。私にとってのサイズではなく、絶対的なサイズとして。それとも、絶対的なサイズなどないのだろうか。絶対的な万物理論が存在しな...
pale asymmetry | 2020.06.26 Fri 21:17
JUGEMテーマ:ものがたり 少年が目覚めたのは、嗄れた噴水の傍らだった。日はすっかり傾き、空気はすでに黄昏色を纏っていた。少年はゆっくりと身体を起こす。頭がひどく重かった。何か左右に強く振られる感じがした。腕を上げ、頭に触れる。貫かれていた。槍だ。多分自分の背丈と同じくらいの槍が、頭を貫いている。少年はそう感じた。そして思い出した。ここは龍の宮殿だ。かつて王都があった場所。あるとき龍に蹂躙され、廃墟となり、今は一体の龍だけがこの場所の中心にある宮殿、半壊した宮殿であった建物に棲...
pale asymmetry | 2020.06.19 Fri 21:33
JUGEMテーマ:ものがたり 梅雨が明けたので、誰かがマヲヌに抱かれなければならない。そういう話が、集落の老人たちの間で囁かれ出した。けれど中高年から下の世代は、なんとかそれを無視しようとしていた。そもそも今時マヲヌとなんて係わらなくても良いだろう、というのが老人たち以外の世代の一致した見解だった。それに本当のところ、老人たち以外の誰もマヲヌの存在自体を信じていなかったりしたのだ。 マヲヌに抱かれることが決まった者は、その直前に得体の知れない薬茶を飲まされるので、どうせその効...
pale asymmetry | 2020.06.12 Fri 20:36
JUGEMテーマ:ものがたり 多分直径は三メートルくらいあるように見えた。井戸としてはとても大きな口だった。分厚い石で組み上げられた開口部の円形の囲いは全面が苔むしていて、西に傾きだした陽光を弾き緑青色に煌めいていた。円形の壁の高さは一メートルくらい。井戸の中を覗いてみたかったけれど、そういう雰囲気ではない。井戸の中を覗き込めるのは集落で一番年老いた私の曾祖父だけだ。悪戯心でふざけてはいけない雰囲気が、私にはとても窮屈だった。集まった大人たちが皆真剣な顔をしていて、笑いを堪えるの...
pale asymmetry | 2020.06.06 Sat 21:23
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